幕間 おみやげ
いつものように茶を入れた宰相イオリにリオンが包みを渡す。
「リオン殿下、土産の品ありがとうございます」
宰相イオリは、丁寧に礼をする。
リオン殿下は、優しい。帰還のたびに土産を買ってくる。珍しい物を買ってくる。他の者が、絶対手に取らない物を買ってくる。
包みを開けた宰相イオリは、固まった。
「……これは……」
「『カマハゲ』と言うのだ」
「……か・ま・禿・げ?」
中には50cmほどの人形が入っていた。
鬼の面(頂に頭髪なし・桃色の唇・頬から顎にかけて髭跡)に丈の短い薄桃色のドレスを纏い、大きな出刃包丁を持って腰をくねらせている。
リオン殿下は、容姿端麗、頭脳明晰、武術にも秀で、性格も穏やかで理想の皇族と言える。
しかし、……そのセンスは、愚弟ズシーヨに通じるものがある。
この『黒耀の間』を優美にかつ居心地良くあつらえてきた宰相イオリは、ガバッと頭を下げた。
「殿下、申し訳ございません。私の力量が足りないばかりに、このカマハゲ様を魅惑的に飾ることが出来ません。さすれば、典雅な殿下のお部屋こそ相応しいかと」
「そんなに、気に入ってくれるとは嬉しい限りだ。心配するな。皆の分も買って来てある」
「………」
「これは、魔よけだそうだ。イオリの宅のエントランスにでも置くといい」
「…………」




