8、今思えば、ロリアタック
ゴブリンを落とす罠から助けた少女?は、名前をペペルナといい 18歳のドワーフ族だった。
どうりで小さいはずだ。
「便利ですねー、レンジ君の魔力は。おかげでお風呂にお湯を貯めても魔力が切れなくて助かりますよ。取り扱い説明 受けてて良かったですー」
「ファニルは器用だな。いろいろな魔法が使えるなんて羨ましい」
「んーと・・私の事はファーと呼んでくださいね。その方が戦いのとき呼びやすいですから」
「じゃあ、ミャウラも ミャーと呼んだ方が良いのかな?」
「ふふっ、それは本人に聞いてからが良いですね」
ローレシア邸のお風呂は日本式のお風呂で、軽く3人は湯船に並んで入れるほど大きい。
勝手に使っても良いと聞いていたので、臭うペペルナが可愛そうだし 使わせてもらう事にした。
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「おおっ。」
「これは、信じたくない光景ですな・・」
ここは 学術都市として知られるシンビジウム。
ローレシアが 古巣とも言える角塔に帰った次の日。早くも 彼女名義で出された緊急連絡会議の要請によって、近場の国は王族が、遠方の国は駐在大使が集まっていた。
そこで公開された情報は勿論、先日の魔物の大攻勢の予兆と思われる現象について である。クラッカスが撮影した様子を見て 参加者は複雑な声を上げていた。
「大攻勢は この魔物によって惑わされた魔物たちが 次の獲物を集めるべく使役されている、と見ています。今回は優秀な魔法使いによって焔獄が使用され 一気に焼き尽くす事が出来ました」
「おおっ、それは素晴らしい。守りの聖剣によって都などは守りやすいですが、地方の町まで手が回りませんからな」
「賢者様が申される通り、早期にこの状態を発見できれば先手を打てますぞ」
「今日 皆様に来ていただきましたのは、この映像を巡回の監視兵や 調査に出るような優秀な冒険者に見せていただき、情報を集め 攻勢が始まる前に潰していただきたいと思ったためです。各国に同じものを配布いたしますので それぞれで対応していただきたく存じます」
「ありがたい情報だ。我が国は早速対応させていただく」
この情報は各国にとって何一つ不都合の無い有益なものだ。最初は わざわざ集めた事に不快感を持っていた者も居たのだが、帰りには 各国代表は大きな功績となるだろう情報を持ち帰る事で上機嫌になっていた。
「ミアーシャ、お疲れ様。貴方がここを守ってくれているお陰で 私はだいぶ未開地の先に進めているわ」
「シア様。無理なさらないで下さい。その・・」
「いいのよ、もし途中で死んだとしても その一瞬まで私は満足なの。まるで、あの人と2人で旅をしているようだわ。我がまま言ってごめんなさいね」
「もぅ・・。その言葉は 心配しているお子さん達に言ってあげてくださいね。貴方の子孫が心配して職場を離れたりしたら大混乱になってしまいますからね」
「しょうがない子たちね。まだ乳離れ出来ないなんて」
「シア様は 旦那離れが出来ないようですが」
「ミアは出来たのかしら?。良いのよ、再婚しても誰も変に思わないわよ」
「今日のシアは意地悪ですね・・彼との思い出にドロを塗るような結婚などするはず無いですよ」
「「ふふっ」」
マイチと結婚した者の中には長寿のエルフをはじめ、彼よりも長生きの女性は多かった。しかし、誰一人として再婚を願うものがいなかった。
「それで、今回帰還されたのは会議だけが目的では有りませんね?。私を会議室に呼び出したのですから、暇つぶしするのが目的とは思えませんが」
「苦労をかけているミアに2つお土産を持ってきたわ。一つはこれ、」
「!、これは本ですか?。何と言う仕上がり。美しい絵が描かれています。紙?も我々の使う物とは根本的に違うようですね。この文字・・まさか」
「わざわざ完全隔離されている会議室に呼んだのは伊達ではないのよ」
「なるほど。あの方以来の転移者が見つかった という事ですね。素晴らしいです、塔の少女達にも希望を与えられますよ」
「そんなギラギラした声ださないの。あの子はまだ 来たばかりだし、以前のような騒ぎになると不味いからここで話したのよ」
「了解いたしました。良きタイミングが訪れるまで 私の胸のうちに止めておきます」
「でね、こっち方が重大な話なのよ」
「えっ、これ以上に重大な話ですか?。 これは・・」
ローレシアは 件の魔物が放出していたタネ?を取り出し、その分析を依頼するのだった。
効能を説明するに到りミアーシャの好奇心も絶好調をむかえていた。
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「ペペルナさん・・・何で入って来たのかな?」
「カテェ事言うなよ。風呂くらいドワーフの洞窟なら皆一緒に入るぞ」
話の種にされていたレンジは少々うろたえていた。
ドワーフ少女のペペルナが レンジが入浴しているところに突入してきたからだ。
「臭いがお湯に移るから最後に入る と聞いたが」
「しょうがないだろ。早く臭いを落とさないと ケモミミのねーちゃんが可愛そうなんだから」
「自分で18歳とか言うわりに 平気で男の風呂に入るって変だろ」
「あたいは気にしないぞ。それとも・・気に成るのかな?。自分でも そろそろ魅力的な姿になって来たとは思ってたんだ。どうだ、反応するだろ」
そう言いながら、湯船に入っているレンジの前に仁王立ちになり 幼女体型のヌードを見せ付けていた。
その行動によって、ますます色気が無くなっている事には気が付いていない。
「ふっ。いくら俺が彼女が欲しくても 幼女趣味は無いからな。友達のロリ好きなら泣いて喜ぶだろうけど」
「むっ。ロリの意味は分からんが 凄い馬鹿にされたのは理解した。覚悟しろ」
「うわっ、おま、洗ってから湯船に入れよ」
「いいじゃん。あたい達が最後なんだ。意地でも感じさせてやる」
「あーーもぅ、風呂くらいゆっくり入らせろよ」
湯船で攻防を繰り返す2人だったが、レンジが本当に反応してないのを見たペペルナは 意気消沈してうな垂れてしまった。
大人しくなったので、追い出すのを諦めたレンジは 彼女の背中を流している。
「なぁ、ペペルナは何で1人で狩りしてたんだ?」
「ん、効率良いからかな。子供に見られて分け前減らされたら嫌だろ」
「ベテランの冒険者なんだな」
「いや、あたいは一人前の鍛冶師なんだぞ。ちゃんと師匠からも許可を貰ってるし」
「職人なのか、凄いな。しかし、えらい畑違いな事してるな」
「そうでも無いさ。あ、今度はお返しに背中洗ってやるよ」
「ああ、頼む」
なんだかんだで、息が合う二人のようだ。変に意識していない分 気楽に話ができていた。
「許可は有っても自分の工房を持つまでが大変なんだ。何と言ってもお金がかかる。他の工房を手伝ってても、死ぬまでに手に入るか分からなくてさ。手っ取り早く狩りをしてたんだ」
「武器はハンマーなんだな。あんな重いもの振り回せるなんて、さすがだな」
「オークみたいな大きさの奴には良いんだぞ。膝の関節を狙うのは 英雄が伝えた戦い方なんだ。その代わり素早い相手には不利だよ。わざわざゴブリン用に短剣を別に持ってるくらいね」
俺は逆に固い相手は苦手だ、ミャウラも苦手だろう。俺とペペルナが前衛で戦ってファニルが援護と火力。そのファニルを守るのが素早いミャウラ・・いいんじゃないか?これ。
風呂から出た後、ミャウラとファニルに相談すると2人も賛成のようだ。
「えっ、パーティ?。 うーん。そうだな・・あたいを子供扱いしないなら良いぞ」
「当たり前だ、ちゃんと一人前の冒険者として仲間にする」
「わかった。なら、よろしくね。レンジもちゃんと あたいを一人前の女の子として見るようにしてね」
あれっ。何か、 話が変換された気がする。
おなじみの、風呂回です。なんか、風呂って本音が出そうで書きやすいかな。