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「どこって、カールム王国だよ?」
るるなちゃんが小首を傾げ、口を尖らせて言う。
ツインテールに結わえた長い黒髪が、ぴょこんと揺れる。
「いや、そうだけど、その、異界? っていうのがわからない。ここは、日本じゃなさそうだけど……。カールム王国なんて国、聞いたことないし……。あまりに展開がわけわかんなくって……、ちょっと頭追いつかないよ……」
不安から言葉が堰を切ったように溢れ出す。
どうしてるるなちゃんは平気なの? どうして何もかも自然に受け入れられるの? 私は状況把握もままならないのに。
「ユウキ殿が不安になるのも無理もないことですわね……」
私の言葉を受け止めてくれたのは、アルジェンさんだった。
「異界……、とは、本来であればけして重なることのない世界のことです。世の理というのは、ちっぽけな人間には複雑すぎて、全てをつまびらかにすることは不可能です。ですがその中で分かっているのは、この世には様々な世界がお互いに干渉することなく存在しているということ」
アルジェンさんの説明に、全員ただじっと耳を傾ける。
「そしてその世界は干渉することなく存在しているがゆえに、異界の住人同士は、互いに異なる力を持っているのです」
--お互いが想像もつかないような、力が……。
アルジェンさんはそっと目を閉じ、低く呟く。
「どういう経緯かは、もはや伝説の域の話なので分かりませんが、我々の祖先は異界の存在を知り、また異界の住民を呼び寄せ、彼らの力を借りる術を編み出したのです」
「そして……、私たちが呼ばれた……」
思わず顔をしかめながら、アルジェンさんの言葉に応えると、アルジェンさんは深く頷いた。
「いや、でも、そんな力とか……ないし……」
ぼそりと呟く私にはアルジェンさんは淡々と告げる。
「いえ、お二人からはとてつもない力を感じます。きっと、元いた世界では発揮する必要もなかった力なのでしょう。だから、ご自身で感知できない」
「そ、そんなことって……」
「別に何ら不思議なことではありませんわ。歴代の聖女たちも、己の力を開花させるために修行を重ねたのですから」
「し、修行?」
アルジェンさんの言葉に益々眉間にシワが寄る。
こんなの手に負えない……、そう思った時にるるなちゃんの元気な声が部屋に響いた。
「修行!? それってどんなのですかぁ? 私、頑張ります!」
場違いなほど明るい声に救われ、部屋を満たしていた緊張感が緩んだ。
アルジェン殿もほっと軽く息を吐き「続きは明日にしましょう」と言い、ひとまず皆休むこととなった。
るるなちゃんと、私にはそれぞれ部屋が用意されているという。
とにかく今夜はもう疲れてしまった。とりあえず寝よう。
ああ、できれば、元の自分の部屋で寝たい。




