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3.第三試合【大将戦】は一方的なお仕置きプレイでして。(1)

ガチギレ魔法剣士ターニャと実況のナディーネくんと解説のラプラスさん。

(※この前書きは出来心です)

「むごぉっ!! ふぐうぅっ!! んぐぐっ!!」



 降参しますギブアップです棄権させてください。

 ライアンは何度もそう言葉にしようと試みる。


 しかし。

 そのたびに、上唇と下唇がくっついてしまう謎の現象に襲われているのであった。



「なんだこれ……」



 それ以外の言葉を紡ぐにはなんの不便もない。

 なんなんだこれは。

 呪いか?

 聞いたこともないぞ、特定の言葉だけが喋れなくなる呪いなんて。



「……むぐふぅっ!!!」



 ギブアップ!!



「もごおおぉっほぉ!!!!」



 降参です!

 ……だめだ、言えない。

 その様子を見下ろしながら、



「なーーに間抜けな声だしてるのかな、ライアン?」







 にたぁ、と笑うターニャの後ろ。






 はるか後方の控え席。

 のほほん、とした顔をして座っているラプラス。

 「ライアンが棄権できない呪い」を付与したのは、もちろん彼女だった。



「んっふっふー。大魔女さまに任せなさい! こんなことだって朝飯前さ」

「むぐ……ふごいですね、らぷらすふぁん」



 完全にリラックスモードのナディーネが骨付きソーセージを頬張りながら言った。

 喋るか食べるかどっちかにしなさい。



「すみません~。あ、ラプラスさん。麦酒と葡萄酒どっちにします?」

「あ。あたし葡萄酒~」

「はいはい。おつまみもどんどん食べましょう! 意外といけますよ、ここの屋台」



 完全にライアンの無様な姿を見ながら旨い酒でも飲んでやりましょう、のテンションになっているふたりであった。

 そして。





「……さて、やりますか。ラプラスさん」

「オッケーオッケー。やっちゃおう~」



 ごほん。


 と。屋台飯と酒を目の前に並べたナディーネが咳払いをする。

 手には、チキンステーキのせ炒め飯を買ったときにもらったスプーン。


 そして、それを逆手に持って。


 口元に近づけると。






「さ~~~て! やってまいりましたランキング戦決勝戦。【大将戦】もいよいよ大詰めです! ここからの実況はナディーネ・アマリリス!! そして解説は……」

「絶世の美女、ヴィーナス・ビューティホー様でやっていきま~す。いぇいいぇ~い」



 ものすごいテンションで実況と解説を始めた。


 ぱちんっ!

 と、ラプラスの指が鳴る。


 すると。



「おっと、ライアン選手。いきなりの見事なフライング土下座です! すばらしいフォーム、高さ、着地。まるで土下座をするために生まれてきたような身のこなしですっ!!」



 ナディーネの声が。

 大闘技場いっぱいに響き渡った。


 なんだなんだ、と観客席がざわめく。



「んん~。いや、しかしあの土下座には誠意ってもんが感じられないね~」

「手元の資料ではライアン選手は『とりあえず謝っておけばいいと思って生きてきた』とありますね」

「イェスイェス。冒険者学校時代にターニャ選手から借りた五万サキュルを、いまだ滞納しているそうだからね~。責任感とかないんでしょう~」



 観客席から、「うわ、最低……」という言葉が漏れ聞こえてきた。



「おっとぉ! 土下座が効果がないと判断したライアン選手、今度はターニャ選手の靴を舐め始めた!」

「プライドとかないんだね~」

「なんとターニャ選手、すかさずライアン選手の頭を蹴り飛ばしましたァ!!」

「そりゃあそうでしょう。靴に唾液つけられたら不愉快だし!」

「言われてみればそうですね!? 靴を舐める行為、逆に全く誠意が感じられなかった様子です!!!」


「おっ。ライアン選手、めちゃくちゃ泣いているように見えますが」

「……あれは嘘泣きだね」

「嘘泣き!!!!! でました、嘘泣きです!!!! 大の男が嘘泣きをしております!!!!」

「あー、嘘泣きがバレてふて腐れているね。最低だ~」

「最低です!!!!!!!!!!!!!」



 ライアンの大陸一みっともない姿と、実況解説に闘技場の観客は大爆笑していた。

 なんなんだアイツは、と。



 「おいおい、本当に去年の準優勝チームか?」

 「いや、ターニャさんが去年まではあのチームにいたらしいよ」

 「なんだよ、リーダーだからってふんぞり返ってたくせにあのザマなのか……」

 「あのパーティに仕事依頼すんのやめようぜ」

 「そうだな。俺もギルドにNG登録してもらっておくわ」



 と、どんどんライアンのパーティの市場価値は暴落していくのであった。



「おや、魔法剣士であるターニャ選手が業火球(ファイアボール)を放ちました」

「本来は剣に魔力を通すように体内の回路が最適化されているんだけどね。彼女の腕だったら魔法剣士であっても、初級魔術くらいはお手の物だね~。さっすがターニャ」

「おおっと、ライアン選手の服に着火。燃えています、燃えています! 走り回っていますがまったく消える気配がありません!! それぐらいは自分でどうにかしろライアン選手ぅ!!」

「ははぁん、これはターニャ選手の作戦ですね」

「作戦ですか」

「ほらっ、ライアン選手がいま『なんでもするから助けて!』と叫んだでしょう」

「叫びましたね! おー、ターニャ選手が大剣を振るいました。水属性魔魔術を帯びていますね。ものすごい大量の水がライアン選手に発射されたぁ!」

「あ、水圧でぶっとんだ。いい飛びっぷりだね~ライアン選手~」

「ライアン選手、ここまで一応の職業である剣士(セイバー)らしい技がまったくでてきませんが……?」

「あ、それね。どうやら冒険者学校の卒業試験などなど、全部替え玉受験やカンニングだったらしいよー。本来だったら剣士(セイバー)ってより遊び人(ギャンブラー)? って感じだね」



 実況のナディーネによる適切なツッコミにくわえて、有能美人解説者ヴィーナス・ビューティホーによって、ライアンのクソ野郎エピソードがどんどん観客に拡散されていく。


 燃えかすのような服で。

 へっぴり腰でなんとか立っているライアン。



「もうもっごがぁあっ!」



 もう棄権する、とはやっぱり言えない。

 呪い、恐るべしである。



「さ~て、ライアン?」



 にたにたと笑うターニャが、ライアンの前に立ちふさがる。



「なんでもする、って言ったよね。さっき?」

「ひぃいっ!!!!」




 ターニャのゲス顔に、ライアンは完全に腰を抜かした。


 なんでもしますので。

 許してください……。

お読みいただきありがとうございます!

面白かった・続きが気になると思っていただけましたら、ページ上部のブックマークをしていただいたり以下より感想やポイント評価をいただけますと嬉しいです。


次話も、ライアンの受難が続きます。

大観衆の前で最低エピソードが暴露されてしまったライアンくんはその後失業する模様。

次回、【灰燼列罪(エクスプロージョン)・斬】がライアンに炸裂!

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