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とりあえず神様を殴るためにはどうすればいいですか?  作者: タコガマ
第1章 異世界体感編
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激逃と決着(喜)

「なんであんたにこんな話をしちゃったのか分かんないけど、そういうわけだから私はもう誰かに裏切られるくらいなら死んだ方がましなのよ…」


 鈍い金属音が洞窟内に響くなか、アリスは自身の過去を、全てを翔太に語った。それに対し、翔太は何も言うことができないでいた。こんな時にかける言葉を知らなかったからだ。取り繕った言葉など何の意味も持たない、そのことを無意識に感じ取っていたのだ。

 少しの間、沈黙が続いたが先に翔太が口を開いた。


「俺は弱い人間だから、できることには限りがある。…だけどこんな俺でも、誰かを見捨てることはしたくない。この場しのぎの言葉に聞こえるかもしれないけど、この気持ちは何があっても変わらない」


 翔太はアリスに同情していないと言えば嘘になるが、それこそ説得するような言い方で解決する話ではないことは分かっていた。だから嘘一つない、翔太自身が思ったことを口に出したのだ。

 それはアリスにも翔太が嘘をついているような眼ではないと通じたが、翔太が言ったことは矛盾にも似たものだと感じていた。


「…自分の寝覚めが悪くなるから私に生きてほしいとか、ずいぶんわがままね」

「あぁ、だからわがままついでに、アリスも死ぬなら俺が裏切った時にしてくれ。その時は俺も一緒に死んでやるから」


 アリスの指摘に対し、軽口気味に返す翔太はそのままアリスに手を伸ばした。一瞬手を取りかけ、それをまたすぐに引っ込めたアリスだったが、最終的には無言で翔太の手を取った。その時のアリスの顔はまだ心の整理がついていないという様子だったが、少なくとも今の自分は一人じゃないという認識がアリスの心をわずかに動かしたのだ。


 アリスが自分の心境の変化に動揺している時、翔太はふと思ったことがあった。それはこの場において全く関係ないこと、「倒れたアリスを引き起こそうと手を伸ばす」というデジャブとも言える状況から不思議に思ったこと。


 それはなぜアリスが自分たちの前に姿を現したのかということだった。

“盗賊の初歩(スティール)”があるにもかかわらず、わざわざ自分から姿を見せたアリスの行動は明らかにおかしい、そうしなければいけない理由があったということなのか。

 翔太がそう思った時、独り言のように思いついたことをつい口に出してしまった。


「“盗賊の初歩(スティール)”って盗る相手に直接触らないと発動できないのか?」


 その時、翔太の頭の中に「ピンポーン」という甲高い音が鳴り響いた。


「おめでとうございます!今の発言により“盗賊の初歩(スティール)”の弱点が判明しました。翔太様の特質な才能(アビリティ)分析者(アナライズ)”が起動します」


 先ほどまでどこにいたのか、テイルが突然翔太の目の前に現れた。それと同時に懐に入れていたカードが輝きだし、六つある空欄のうちの一つに文字が浮かび上がってきた。


“盗賊の初歩(スティール)

 触れた対象物からランダムで一つだけ盗ることができる。

 ※一日の使用限度:三回


 翔太はこの絶望的な状況を打破する、小さいながらも確かな希望が見えた気がした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ちょっと、急にどうしたの?」


 アリスの一声で現実に戻った翔太はある作戦を思いついた。かなりの賭けになるが、とにかく今はそれしか思いつかなかった。


「今、作戦を思いついた。全部を説明する時間はないけど、頼みたいことがあるんだ」


 アリスの質問を却下するように、翔太はアリスに思いついた作戦を噛み砕いて説明した。


 一方その頃、ミノタウロスの追撃を受けながらも少しずつ後退している男たちは体力の限界を迎えようとしていた。


「全員、防御態勢を維持しろ!橋はすぐそこだ!」


 リーダーの声が仲間全員に確かに伝わったが、その言葉が彼らの支えになったのかは分からない。何せ自分たちより腕力、重量ともに上の相手の攻撃を正面から受け止めているのだ、いくら頭数が上でも関係ない。

 その中の誰かが「もう駄目だ」と心が折れかけていた時、盾を破壊しようと打ち付けていた重撃が止まった。

 何が起こったのか分からなかったが盾の隙間から向こうを覗いてみると、そこにはミノタウロスの気を引こうと小石を投げつけている少女がいた。


「橋まで走って!」


 彼女はいったい何者なのかそんな疑問が残るなか、彼女にここから早く逃げるように言おうとしたとき、その言葉を先に言われた男たちは一瞬呆気にとられたが、今の自分たちではもうどうすることもできない、ならば何らかの策を講じているであろう彼女に任せるしかないと考えた彼らは素直にその言葉に従った。


 アリスが翔太から受けた頼みはミノタウロスの注意を引き付けておくこと。

 その頼みを聞いたときさすがのアリスもひどく困惑していたが、最終的には了承していた。なぜそう判断してしまったのか、彼女自身も分かっていない。もしかしたら目の前にいる男のことを信じたいという気持ちの表れだったのかもしれない。


 指示に従い後退する男たちを見たアリスはミノタウロスの注意を引くため、自分から前に出た。その動きに合わせて轟音と共に振り下ろされる斧をなんとか躱しつつ、素早く懐に入りミノタウロスに一撃加えたところで、後は逃げに徹した。

 その一撃はミノタウロスにダメージを与えるものとは決していえないだろう。しかし格下だと思っていた相手に傷をつけられたという事実は、絶対的強者だと自負していたミノタウロスのプライドを傷つけ、怒りを買うには十分だった。


 ミノタウロスの怒りに身を任せた攻撃はより単調なものになったが、その一撃一撃の重さは先ほどまでのそれとは比べものにはならないものになっていた。

 そんなミノタウロスを角のように尖った形をした岩が連なる場所へと誘導したアリスは持ち前の俊敏さと、その場の地形を利用してぎりぎり回避し続けていた。比較的狭い場所に逃げ込めば、ミノタウロスは身動きがとりづらくなる。さらに巻き上げた粉塵は煙幕となり姿を隠しやすい。アリスのその考えは見事に的中し、ミノタウロスを翻弄していた。


 だがこの均衡はそう長く持たない。それは体力、地形の問題もあるが、アリスはミノタウロスとの絶妙な距離を維持しなければいけないからだ。この場合、ミノタウロスとの距離が遠すぎると別の人を標的にする可能性がある。しかし近すぎると攻撃を回避できない。

 一瞬の判断ミスが死に直結するこの状況でアリスは待っていた、彼の合図を。


 そんな中、ミノタウロスは持ち前の怪力で周りの岩場を破壊し始めた。それは周りに怒りをぶつけていたわけではなく、隠れている(アリス)をいぶり出すため。アリスも隠れ蓑を次々に破壊され、いよいよ隠れる場所が尽きようとしていた時、待っていた声がその場に響き渡った。


「準備できたぞ!」


 その声が聞こえたと同時にアリスは橋の方に全力で走った。ミノタウロスもアリスの姿を発見し、その後を追った。

 この時、合図の意味が分かる者とそうでない者の差がスタートダッシュに大きな差をつけた。体力的にかなり有利なミノタウロスでも、瞬間的なスピードにおいてはアリスの方が上。ならば全力で走るアリスにはすぐには追いつけるはずがない。アリス自身もそう思っていた。

 しかしその自信が仇になったのか、アリスはそのひと時だけミノタウロスの攻撃手段が近接攻撃だけだと思ってしまった。


「避けろ!」


 その声に反応してアリスがふと後ろを振り返ると、突然何かが降って来た。アリスはそれにより発生した風圧でバランスを崩しそうになったが、なんとか踏みとどまった。翔太の声で一瞬だけ走る速度が落ちていなければ、アリスに直撃していただろう。だが結果的にアリスの足が止まり、一回の投擲で最初につけた差はかなり縮まってしまった。


 アリスは急いで走るが、ミノタウロスの方は跳躍すればアリスに手が届く範囲にいた。そして予想通り、ミノタウロスは大きく跳躍すると同時に前に手を伸ばす。この手が届くと確信したとき、突然横から転がって来た岩石に手を弾かれ、ミノタウロスはその場にスライディングするように倒れこんだ。

 アリスは何が起こったのか確認したかったがそんな余裕はなく、このチャンスを無駄にしないために全力で走った。


 斧の投擲により地面がひび割れ、アリスにとって走りにくい状況になっていたが、それでもミノタウロスが起き上がるころにはアリスも橋の入口付近にまで達していた。

 翔太はすでに仕掛けを終え、橋の中間あたりまで来ていた。やって来た男たちに怪我をした仲間の男を担いでもらい、アリスを待っていた。そしてやってきたアリスの姿を視認した後、一安心したように先に橋を渡り切った。


 この時点でその場にいた全員は逃げきったと安心しきっていた。しかしそう簡単にはいかせないと言わんばかりにミノタウロスはわき目も振らず全力で走って来て、橋の元まで来ると橋を渡り始めた。橋は意外にも倒壊せずなんとか形を保っているが、今にも崩れ落ちそうな音を出していた。

 この時アリスはまだ橋を渡り出してまもない位置にいたが、それでもミノタウロスとはまだ距離があった。アリスなら問題ないレベルのはずだったが、体力の限界なのか明らかに最初に比べスピードが落ちていた。


 後方からミノタウロスが迫っていた時、アリスは軽い走馬灯のように昔のことを思い出していた。それこそ嫌なことだったり、翔太と出会って自分に死んでほしくないと言われた時、表には出さなかったが内心とても嬉しかったことだったり。

 そんな半ば諦めかけていたアリスの足が止まりかけたとき、遠くから声が聞こえてきた。


「諦めるな、もう少しだ、もう少しこっちに来い!」


 翔太の「もう少し」という言葉に引っかかるが、自分のことを心配してくれる存在がいることを再認識したアリスは最後の力を振り絞り走り出そうと二、三歩前に出たときだった。


「今だ、“物体回収(サルベージ)”!」


 翔太のその声のすぐ後、突然アリスの身体が重力を無視するように宙に浮き、何かに引っ張られるように翔太の元へ飛んできたことに男たちは驚きを隠すことができなかった。

 それはアリス自身も同じで自分に何が起こったのかさっぱり分からなかった。唯一理解できたことといえば自分の身体が引っ張られているのではなく、木の板が自分の身体をすごい力で押しているということだけだった。


 この出来事が起きる前、翔太がカードにある“盗賊の初歩(スティール)”についての記載を見たとき気になるフレーズがあった。それは「ランダムで一つだけ盗る」という部分。複数のものから一つだけを盗るというニュアンスだが、もし盗る対象が一つ、単体だったとしたらどうなるのか。その答えは考えるまでもない。

 その答えを口に出した瞬間、再びカードが輝き出した。


物体回収(サルベージ)

 触れた単一の物を自分の手元に引き寄せる。


 ちなみにこの特質な才能(アビリティ)で翔太が引き寄せたのはもちろんアリスではなく、橋の一部である木の板。もう少し早くこの能力に気づいていれば、アリスの身体を引き寄せることができたのかもしれないがそれを試す余裕はなかった。


 アリスの身体が飛んで行った時、ミノタウロスも突然魔法のような出来事が起きたことにより呆気に取られ、動きが止まっていた。しかし再びその後を追いかけ始めた。

 そんなミノタウロスの行動を見た翔太は能力を解除して、木の板に押され飛んできたアリスを受け止めた。

 そしてすぐに次の作戦に移行する。


「もういっちょ“物体回収(サルベージ)”!」


 その声と同時にある仕掛けが動き出す。その時ミノタウロスはすでに橋の中間地点にいたが、全員の視線はその姿ではなく全く別の物に向いていた。

 それは一本のナイフ。まるで誰かがこっちに向かってナイフを投げたかのように飛んできていたのだ。ナイフはその勢いのまま、橋を支えていた縄のうちの一本を断ち切り翔太の元へ飛んできた。翔太はそのナイフをさっきの木の板で受け止めてから能力を解除した。

 ナイフに縄を切られ、その橋はバランスを崩し足場が傾いた。その中間部分にいたミノタウロスは必死の形相で翔太たちの元へ走って行くが、それを許すはずがない。


「これで俺たちの勝ちだ」


 そう言った翔太は戻ってきたナイフで別の縄をあっさりと切り落とした。ミノタウロスは「それだけは」と懇願するように手を前に伸ばすが、それが届くことはなかった。

橋を支えていた縄が切られ、橋は一気に崩れた。そしてミノタウロスは奈落の底に引き込まれるように落ちていき、数秒後には断末魔と共に肉が大地に叩きつけられた音がその場に響き渡った。


「…やったのか?」


 そんな声に反応するように周りの者も声を出し、そして歓喜の雄叫びが上がった。

翔太も安堵の溜息をもらした後、その場に崩れ落ちた。初めて受けた獲物に向ける殺気、敵意、命がけの知恵比べ。非日常が押し寄せた日に訪れた安堵によって、今まで張りつめていた緊張が一気に抜けたのだ。翔太の手にはまだ震えが残っている。


「…倒れるなら先に言ってよ」

「え!?」


 突然聞こえてきた声にひどく驚いた翔太の隣には気まずそうにしているアリスがいた。アリスは赤くなっている顔を見られたくないと隠そうとした結果、翔太に抱きついているようになっていることに気づいていない。


 女の子のそんな行動に動揺した翔太だが、ひとまずなぜこんな状況になったのか思い出してみる。

 翔太は木の板に押されるように飛んできたアリスを受け止め、次に引き寄せたナイフを木で受け止めた、その間ずっと片腕でアリスを抱いていたのだ。

 もちろん翔太に下心はなく、ただ単にそんなことを気にしている場合じゃなかっただけだが、アリスにはそんな翔太の姿がどんな風に映っていたのか。

 百パーセント自分が悪いなと思った翔太はすぐに離れようとしたが、アリスは先ほどから震えている翔太の手に自分の手を重ねた。


「ただの馬鹿だと思ってたけど、筋金入りの馬鹿ね」

「開口一番それかよ」

「だけど、さっきは本当に嬉しかった。…ありがとう」


 最後の言葉を少し恥ずかしそうにしながら笑顔で言うアリスに、翔太も照れたように視線をずらす。この時のアリスの笑顔にときめいたことは彼だけの秘密だ。

 そんな甘い空間が形成され始めたとき、二人に気づかれないように忍び寄る影が一つ。


「見せつけてますね~お二人さん!」


 二人の空間に割って入り盛大に煽るテイルにより翔太とアリスは我に返り、周りを見渡すと翔太たち以上に気まずそうにしている男たちがいた。それを見て先ほどまでのやりとりを思い出して悶えている二人、テイルの笑みは増すばかり。


「とりあえずアリスを助けてくれてありがとな、テイル」

「急に何の話ですか?それでさっきの話題をずらせると思っているんですか?」

「違う!アリスが橋に向かって走っている時、落石があっただろ。それのことだよ」

「あれって私の運がよかったって話じゃないの?」

「あんないいタイミングで起こったなら、人為的なものだと考える方が自然だろ?」


 翔太は落石が起きた時そんなことができたのは、おそらく高みの見物をしていたテイルだけだろうと予想していた。

 本当ならテイルにさっきまでどこにいたのかを問い詰めるところだがアリスを助けてくれた件もあり、今回は不問にした。


 全員が一段落した頃、翔太は今まで忘れていたことを思い出した。そして今がそのチャンスだった。


「“盗賊の初歩(スティール)”」

「え?」


 いきなり翔太がアリスに向かって手を伸ばし、そう言うと翔太の手の中には見覚えがある小袋があった。

 そしてそれが何か気づいたアリスはまさかと思い、自分の懐を確認するとそこにあったものが無くなっていた。


「私の金返してよ、この泥棒!」

「嫌だ」

「その金は私のでしょ。何言ってんのよ、あんた!?」

「どうせこの金を返したら、俺を兵士とかに突き出すつもりだろ?そのつもりなら絶対に金は返さない」

「はあ?あんたいきなり何言って…」


 アリスがそこまで言いかけたとき、翔太の行動と今までのセリフに疑問を持った。それはどこかで聞いたことがあるものだったからだ。そして思い出した。


「…そういうことね」

「俺の気持ちが分かったか?」


 翔太とアリスはそこまで言うと大声で笑った、そのやりとりがあまりにも馬鹿馬鹿しすぎて。周りはなぜ二人が笑っているのか分からなかったが、テイルには分かっていた。このやりとりは翔太がアリスにお金を盗られた時に言ったものだ。


「これがしたくてわざわざ“盗賊の初歩(スティール)”を使ったの?」

「まぁな。でもやっぱり一緒に旅するならノリがいい奴の方がいいだろ?」


 男たちは何があったのかよく分からなかったが、ひとまず空気を読んで周囲にモンスターがいないか確認するという建前で翔太たちから距離を置いていたためその場にはテイルしか残っていなかった。

 そして翔太のその言葉を聞いたアリスは思わず言葉を詰まらせたため、その場は一時的に静寂になった。アリスが言葉を詰まらせたのは予想していなかった展開だったからだ。


 今まで言われたことがなかったため、どういう反応をすればいいのか分からなかったというのもあるが、どういう流れになったらその話になるのか、一緒に旅をするというのはどういうことなのか、聞きたいことは山ほどあったが何より聞きたかったのは…


「…手癖が悪い盗賊が一緒にいてもいいの?」

「こっちだって常識知らずのわがままに、大食らいの可愛くない妖精がいるぜ?むしろ旅の道中だけじゃなくて、ちゃんとした仲間になってほしいくらいだ」

「誰が可愛くない妖精ですか?」

「大食らいは否定しないのかよ…」


 二人の会話に割って入ったテイルと翔太が軽い言い争いをしているなか、アリスは固まっていた。翔太の言葉を聞いて胸が一杯になり、今まで空っぽだったものが埋まっていく感覚。気づいたときには翔太とテイルが自分の顔を見ていた。その時アリスは自分がどういう顔をしていたのか分からないが、何か恥ずかしい気がして思わず顔を背けた。


「ほらやっぱり!常識知らずのわがままと一緒にいるのは嫌なんですよ」

「違うだろ!…多分」


 アリスの行動を見たテイルがそう言うと、翔太がそれを自信なく否定する。その姿を見たアリスはつい失笑してしまった。そして吹っ切れたように、目元に浮かんだ水滴をぬぐうと翔太とテイルのほうに向き直した。


「確かにこの二人じゃ頼りないわね、仕方ないからついていってあげるわよ!」

「そうか、じゃあこれからよろしくな、アリス」

「良かったですね、翔太様。あなたを受け入れてくれる方が存在して」

「一言余計だぞ~」


 照れ隠しをしているアリスを見た翔太は素直にその状況を受け入れ、アリスと軽く握手を交わし、そのまま余計なことを言うテイルをジト目で見た。

 それに対してアリスはテイルの「あなたを受け入れてくれる人がいた」というフレーズを気にしていた。その言葉はまさに自分のことを指しているのに、感謝すべきは自分の方なのに。

翔太への言葉にできないほどの深い感謝を心の中で何度もつぶやいたことは彼女だけの秘密だ。


読んでいただきありがとうございます。物語が一段落し、次回からは新たな冒険が始まります。これからもよろしくお願いします。

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