4
「ユウキ殿、いきなりの事で驚いているとは思うが……」
低い落ち着いた声で話し始めたのは、お鬚がダンディなおじ様だった。
「あのね! ゆうきちゃん! 私たち聖女なんだって!」
そしておじさまの話を驚きのスピードで遮ったのが、先ほど自己紹介をしてくれた四宮るるなちゃん。
私も釣られて心の中で「るるなちゃん」などと呼んでしまったけど、初対面の人に「ゆうきちゃん」と言われるのは少し面食らう。
「へ?」
それに聖女とは何なんだろう。いきなり色んな情報が流れてくるこの状況に頭がついて来ない。
「ルルナ殿、ユウキ殿は今目を覚ましたばかりなのだから……」
優しい声音でるるなちゃんを制したのは、初めて見る青年だった。
灰色がかった茶髪の柔和な表情の男性で、年齢は20代中ごろと言ったところだろうか。
「ごめんなさい! 王子様!」
ペロリと舌を出してから満面の笑みを浮かべ元気いっぱいに答えると、るるなちゃんは案外すんなり引っ込んだ。
それにしても……。え……?
「王子様?」
思わず疑問が口をついて出てしまった。
すると、王子様と呼ばれた彼はバツが悪そうにもごもごと「申し訳ない……。自己紹介が遅れて……」と言うと「まずは貴女方を召喚した理由から話そうと思ったのです」と続けた。
「し、召喚?」
裁判か何か……?って、そんなわけはない。
でも、争いごとに巻き込まれた覚えはないものの、裁判の方がまだ理解しやすかったかも。
「わたくしの方から説明いたしましょう。自己紹介はそれからでも遅くはないでしょう」
穏やかではあるものの、抗いがたい力強さで場を制したのは、銀髪の女性だった。
「ユウキ殿、私は魔道士長アルジェンですわ。急なことで驚いていらっしゃることでしょうが、あなた方はこの王国にとってなくてはならぬ存在なのです」
けして威圧的ではないが、有無を言わせぬ力を持った物言いに私は素直に耳を傾けるよりなかった。
アルジェンさんは淡々と、しかし説得力のある話ぶりで、私が陥っている状況について説明してくれた。
ここ、カールム王国は3つの強国に囲まれているらしく、豊かな資源を持ったカールム王国は常に侵略の危機に晒されているのだという。
現在は近隣諸国と停戦状態にあり、一応の平和を保ってはいるものの、それも全て聖女の存在あってのことなのだという。
「カールム王国は、代々異界より2人の聖女を国を守護する存在として召喚してきました。圧倒的な破壊の力を持つ「赤の処女」と大いなる癒しの力を持つ「白の処女」です。この二聖女の力をもってすれば、むしろ近隣諸国を蹂躙することすら容易いという言い伝えがあるほどなのです」
言い伝え……?
不確かな物言いに、疑問を持ってしまったことを見抜いたのか、アルジェンさんは微笑みを浮かべると満足気に頷いた。
「ユウキ殿は聡明なのですね。二聖女の力が絶大であるということは、私たちも疑ってはおりませんが、実際に聖女の力を見たことがある者は私たちの代にはいないのです」




