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4、今思えば、エサの気分

「レンジーがんばれー♪」


「動きをちゃんと見るのですよー」


「くっ、このっ」


(出来たら手を貸して下さい・・とは言えないよな)


俺は今 町の外に来ている。ミャウラとファニルの姉妹も一緒だ。

冒険者ギルドに登録した後、何も知らない俺に姉妹が色々と教えてくれている。戦った事が無いと正直に言うと弱い獲物がいるから狩りに出ようということになった。


弱くて初心者向けのモンスターと言えば、定番はスライムとか 角の有るウサギだろうと思って付いてきた。




「あー・・。いたねぇー。コカッピー」


「あれが弱いのか?すげえ でかい鳥に見えるけど」


「体は大きいけどね。気が弱いから素早く逃げるし、意外と難しいのよ」


少し遠くに見えていたのは2メートルくらいの大きな鳥?。にわとりみたいな動きをしているけど顔は鋭いし、本来 羽が有る部分には虫の甲羅のように滑らかな装甲が装備されていた。本当に弱いのかよ。




「それじゃあ、コッソリ近づいて足を叩いて倒してみてねー」


「まぁ、逃げても誰もバカにしないから腕試しにやってみてよ」


「お、おぅ。行ってくる」


今の装備は、もらった普通の剣。買った皮の軽鎧、ブーツ。そして左手に盾がある。いわゆる初心者装備だ。


言われたとおり 視界の死角から回りこんでコソコソと近寄っていった。しかし、もう少しの所で鳥と目が合ってしまった。やばい、逃げられてしまう。と思ったのに 奴は逆に猛烈な勢いで襲い掛かってきた。



「うわっ、話が違うぞ」


武術の修行に逃げるニワトリを捕まえるというのが有るくらい、地上を走る鳥はすばしっこい。

それが逃げるではなく襲ってくるとなると恐ろしくやっかいだ。




「あれれ、コカッピーが逃げないわよー。おかしいわねー」


「弱いと思われて エサ認定されたのかも・・」


俺って、鳥から見てエサ並みなのかよ。スライムレベル?

脱力したので余計に負けそうだ。


剣と盾で素早い攻撃を凌いでいると、視界の端を白いものがチラついた。それを何かが追いかけている。

自分の戦いもままならないのに気にかかる。


鳥の攻撃に合わせて盾を叩きつける、一瞬ひるんだ隙に足のモモを切りつけた。慌てて逃げようとした鳥はバランスをとれず 転んでジタバタしている。


仕留めれば終わりなのだが、そんな事より 先ほどの見えたものが気にかかる。気のせいで無ければ危ない。


鳥をそのままにして 見えた方に走り出した。後ろから二人の声が聞こえているが今はいい。


走っていくと遠くから声が聞こえてきた。女性の声だ。しかし この世界では山賊すら女性を襲わないと聞いた。とすれば、相手は絞られてくる。


見えた、取り囲まれている。服はボロボロだが女の子だ。襲っているのはテンプレのゴブリンらしい。

数は10匹ほど、こいつ等とも初めて戦う。


ヒャッハー、無双してやるぜ。と自分を奮い立たせて突っ込んだ。





最初の一匹は不意打ちで一撃だった。驚いていた二匹目も無難に倒せた。無双はここまでだった。


ゴブリンたちにも意思疎通の方法が有るのか、ギャーギャー騒いでいるうちに包囲されていた。



2匹が牽制して来たので剣を振ると、後ろから何匹かが切りかかってきた。こいつ等以外と頭が良いぞ。


そうして攻防を繰り返していると 段々と剣が重く感じられてきた。だが、ゴブリンの残りはあと5匹、何とかなるかもしれない。


また やつ等が攻撃してきて、後ろからも攻撃してくる。パターンに対処しようとして足に痛みが走った。何時の間にか一匹のゴブリンが違う位置から俺の足首近くを攻撃してきたのだった。

キズはそれほど深く無いだろうが、足が痛むと動きが鈍る。




「ぃやーーぁぁ」


女の子が初めて小さな悲鳴を上げた。



「くそっ、剣が思うように振れねぇ」


つい弱音が出るほど俺の動きは鈍ってきた。

反対にゴブリンどもの士気は上がったようだ。


まずいな・・。



しかし、一斉に攻撃しようとしていたゴブリンたちは一瞬で倒れ付した。


そう言えば、冒険者の先輩が居たんだっけか。忘れてたとは言わないでおこう。




「レンジぃぃ、このバカーーー」


俺の目では追えないような動きで ゴブリン5匹を屠ったミャウラが 開口一番叫んでいた。


少し遅れてファニルが追いついてきたが、今にも泣きそうになっている。心配かけてしまった。


だが、反省はしているが、後悔はしていない。



足にポーションをかけながら ファニルが魔法で治療している少女を見ていた。


ボロボロではあるが魔法使いなどが着ているローブみたいだ。歳は俺と同じくらいかな、西洋風な顔つきだから判断つかない。にしても、俺を見る目がとっても怯えていらっしゃる。何もしてないぞ。


ほんと、初日から色々と有る世界だな・・。



*********





「ほえー、なるほどね。チートってこういうのかぁ。私もほしいなー」


自身も充分チートであるローレシアは、レンジから借りたラノベを読んで上機嫌であった。



ドンドン☆ドンドン☆


・・・・・・・


ドンドン☆ドンドン☆


「もーっ、面白い所なのに、誰よ邪魔するのは。王様でもひっぱたくわよ」


ドアを開けると そこはレンジだった・・いや、レンジがいた。



(・・・・。)


「なに?君は半日もしない内に戻ってきた訳?しかも、もう女の子に捕まったとか・・ちょっとその子!」


「何と言うか色々有ってね。相談に乗って欲しいんだけど」


「いいわ、取りあえず入りなさい。一応 言い訳は聞いてあげる」


何故かローレシアは怒っている。と言うより殺気を振りまいている。レンジの後ろにはファニルとボロボロの少女がいた。ミャウラは彼女の服を買いに行っている。




案内されたのは入り口近くの部屋。簡単な応接室になっている。


「で、レンジ君。いくら この世界の女の子が積極的だとは言っても、婦女暴行して良いとは言ってないわよ。話によってはゴブリンのエサにしてあげるわ」


少女にはマントを着せていたが、それでもボロボロの血が付いた服は見え隠れしていた。

彼女を見たローレシアは レンジの思考パターンを考え、盛大にカン違いをして怒りに震えている。


このままでは本当に命が危ない!と感じたレンジは話を進める事にした。



「これを見てくれ。何だか分かるか?」


レンジが取り出したのはザクロの実のような姿で、グレープフルーツくらいの大きさの物だった。


最初のうち いぶかしんでいたローレシアは 事態が色っぽい話では無いと分かり、改めて差し出されたものを見つめている。



「見たこと無いわ。何かの種子に見えるけど何の実かしら・・」


「どうやら、此処に居る女の子がボロボロなのは そいつが原因らしいんだ。俺たちでは理解が苦しくて、ローレシアさんに聞いてもらおうと思ってね」


俺の言葉に いち早く食いついたのはファニルだった。急にキラキラした目で笑顔になっている。



「ええっ、この方、ローレシア様だったんですかぁ?。英雄の奥様で大賢者様、私の遠い親戚になりますよぉ。はじめまして、ファニルといいます。マニルのひ孫ですぅ」


「あらあら。懐かしい名前を聞けたわね。でも、そんな大声で人の情報叫んではダメよ」


「いたひ、いたひでふ」


両方のほっぺたを引っ張られたファニルは涙目になっていた。意外と容赦無い、エサにすると言ったのは かなりマジだったのかも知れない。




「話を戻すけど、これは何処で手に入れたものなの?其処から話してくれるかしら。えっと、まず貴方の名前教えてね」


「あっ、ごめんなさい。わたしは クラッカス 。冒険者のパーティで未踏地区の探索をしていたの」


たどたどしく、経緯を語っていく。事の起こりは探索していた地区が おかしかった為、深入りしてしまった事にある。

やけに魔物の少ない森だったらしい。普通は少ない場所でもゴブリン程度は出てくるものだが、気持ち悪いほど静かだった。



それが見つかるまでは・・。




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