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  作者: まころん
第1章
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晩餐会の出席者は、グランとセシルの他『皇族の丘』の住人十六名だ。席次は、皇位継承順位の高いものから並ぶ。

順に皇位継承一位のリオン、二位のカレンナ、三位のプリューム。

プリューム・マートル(三十一歳)は、先々代皇帝三男の娘で本来なら血筋からも年齢からも継承順位が一番高いはずだが、体の弱さから車椅子での生活を余儀なくされ、継承順位も三位となっている。

その後には、『皇族の丘』の蝙蝠ターベレ家の二十歳を頭とする五人の子女が並ぶ。少しでも皇位に絡めるよう子どもを大勢作るところは、さすがと言うか抜け目がない。

裏の権力が最も強いギヌダ大公のウォッパ家は、皇位継承権を剥奪されたためどん尻となる。



会場である『豊饒の会堂』大食堂の中央には、相変わらず長大な卓がでんと構え存在感を示していた。

いつもと違うのは、皇帝が座する頂点の位置に椅子が二つ並べられていることだ。これまでの慣わしでは、皇帝夫妻といえども席を並べたことはない。

招待客の皇族たちは、ひそひそと憶測をかわしていたが、皇帝入場の声に口を噤んだ。


グランが、皇帝の正装である金糸で縁取られ深緑のマントを身に纏い入場した。背にはロウダン国の紋章に黒の雫が加えられた紋が浮き上がっている。皇帝だけが、許された紋だ。


長卓の最上位についたグランは、鋼の名の通り硬く鋭い面貌を居並ぶ皇族に巡らせ、そして一点で留めた。そこには、皇族入りの儀式に乱入したギヌダ大公の息子ゲオリュマがいた。通常の式典には、顔を出したこともない男だ。これまでは、周りの者は、その方が好都合だったので看過していた。


グランは一瞬視線をも鋭くした後、表情を消した。セシルの入場が告げられた。

「グランジウス皇帝陛下兄君セシリウス殿下ご入場」

両開きの巨大な扉が開けられ、セシル付親衛隊オルゲムントに先導されたセシルが入場すると、大食堂にどよめきが起きた。


先ずは、セシルの清らかな水を想わせる美しさに――。


セシル付近侍マヒロとワンヘイは、頑張った。

忠誠を誓う主の心柄と生まれ持った姿の美しさを列席者に示したかった。


輝く白の髪は、脇の髪を結い上げ腰まである後ろ髪は流し、その錦糸を金に黒耀石をあしらったサークレットが飾る。羽織るマントは床まで届き、グラン同様深緑に金糸の色合いだが、グランの重厚なマントとは違い、しなやかな風合いは、細身の肢体を浮かび上がらせる。

胸にあるのは、セシルの体にある黒耀石をかたどった首飾りだ。この首飾りが、どんな形でどんな大きさの黒耀石を持っているかを表す。



次いで、列席者の皇族達が、どよめいたのは、


   ―― 白 ――


有史以来、どの大地でも皇族が白の民だったことはない。

下賤な、卑しい〝白〟が、この皇族の丘に立ったことなどない。


セシルが、皇族たちの視線の中、緊張の面持ちで歩みを進める。その姿をグランが、見つめる。

いよいよ自身の脇に最愛の兄が到着すると、グランは兄の為に椅子をひいた。決して皇帝の仕事ではない。

長卓を囲む一同は、驚きに目を瞠った。眼前にいるのは、確か鋼と称された皇帝のはずだが。


「グラン、ありがとう」

兄の言葉に鋼の皇帝は、表情を緩めた。

セシルが、グランの隣に着座すると、晩餐会が、始まった。





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