1、今思えば、これが異世界
こんにちは。懲りずに連載始めます。今回はテンプレな異世界ものにしたいけど、
性格が捻くれているので多分変わったものになりそう。
良かったらお付き合いください。
気が付くと目の前に少女が居た。
髪はストレートで肩より少し下で 輝く白に薄いグリーン。そして 瞳は琥珀色。全体が見事なバランスで美しい。普通では有り得ない見た目だ。
少女も驚いて こちらを見つめている。その姿は杖をこちらに向けて構えている。ローブの様な物を着ているので 魔法少女のコスプレでもしているのかと最初は思った。
「いきなり現れるなんて、転移魔法でも使ったのかしら?。近づけないように結界を張ってたのに、すごいじゃない」
後で知ったが 実はこの時、人間を殺せるだけの魔法が使われていたらしい。俺の体質が魔法の利かない変な特徴だった為に助かったようだ。くわばらくわばら。
「は?。どういう事だ、ここは何だ?おまえ誰だ」
正直自分でもどうなってるのかワカンネェ。確か、街の中の川原に居たはずなのに。光に包まれて周りが見えなくなり、そして・・
俺の名前は レンジ 16歳
まぁ、いわゆる普通の男子高校生だ。と思う。
曖昧な紹介だが、何故か自分の事は殆ど思い出せない。
気が付くと この風景が見えていた。
此処は何処だ?森の中みたいだが、色々とおかしいぞ。
全体が青とか 白い木とか有るし。
あそこの巨大な雑草みたいな奴は赤いぞ。
この子は誰だ、こんな場所で女性ひとりで。
「ふーん。その姿、懐かしいかな・・少年は何て名前なのかしら?。何処の国から来たの」
「俺はレンジ。国って、ここは日本じゃないのかよ」
聞いた彼女は複雑な顔をしている。
「そう・・。 君は転移者なんだね。数百年生きてきて 会えたのは4人目よ」
「てんいしゃ?」
(数百年?)
「今この世界で 君の立場を理解できるのは私だけかもね。私はローレシア。種族は男子の好きなエルフよ」
そう言いながら耳を少し見せてくれた。この紹介で モヤモヤしていた疑問が解決できた気がする。
ここは違う世界なのか?。いや、そうでも思わなければ説明が出来ない事ばかりだ。
「俺、自分の事は名前以外 思い出せない。着てる服から見て高校生くらいだと思う」
「ふふっ。無理しなくていいわ。私の旦那だった人も転移者だったから、有る程度の事は分かるつもりよ」
・・・・!
「え?。旦那・・・結婚してるのかぁ?!」
「そんな嬉しい反応しないでくれる。これでも ひ孫までいるのよ。お婆ちゃんなのよ。歳は数えてないから 聞いても教えてあげられないけどね。 !?」
マジかよ。こんなに綺麗なのに・・お婆ちゃんでも良いから 付き合いたいと思うのは変か?。
えっ、急に恐い顔してどうしたのかな・・別に変な事考えて無い と思うけど。
「話は後よ、まず コレを一口飲みなさい。急いで!」
見ると 何時の間にか彼女の手には小さなビンがあった。
今更 疑うわけも無く 受け取って一口飲んだ。
何故か、心底安心している彼女がいる。
「気が付かなかった?。君は今、凄い顔色が悪くなったのよ。たぶん、何かの病気に罹っていたのね。転移者が殆ど見つからないのは、余程の幸運が無い限り すぐに病気になって死ぬからと予想されているのよ。
ラッキーだったわね レンジ君」
何も言えなかった。そう言えば、昔の地球の探検家も 一番恐れたのは猛獣でも現地人でもなく 病気だと何かで読んだ記憶がある。今飲んだのは薬で、俺は目の前にこの子が居なかったら 死んでいたのかよ。
「すまない、感謝する」
「感謝するのは もう少し後にしてね」
声が変わったローレシアは森を見つめている。俺の耳にも草木が倒されていくような音が聞こえてきた。
「しょうがないわね。資金稼ぎでもしましょうか」
「逃げた方がいい様な気がするぜ。でかい奴なんだろ、これ」
「その判断も正しいけどね。これ位対処できなくて 未開の地を探索するなんて無理なのよ」
杖が淡く光っている。何も知らない俺でも感じる力の濃密な流れ。
バキバキッ☆ギシッ
出てきたのは、いわゆる恐竜のトカゲみたいなタイプ。ただし、でかい。三階建ての家くらいは有る。
いや、無理だろこれ。狩りのゲームみたいに 自分の倍もデカイ武器を振り回せる訳ないし。
「えいっ」
なんか、すげー可愛い掛け声で杖を振り下ろした。まんま魔法少女みたいだ。
ズズゥゥーンンン
恐竜は悲鳴すら上げる事無く 血を吐いて倒れ付した。何がどうしたんだ?。何も見えなかったぞ。
俺がアタフタしているうちに、彼女がもう一度 杖を振ると恐竜は消えてしまった。
フィクションとCGがあふれていた日本を知る俺でもリアルにこんなの見せられると驚くし、呆然としてしまう。
「取りあえず、ここから離れるわよ。血の匂いでイロイロ集まって来るからね」
そう言って彼女が何処からか取り出したのは・木馬?。丸太に足と首を付けたような簡単な作りになっている。
さすがに座るところは三角では無いか・・。
「ほらっ、エッチな事考えてないで、後ろに乗って。腰に掴まっても良いけど、変なとこ触ったら落とすからね」
「おっ、おう。わかったよ」
美少女と夢の二人乗り・・・木馬だけど。
うおっ、浮いたぞこれ。異世界すげーっ。
少し高くなってから見下ろすと、本当にイロイロなバケモノが集まってきて 喧嘩とかしてるし。
この森って、実はかなり危ない場所だったんじゃねえか?。
木よりも高く上がると、少し前傾姿勢で進みだした。恐ろしく早いが 風が当たらない。たぶん、そうなんだろうな・・そうとしか考えられない。
「なぁ、ローレシアさん。これって、ヤッパ魔法なわけ?」
「そうね、この木馬自体は魔道具だけど動かしているのは魔法なのよ。やっぱり魔法に興味が有るんだねぇ」
「魔法あるのか、さすがファンタジーだな」
ドゴゥン☆☆
「うあっ」
いきなり鈍い音がして、すぐ近くを大きな物が通過した。休む暇もないな・・。
「こらっ、恐いからって強く抱きつくな。今のはタダのワイバーンよ。エサだと思って襲ってきたけど障壁にぶつかって気絶して落ちただけよ。落ちたから他の魔物のエサになるし、もう来ないわよ」
なんか、メチャメチャ危ない世界じゃねえか?この子に出会ってなかったら、バケモノに食われてただろ。