3.予選リーグは余裕すぎまして。
女冒険者のヘソ出し装備は絶対にお腹を壊すし、イベント会場の女子トイレだけめちゃくちゃ混みすぎってハナシ。女性向けイベントの最大手はトイレなのどうにかしてくれ・・・。。。
ランキング戦。
予選。
各パーティから3名の代表者を輩出しての一本勝負だ。
リーダーが白旗を揚げるか、パーティ三人が全員戦闘不能になるかで勝敗が決まる。
前回の優勝パーティと準優勝パーティについては予選が免除。
それ以外は各リーグに分かれての勝ち残り戦となる。
【リリウム】が割り振られたリーグに、ライアンたちのパーティの名前はなかった。
「でもさ、あんなヘッポコがリーグを勝ち上がってこれるのかなぁ?」
と、ラプラスは首をかしげる。
いくらこちらが勝ち上がっても、向こうがリーグ敗退していては復讐も何もあったものではない。
そんな疑問に、ターニャは「ふっ……」と自嘲気味に笑った。
「あはは。シードですからね、あいつら。去年ねー、準優勝しているんですよ。ほぼ私と、その時期だけライアンが金で雇ってきた傭兵の力で」
「わお、勝ち方までゲス野郎!」
そう。昨年のランキング戦。
どうしても、パーティとして名をあげたいといってきたのはライアンだった。
結局、ライアンはほとんど試合には出場せず、攻撃魔術特化の魔術師であるターニャがほぼ出ずっぱりで勝負を決めてきたのだ。
ランキング戦の間だけ傭兵を雇うという卑怯極まりない手をつかっていたのも、気にくわない。
自分が努力して強くなろう、という意識はないのかあの男は!
すべて他人の手でどうにかしてもらおうとは……。
ヒモ? ヒモなのか、あいつは?
皆ライアンを甘やかしすぎだ。世の中舐めているぞ、あのクズは!
「くそっ!!! 今年もどうせ傭兵雇ってやがるに違いないんだよねっ、あいつ!!! だから、決勝トーナメントの大将戦……パーティリーダーの一騎打ちまで持ち込まなくっちゃ!!」
「おっけーおっけー、そこでターニャがあいつをボッコボコにするわけだねー」
「いぇすっ!!!!!」
まあ、あちらがシードのおかげでこのランキング戦から逃げられないというのはありがたい。
そういうわけで。
まずは、決勝トーナメントまで勝ち上がることが必要だ。
***
さて。
第一回戦。
……楽勝だった。
勝者、【リリウム】の弁。
「いやあ。なんだか、呆気ないくらいに楽勝でしたね」
「ほんとだねぇ。まさか、相手が【魅了】だけにステータスを振ってるとは……」
「ふっふっふー。……ここは真の美女であるこのラプラスさんが本気の魅了ってやつを見せてやらんこともないけどな」
「あ、ラプラスさん。そういうのいいですー」
一方、敗北したパーティの弁。
「くそぉおっ!!! こっちは高レベルの【魅了】を使える女呪術師を揃えてたってのに……。この【魅了】で筋骨隆々の男どもを骨抜きにして、楽勝の予定がっ。くそおおぉ! パーティの主力三人を出すってルールで、まさか男がひとりもいないパーティがあるなんて、思わないだろうがぁああぁ!!!!!」
――負け犬の遠吠えである。
ちなみに、このパーティの主力だった脂ぎった中年男は、ターニャ、ラプラス、ナディーネによりタコ殴りにされた。
魔術とか。
使うまでもない雑魚でした。はい。
第二回戦。
……楽勝、だった。
勝者、【リリウム】の弁。
「いやあ。相手は回復術師の女二人とアタッカーの剣士一人。後衛が徹底的に剣士に強化や回復をかけまくるという戦法だったわけですが……」
「まさか女回復術師の薄着につけ込んで勝つことになるとは……。ラプラスさん、もしかして性格悪い?」
「のん、のん! 合理的判断だよ。それにあんなヘソ出している方が悪くない!? それに、たまにはあたしだって良いとこ見せたい!」
「あはは……まあ、女冒険者は薄着が常識、ですからね。ラプラスさんが天候操作で気温を下げるなんて思ってないでしょうし、彼女たちのせいじゃないかとは……。あ、でも、剣士の方も、支援がなくなったら全然強くなかったのも助かりましたよねっ。ね、お二人とも?」
「うんうん。それにこのターニャ、ラプラスさんが陰険極悪魔女だからっていまさら嫌いになったりしないんで大丈夫ですよー?」
「ちょ、陰険極悪魔女って! 酷すぎないかい!? あたし、けっこうカッコいい感じの二つ名持ってると思うんだけど!?」
「大淫婦?」
「そっちじゃなくてっ!」
「あはは。ラプラスさんは一応、念のために偽名でエントリーしてらっしゃいますし大声で二つ名とか呼ぶのはちょっと控えた方が……」
「そう!! 偽名!! ラプラスさん、偽名が【ヴィーナス・ビューティホー】っていうのはどうかと思いますよ?」
「うるさいなぁ、名は体を表すっていうじゃんっ!?」
「そういうところですよっ!! ちょっと顔が良いからってぇ~」
「だーかーら、喧嘩しないでくださいってばっ!!!」
以下省略。
一方、敗北したパーティの弁。
「くそぉおっ!!! こっちは高レベルの【回復】と【強化】を使える女回復術師を揃えてたってのに……。こいつらのバックアップで、この俺様が華麗にフィニッシュする予定だったのに。くそおおぉ! 闘技場の気温が急に氷点下になって、ヘソ出し装備の女二人がお腹壊すとは思わないだろうがぁああぁ!!!!! しかも女子トイレが異常に混んでたとかで全然帰ってこねえし!!!! っていうか、あいつら女のくせになんであんなガッツリ装備なんだ!! 可愛くねええぇえっ!!!」
――負け犬の遠吠えである。
ちなみに、このパーティの主力だったイキッた感じの若い男は、ターニャの風属性魔術で加速させた剣技によってメタメタにされた。
魔法剣とか。
使うまでもない雑魚でした。はい。
***
【リリウム】の快進撃と時を同じくして。
シードパーティの控え室。
「くっそぉお、やべえ。やべえよ……」
ライアンは恐慌状態に陥っていた。
嫌でも【リリウム】の活躍が耳に入ってくる。
そして、とくにリーダーのターニャの剣技が冴え渡っているということも。
「去年の優勝チームはAランクに上がっちまって出場しないし……もしターニャとあたったら、俺っ」
殺されるかも。
小狐亭でかつてのメンバーであり幼馴染みが放っていた殺気は本物だ。
殺されるだけならいい。
殺されるよりも酷いことをされるかもしれない。
「ライアンってばぁ、元気だしなよぅ」
と豊満な胸を擦りつけてくるキャサリンを適当にあしらう。
ああ、こんなことならキャサリンの色香……具体的にはおっぱいの大きさに目をくらませて、ターニャをクビになんてするんじゃなかった。
……いや、でもな。
あの女。
口うるさいし。
男より仕事が出来るし。
その分、物怖じせずに話をするし。
しかし。
たしかに疎ましく思ってはいたが、ターニャがパーティを抜けてからというものクエストの成功率もパーティ運営の精度も下がりに下がりっぱなしである。
メンバーからの不満も出てきているし、ギルドからも注意を受けた。
くそ。
くそくそくそ。
こんなはずではなかったのに。
ライアンはわざとらしく溜息をつく。
「……おい。高い金払ったんだ。全部、お前がどうにかしてくれよな!?」
控え室の奥でじっと息をひそめている影に声をかけた。
そこにいるのは。一人の、男だった。
黒色の全身鎧を身に纏っており、その表情を伺うことは出来ない。
手には、大剣。
大柄な、いかにも『戦闘』を生業にしている風貌だ。
「……御意」
「頼むぜぇ? そのために最上級職様を雇ったんだからさ」
男は、ゆっくりと頷いた。
やっぱり、傭兵はいいよな。
卑怯だ何だって言われてもやめられねえよ。
ライアンはほくそ笑む。
「……去年だって、傭兵のおかげで準優勝だ。ターニャも少しくらいは手伝ったかもしれないけどな?」
「さすがライアン~」
「だろ? キャサリン」
へらへらと笑う彼らの耳に。
わあああ! と割れんばかりの喝采が届く。
【リリウム】がリーグ戦を一位通過したという知らせだった。
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日間総合ランキング5位!! 表紙!!!
ジャンル別日間ランキング2位!!! 2位!!!?
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