-聖女のプロローグ-
今日も明日も日常の繰り返し。
起きて、出勤して、仕事して、帰って……。
そうなるはずだと信じ切っていたのに、あまりに急にその日常は崩れ去った。
その瞬間、私は咄嗟に「あ、マンホールに落ちた……?」と思った。
夜、帰宅途中、踏みしめていたはずの地面がいきなり消え、胃がひっくり返るようなスピード落下ののち視界が真っ暗になった。
マンホールの中がどうなっているかはよく分からないけど、あわや汚水にドボン! となるのを覚悟した次の瞬間、目が眩むほどの光に包まれた。
懐中電灯の光というには強すぎる灯りと、未だ着地することなく続く浮遊感に戸惑うと共に、理解が追い付かない状況に心臓が早鐘を打つ。
「なななな、なにこれっ、うわっ!!」
次の瞬間、光が徐々に薄れると共に見えない糸で引っ張られるかのように体が上へと引きずりあげられた。単に引っ張られたというよりは、辺りを漂う光の中をずぶずぶと無理やりかき分けるかのような感覚だった。
体が上へ上へと進むごとに、私を取り囲む光の粒子がはじけ、キラキラと鱗粉のように散る。
何が起きているのかわからない恐怖におびえながら、その光景の美しさに私は思わず息をのんだ。




