表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝都神獣守護録~花嫁と血筋の鎖  作者: 秋乃ねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/7

EP1

「なんで私の視界に入ってくるんだよ!」


 思いっきり肩を押された清原紗月は、箒を持ったまま尻もちをついた。


「す、すみません」


 すぐにその場で膝を揃えると、頭を地面につけて土下座をする。


「そんなことで、許されると思ってんの!」


 彼女は一言を発する度に、紗月の頭を何度も踏みつけてくる。石がないところで良かった。でも何度も踏まれると首が痛い。

 それでも地面が揺れているように見えるのは不思議だ。


「聞いてんの!」

「は、はい! 申し訳ありませんでした」

「この人殺しが! 反省をしてないから、私の視界に入ってくるんだ。そうでしょっ!」


 自分は掃除をしていただけ。でも周りをよく見ていなかった。石はないけど額が痛い。でも痛みには慣れているし、痛みを和らげる方法も身についている。痛みを受けている自分を遠くから見るように感じること。紗月は謝り続け、嵐が去るまで耐えるしかない。


「いいか。お前は前ご当主様のご厚意で、ここに置いてもらっているんだ。お前に殺された家族の善意でもあるのを忘れんじゃないよ」

「はい。申し訳ありませんでした」

「それだけかい?」

「いえ。私みたいなものが生きていて申し訳ありません。私が死ねばよかったのです。償いとして私は皆様からは、どのように扱われても構いません」

「そうよ。お前はごみ以下の人間。身を弁えなさいよ」


 やっと気持ちが晴れたのか、彼女の地面を踏む音が聞こえなくなるまで紗月は土下座を続けた。

 やっと終わった。顔を上げ額にへばりついた砂を落とす。


「血は出てないみたい。よかった。それにしても寒いなあ」


 見上げた空は灰色に沈み、肌を刺すような寒さだ。長襦袢と薄い安物の生地でできた着物だけでは、今の寒さには適していない。

 八歳の時に永久に、と入れられた座敷牢からは結局一年くらいで出され、ただただ清原に尽くすことだけが求められた。


「でもお金がないから、誰かが捨てる着物をまた探さないと」


 冷えきった手を擦り合わせ、白い息を吹きかける。それでも、指先の冷たさは少しも和らがなかった。

 掃き掃除をしていた庭には紅葉の木が植えられているが、既に葉は地面のように色をなくしている。風が吹けばはらりと落ちる姿は、紅葉の魂が土に還るように見えた。

 地面を蹴る音が聞こえてくる。あの人が戻ってきたのかもしれない。紗月は振り向きざまに頭を下げる。


「え」


 一気に大量の水が頭の上から降ってきた。いや、かけられたようだ。


「やっだー! 誰かと思ったら、仲間殺しの紗月じゃなーい! ごめんね。掃除後の水を捨てにきただけなの。あ、でも、水浴びができて良かったよね」

「本当! 私たち、優しいわよね!」

「本当本当。でも鷹明様の妻になったらあんたみたいな奴、追い出してやるから」

「そうそう。せいぜい物乞いにでもなればいいのよ」


 ああ、この二人は、現当主の鷹明様に取り入ろうとしているけど、相手にすらされていない。今日もきっと、その憂さ晴らしなんだろう。いつものことだった。二人が笑いながら去っていく。


「お風呂……入れるかな」


 下げたままの髪からポタポタと雫が落ちていくのを、紗月はぼんやりと眺めていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ