青年1
あるところに、それはとても見目麗しい青年がいました。青年は国では有名な貴族で王様に仕えていました。彼はとても優秀で、恰好よく、この国の貴族で彼を知らない人はいません。彼たくさんの女性に好かれていました。
――そう、思っていました。
ある日、国で一番大きな舞踏会が開かれました。可愛らしい女性や大人の女性が、青年の周りを纏わりついては彼をダンスに誘います。
そんな中、一人だけ彼に見向きもしない女性がいました。彼女は空に輝く月を眺めては、手元にある料理をちまちまと食べています。それは国で一番の美しい少女でした。青年は自分がもてると自覚していたから見向きもしない彼女が気に食いませんでした。ほかの女性を放って、青年が彼女に声をかけます。
「ねぇ、君は踊らないの?」
「踊りが苦手ですから」
「そうなの? じゃあ僕が教えてあげるよ。さあレディお手をどうぞ」
「いえ。私には月を眺めている方が楽しいので。あなた様と踊りたいかたは沢山いますわ。ほら、あちらに」
女性はそう言って彼をさりげなくかわしました。
青年は面白くありませんでしたが、しぶしぶと女性のもとを離れて行きました。
しかし、その目だけはいつの間にか女性を追っていました。
その後も舞踏会がある度、青年は女性を探し続けましたが、姿を見ることはできませんでした。