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体が持ち上がる感覚がなくなると、今度は周りの光が薄らいでいった。
ただただ茫然と、なすがままに漂っていると、今度はゆっくりと体が下降し、今度こそ着地した。
冷たい下水の中ではなく、冷たい大理石の上に。
衝撃こそなかったが、ちょうど尻もちをつくような恰好となった。
不可解な展開に心臓は激しくビートを刻み続けている……、ってふざけた言い方をしてみても、状況は変わらない。
辺りを見渡すと私を取り囲んでいた光は、わずかに皮膚や服の上でちらちらと輝くばかりで、視界を遮るものはもうない。
こわい……、と思いながらもやはりキレイだった。
ふと見上げると、そこは見たこともない豪奢な部屋、いや、部屋というには広すぎるホール。
天井は高く、ゆうに5メートルはあるんじゃないかな。
そしてホールを覆うのは、いままで見たこともないような巨大なステンドグラス。
夜だからか、光は差し込んでおらず、室内の明かりにぼんやりと照らされている。
中世の絵画で見るようなローブをまとった聖人が1人、色とりどりのガラスで描かれており、まるで巨人に見下ろされているかのような気分になる。
そして、建物を支える大きな白い柱が4つ、ホールの両脇に巨人のあばら骨のようにそびえ立っていて、どこか神聖な感じがする。
電灯らしきものはない。辺りの装飾のディテールを確認できるほどの明るさは保たれているが、光源はずらりと並べられた大きな蝋燭、あるいは松明の灯りみたいだ。
香が焚かれているのか、白檀を思わせる甘い香りが漂っている。
そして……。
気づかないふりをしようとしていたけど……。
この厳粛な雰囲気の中、これまた厳かな様子でたたずみ私を見下ろす4つの人影があった。
その4名の影の主は一言も発さず、ただただ静かに私を見つめる。
いや、見つめているのかも分からない。
全員が床まで届く光沢のある白地の布でつくられたローブをまとい、くちばしを思わせる突起のついた銀色の仮面をかぶっている。
ハッキリ言って、怖い。まるでオカルト映画でも観ているかのようだ。
これは悪夢なのではないだろうか……。
すでにバクバクと激しく脈打っていた私の心臓だが、このまま胸を突き破ってしまうのではないかと思ってしまうほど一層激しさを増し鼓動を打っている。
叫びたいような気持ちにもなったが、その時私の後ろから女の人のうめき声が聞こえてきた。
「ううーん……」
オカルトな4人をなるべく刺激しないよう、緩やかに声の方へ顔を向ける。
その際、視界の隅に銀色の甲冑を着込んだ人影がチラリと見えた。
他にも人いるのか。ここは一体何?何かのセット?
疑問はひとまず置いておこう。
振り向いた先にいたうめき声の主は、華奢な女の子だった。




