プロローグ~
ある日の夕暮れ。
いつもと何のかわりない日常。
そんな日に限って不幸というのは訪れる。
石につまづき転ぶ。鳥のフンが落ちてくる。傘もないのに急に雨が降ってくる。
大なり小なり不幸というのは突然訪れる。
ただその日、俺に、一条拓真に起こった不幸は少し大きなものだった。
自宅近くの大通り。俺はただ暇つぶしに近くのコンビニに行こうとその道を歩いていた。
そこの曲がり角を曲がればすぐそこにコンビニはある。
(…本でも立ち読みするかな。)
そんなことを考えながら俺は曲がり角を曲がった。
その瞬間、体中を激しい痛みが襲い、俺の体は宙を舞った。
見たこともない光景が俺の目の前に広がる。
まるで空が迫ってきたような光景だ。
そんな光景を見ているうちに俺は地面に叩き付けられた。
何が何だかわからない。意識が朦朧とする。そんな状況の中、走り去っていく黒い車が薄っすらと見える。
(ああ。。。俺、轢かれたのかな?このまま死ぬのかな?ひき逃げかよ。ついてねーな。………)
俺の意識はそこで途絶えた。
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………ポタポタっと俺の頬に冷たい水のようなものが滴り落ちるのを感じる。
(ここは…どこだ?俺は死んだんじゃなかったか?)
徐々に戻る意識の中で、俺は現状を理解することに必死になった。
(…辺りは暗闇、俺は…倒れている?…まあ意識がなかったんだから起きてるわけねーか。)
そんなことを考えながら俺はむくっと体を起こした。
(……あれ??体が痛くない?俺、車に轢かれたんだよな?なんで痛みがねーんだ?俺ってそんなに丈夫だったの?……そんなわけねーよな。…もしかして…天国ってやつか!?いや、この暗闇的に…地獄かな?)
気が動転して何が何だかわからない。
だがこのままここにずっといるわけにもいかない。
俺はここで決断を下した。
「とりあえず進んでみるか。。。」
そう呟くと俺は一歩ずつ足場を確かめながら歩き出した。
どのくらい歩いたのだろう?
体感的には10時間は歩いた気分だが、実際はそうでもないのだろう。
だが、長いこと歩いた。それは確かだ。
しかし、それに引き換え成果はほとんどなかった。
唯一の成果は少しづつ目が暗闇に慣れて薄っすらと辺りが見えてきたくらいだ。
辺りは一面岩や苔だらけ。
しばらく進んできたがそれ以外何もない。
(ここは…洞窟?地獄じゃないのか?そもそも俺は死んでるのか??)
進めば進むほど俺の頭は混乱していった。
混乱する意識の中、一つの欲が着実に俺の中にこみあげてきた。
(グ~~ルルルルグルルル)
腹減ったな。
そういえばしばらく飲まず食わずで歩いてるな。
二度目の死因は餓死かもな…
そんな事を考えながら歩いていると足元に何かが生えていることに気が付いた。
俺は薄っすらと見えるその物体に目を凝らす。
(……キノコ…か??)
天の恵みだ。この空腹時に都合よく食べ物を見つけられるなんて。
俺は空腹のあまり、すぐさまそのキノコを引き抜き、噛り付いた。
その瞬間、体にすさまじい電流が流れたように感じた。
何を考える余裕もなく俺の意識はそこで途絶えた。