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2、今思えば、旅たつ前の取引

「さぁ レンジ、ここに手を持ってきて、さわってみて」


「こ、こうか」


「ん、そうそう。どんな感じ?」


「ああ、問題ないな。いけるよ」


「もうすぐね、我慢して。あっ、きたきた」


「えっ、まだ心の準備が出来てないぞ」


「ほら、ここがね、こんなになったら良いのよ」


「じゃあ、いいんだな。中に出すぞ」


「えっ!?」


いたい・・・・






ボカ☆ボカ☆ボカ☆☆


「いたい、痛いってば。杖で殴るなよ」


「これだから、地球の男子ってば。何 変な想像てしてんのよ」


「いや、目の前に綺麗な子が居て 話の流れに乗ってたら変な気になって来ただけだろ」


「変な事しようとしたら、さっきの地竜みたいに心臓を 切り裂くからね」


ここは、ローレシアが拠点にしている家、人口一万人程度の街の中にある。ここから周辺の地図を作る為に調査の旅をしているらしい。彼女は今後も一人で飛び回るらしく、俺にかまって居られないとのこと。


当然 女性の一人住まいの所に居候するわけに行かない。独り立ちしなくては成らないが、能力が分からなくてはアドバイスしようにも出来無い。ということで、ステータスを調べる魔道具を使っていた訳だ。



「焦らなくても この世界はレンジにとってパラダイスかもしれないわ。いい気に成ってると100人以上の嫁をもらう事になるわよ。相手できるの?。その前に生き残って、養うだけの実力付けないと魔物の餌よ」


プリプリ怒りながらもステータスは教えてくれた。



名前・・・・・レンジ (16歳)


所属・・・・・なし


スキル・・・・剣術+1


称号・・・・・少女に捨てられた男

       太古の呪いで封印された民族

       魔力タンク



これが俺のデーターで、ゲーム的な能力の数値は出せないらしい。常に変化する為に意味が無く、自分で調子を把握するしかないとのこと。



「チートな能力無い・・・見た甲斐がないだろ、これ」


「あなたも この称号持ってるのね・・」


「身に憶えは無いぞ、何だよその 少女に捨てられた男 って。恥ずかしすぎるだろ。機械壊れてんじゃねえか」


「ぷっ。これも面白いけどね・・問題なのは 太古の呪いで封印された民族 って所。たぶん、地球の人間は皆持ってる称号なんだわ。これが有るせいで、魔力が膨大なのに一切の魔法が使えないのよ」


「えっ、まさか剣と魔法の世界に来たのに、魔法使えない?。マジですか」


とんでもない魔力を持っているのだから 本来は大魔法使いにも成れる。ところが 地球出身者は皆 この称号を持ち、魔法が使えないとのこと。逆に自分にも魔法が利かないらしい。つまり、回復の魔法も受け付けない為、大変危ない。話を聞くほどにドンドン絶望が現実的になる。ハーレムどころじゃねえだろ。



「戦いなんてしたこと無いのに、どうすりゃ良いんだ」


「剣術スキル持ってるじゃない。素直に冒険者にでも成るのね。ポーション使えば大抵は大丈夫よ。

でも、何で剣術なのかしら、日本なら刀術に成りそうなんだけど」


「子供の頃 オモチャで遊んでたからだろ」


言えねぇ。中学のとき 木で出来た聖剣を振り回してた、なんて・・。なんか、嫌な事だけは憶えてるな。

まぁ、それは良いとして、これからの方向性は何とか分かったけど、問題が有った。金がねぇ、一文無しだ。



「ホントに世話が焼けるわね、レンジを見ていると昔の旦那を思い出すわ。ゲームみたいに最低限の援助はするから、それで のし上がりなさい。男の子はそういう設定がスキでしょ」


「今の男子が好きなのはチートだぞ。ラノベ見て無いのか?」


「す、少しは見たこと有るわよ。でも 女の子なんだし 男子のラノベは少なくて当たり前でしょ」


「ふーん。じゃあ これ読んでみるか? 記憶が有るなら読めるだろ」


俺はカバンの中から何冊かの本を出した。友達から借りて返すつもりだった本だ。返せなくなってしまった、悪い事をしたな。あいつの餞別だと思うことにしよう。そう 自分を納得させていた。


見ると、なにやらローレシアさんの様子がおかしい。冷静な顔立ちが明らかに興奮している感じだ。そそる。




「ほ、他には何が入っているの?そのカバン」


「えっと、昼の弁当代わりのペットボトルのコーヒーと、パン。あとは筆記用具かな」


まぁ、学校行く途中だったみたいだし、こんなものだろう。彼女は取り出した物をガン見している。

ハラ減ってたのかな?少し前に食べたはずだけど。




「レンジ君、取引しない?。してくれないと 闇討ちして取っちゃうよ」


「それは脅迫と言うと思うのだが、まぁいいよ。君には色々世話になったしね」


「そう悪い話では無いわ。コーヒーが飲みたいのよ、半分ちょうだい。あと、本を この次に会うまで貸しておいて欲しい。その代わり、良いものあげるわ。 体はダメよ♡」


交渉成立すると彼女は いそいそとコップを二つ用意して、コーヒーを半分づつ入れて片方をくれた。




「味わって飲むといいわ。今後 二度と飲めない可能性が高いからね。あと ペットボトルは大切にしなさい。日本ではゴミだけど、ここではアーティファクトよ、オーパーツよ、二度と手に入らない一品ものになるわ。どんなに大金を出しても買えないものよ。自分用の水筒にして無くしてはダメよ」


「お、おう。そうなのか・・教えてくれて助かる」


(念入りに注意されたな。言われて無ければ 気楽に誰かにあげてた可能性あるし助かる。)


発展途上国の女性達が、海外派遣された自衛隊のゴミから梱包用のプラスチックのバンドを集めて それを交互に編みこんだだけで丈夫で美しいカゴを作っていたのをニュースで見たことがある。


ペットボトルだって無い所では大変な宝になる。軽くて少しくらい落としても割れない。中身が一目で分かるのも素晴らしい機能なのだ。





落ち着いたところで 彼女は二本の剣を取り出した。

その隣には小さめの袋。片方だけの眼鏡。

そして小さな小瓶が数本。


「説明するわね。この剣は普通の店で売られているような剣でまあまあな物。もう一本は値段が付かない最高のものよ。最初は普通の剣を使って、自分を完全に守れるようになったら良いほうの剣を使いなさい。そうしないと 殺されて奪われてしまうからね」


「なぁ、本を貸すだけで ここまでしてくれるのか?」


「ふふっ。今に分かるわよ。それより この袋はラノベで言うところのアイテムポーチってところね。かなりの量が入るから冒険には必需品だわ。しばらくは生きられるだけのお金を入れてあるからね。

この眼鏡は鑑定用のアイテムよ、よく見て 防具は自分に合った物を買うといいわ。

そして、これがポーション、いわゆる魔法の薬ね。品質が良いものだから自分で使うといいわ」


その後、色々と生きて行く上での注意点を説明してくれた。俺にとっては、この人に出会えた事がチートだったような気がする。





「この世界は まだまだ誰も知らない事ばかりが広がっているのよ。是非 生き残って私の知らない話を聞かせてね。がんばれ少年」


「ああ、そうする事にしよう。ありがとう」


離れたなら 二度と会えない可能性が高い世界。そんな中で 本を借りておくと言う事が 彼女から出された課題なのかも知れない。


取りあえず冒険者ギルドを目指してみよう。





ローレシアはヒロインではありません。序盤の案内的な存在です。

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