プロットの書き方を真面目に考える
以前に、別のエッセイで私の書き方としてプロット的なものの書き方を紹介したと思うのですが、どんな風に作っていくのがいいのかな? ってのを真面目に考えてみたいと思います。
そもそもプロットには決まった形式があるものでは無いように思われます。だいたいいろんな人のプロットに関する説明を読んでも『とにかくやりやすい書き方を見つけましょう』的なことが書いてあったりします。
しかし! それだと路頭に迷うよね。迷います。なので、ここは私なりにこんな感じがいいんじゃね? っていうフォーマットと埋め方を考えましょう。
ちなみに、PC、スマホで作業する人が多いという事情も鑑みたうえでの提案。PCやスマホで、テキストエディタだけでできる方法。できたらちょっとだけ高機能のエディタが良いですね。検索機能で『末尾まで検索が終わったら冒頭に戻る』程度のちょい便利機能付きエディタがあるだけで大きくはかどります。
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プロットフォーマット
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□あらすじ
…… (八十字三行程度で冒頭から結末までをまとめる、あとでもいい)
【話の流れ】
※各一行にまとめる、キャラの行動は台詞だけでもOK
※『キャラ』は人物だけでなく社会現象、機械、無生物、自然現象を含む
■章/部名1
チェックポイント1 ←必ず通過する事件・結果
事件の推移1
キャラ1の行動、心情1
キャラ2の行動、心情1
キャラ2の行動、心情1に対する他キャラの反応
※←この辺は適当に階層を深くしていく
キャラ2の行動、心情2
キャラ3の行動、心情1
キャラ1の行動、心情3
キャラ1の行動、心情3に対する他キャラの反応
……
事件の推移2
……
事件の結末(チェックポイント通過完了)
チェックポイント2
事件の推移1
事件の推移2
……
……
■章/部名2
チェックポイント1
……
……
★ ※←ここまで書いた、の印(執筆中)
……
■章/部名N
チェックポイント1
……
結末
【キャラクター設定】
●キャラ1
基礎属性 ※年齢や所属
見た目 ※体格や髪、目、好きな服装。興味なかったらてきとーで
初期境遇 ※どんな境遇で始まるか
目的 ※何を目的としているか。物語の中で変化していくなら変化する流れも。
行動原理 ※どんな性格なのか、任意の出来事にどう反応するかをできるだけ列挙。【話の流れ】中の行動を自然に説明可能なように。プロットを書くうちに変化していく分も書き加えていく。
●キャラ2
……
【舞台設定】
※社会的な組織もここに書く。人物との間に帰属関係があるなら出来るだけ記しておく。
○時代背景
どんな世界、時代なのかを詳しく書いておく。【話の流れ】でのキャラの行動と矛盾しないように。
○舞台1
場所であればどんな場所なのかを細かく。寒暖、日照、乾湿、風景の色、街なら構成する建物の分布や特徴など。必要なら【話の流れ】でのキャラの行動を誘導できるように。
場所ではなく組織の場合は、人物と同じように目的や行動原理、誰が所属しているのか、意思決定はどのように行われているのかを書いておく。【話の流れ】における組織の行動と矛盾しないように、意思決定方法を上手く調整すること。
○舞台2
……
【仕掛け設定】
※SFなら科学技術、ファンタジーなら魔法など。
△トリック
物語のカタルシスを得るために何らかのトリックを使うのであれば、ここに。下記の各『仕掛け』のどれをどのように使って(組み合わせて)トリックを作り出すのかを書いておく。【話の流れ】に組み込む。
▲仕掛け1
基本的に自由記述。これだけで数千字書きかねない(笑)。
▲仕掛け2
……
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フォーマットとしてはここまで
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記号の使い分けのポイント
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エディタで『■』で検索すると各章の出来事リストに、『●』で検索すると登場人物リストに、ジャンプできるので、ちょっと便利です。たいていのテキストエディタはF3で次の検索結果までジャンプできるので、一度『●』で検索してからF3を連打すると読みたい人物のところまで順送りできます。○、△、▲も同様。
執筆中は、書いているところに『★』を打っておきます。こで、『★』で検索することで書いているところにすぐにジャンプできます。
ちょっと良いテキストエディタなら『正規表現』と『循環検索(末尾まで検索が終わったら冒頭から再検索)』を使えると思います。たとえば、検索対象として『^[■●○△▲★]』と指定すれば、『行頭に対象記号がある行だけ』をF3だけでどんどん頭出しできます。執筆位置とキャラ設定の間だけ行き来したければ『^[●★]』、執筆位置とキャラ設定と仕掛け設定なら『^[●▲★]』というように検索窓に入力しておけば、F3だけでぐるぐる回れて便利です。
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次に、実際の書き方です。
どんな話にするのかを頭の中でざっと妄想したら、チェックポイント1と結末を最低限書き、妄想の中でたどったいくつかのチェックポイントも書き足して、出てきた人物の数ぶんだけ人物の箱『●』を用意。
魔法や科学技術上のトリックに頼る話なら、もちろん▲項も先にメモ程度に書いておきます。人や舞台が後ろにあるのはこのため。
この段階でチェックポイント1から結末までをざっと眺めて、流れがおかしくないかチェック。
どう考えてもこのチェックポイントから次のチェックポイントは繋がらないよな、と思ったら、寄り道用のチェックポイントを足し、その流れで●や○や▲が増えるようなら、一行メモ程度で後ろに足していきます。
こうやって、チェックポイント間の流れに無理がなくなったら、次に、チェックポイントの中に事件の推移を書き込んでいきます。
チェックポイント1の推移であれば、チェックポイント1のスタート時点の状況からチェックポイント2の事件が始まる直前まで(自然にチェックポイント2の事件が起こる状況が整うまで)を箇条書きにしていきます。
これを全てのチェックポイントに対して行います。
もちろん、事件の推移の中で新たな人物などが登場するようなら、またどんどん足していきます。この段階で、人物の行動原理などもある程度メモ書きを付け加えていきます。
最後に、推移の中のキャラ行動や現象を書いて、各推移が行動と現象だけで説明でき、次の事件の推移に繋がるように埋めていきます。
これを書いている段階でかなり細かいところまでキャラの行動原理や組織の意思決定方法が決まっていくと思います。
さてこれでチェックポイントいくつか分を埋めていったところで、各キャラや組織の行動原理を見直してみます。
もしかすると、行動原理に矛盾しているところが出ているかもしれません。と言って、今更、全体の流れを変更するのも難しいです。
この場合、物語の中でキャラの行動原理が変化した(成長した)と解釈します。
そこで、行動が変化したちょっと前の事件の中でキャラの成長のきっかけがないか(あったらキャラの行動を追加)、なければそんな事件を盛り込めないか、というのを考えて、付け加えていきます。
組織の行動原理の変化については、たとえば所属キャラを入れ替える事件を起こしたり、組織改革を起こしたりなどで対処します。
ただ、こういった事件が本筋ではない(本筋のテンポを悪くする気がする)場合は『(細かい描写無し)』とか『(キャラAが推測台詞をしゃべる程度)』などの注釈付きで事件を追加しておくと良いでしょう。
この『(細かい描写無し)』などがあとで上手く伏線として機能することもあります。キャラや組織・世界の内情的な(外観に見えにくい)変化は伏線の基本ですからね。
逆に言えば、物語上はその時点で書きたくない部分でも、プロット上はあくまで神様目線で全て書き記しておくのがベターな気がします。
事件追加の場合はあくまで矛盾や不自然が生じないように気をつけて。
ここで問題。
A→B→C→Dという事件の推移があって、Dの事件を起こすために組織Xの内乱的な事件Eが必要になった、とします。どこに加えましょうか。
Dの原因の事件なので、プロット上はCの直後に組み込み、A→B→C→E→Dと並べる方法。もしEの原因となる事件Fが必要ならEの前に。この場合、Cの最後に『時系列的にはDへ』とかの注釈をつけておくことになります。
あるいは、事件EがAとBの間に起きたのであれば、A→E→B→C→Dと書く方法。この場合、Aの最後に『次はB』、Eの最後に『次はD』みたいな注釈をそれぞれつけておきます。
時系列に沿って執筆するスタイルなら、後者の方が後々書きやすいです(書き漏らしが無い)。特に一人称視点なら時系列どおりに並べるのが良さそうですね。三人称(あるいは複数一人称)で場面飛び飛び、時系列も無視して執筆するスタイルなら、執筆中にテンポを考えてプロットのつながりを好きなように前後させて良いと思います。どっちにしろ、時系列どおりに並べておいたほうが抜け漏れチェックがしやすいので、後者をオススメします。
これを繰り返していくだけで、結末までが埋まります。テキストエディタだけで。簡単ですね。
あとは、キャラの見た目や場所や世界に、思う存分趣味を凝らして魅力的なものに仕上げれば、完成です。
最後に。とある優れた作家様にご指摘いただいたのが、次の点。
プロットを書き終わったとき、どのシーンを書きたいのか、どんなテーマを見せたいのか、それを意識してプロットを見直してみること。そこに至るまでの流れと、プロットそのものや自分の文章の特徴・技量がケンカしていないか。この辺を見つめなおすことで、書き足すべき点、削るべき点がまた見えてくる、ということです。
そういったものは、とりあえずは括弧書きの注釈で(※書き足し:×××……)とか(トル)とかつけて行って、何度か見直してみるのが良いのかもしれません。具体的な手法を思いついたらまた改稿したいと思います。
私自身がこのやり方に完全に準拠してできているかというと実はそうでもないのですが(先に超書きたい技術ネタができてしまってそこを細かく埋めてしまい、それを活かす話を後付けで考えたり)、割と矛盾なく話をつなげていける方法じゃないかなあ、と思います。
ちなみに慣れてくると、プロット(【話の流れ】部)の一行が何文字に当たるかで物語の総量を推測できるようになります。私の場合は一行が五百文字くらいの比率に落ち着いています。人によって違うと思うので、何本か書いてみたら、プロットからの物語総量予測、試してみてください。
ここはこんな風に改善したほうが良いよ、なんてのがあったら、ぜひ教えてください!