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天星球

 蒼の目の前に現れた本物の天使、ミカエル。ミカエルは蒼に何かを伝えるために呼び出したようだ。

ミカエルは地上に降りた瞬間に蒼の目前で翼が蜃気楼のように消えた。まだ蒼は唖然としているがミカエルは「さて、早速だけで私がなんで貴方を呼んだのか、分かる?」そう言われた蒼だがあまり見覚えがなく「い、いや、分からないけど」「そ、やっぱり鈍感ね。貴方はね…」話の本題に行く前に蒼は「ちょ、ちょっと待って」「何よ?」蒼は一つ疑問に思っていたことを伝えた。


「あの時話かけたのは、天使さんなんだよね?」脳内に語り掛けたのはミカエルかどうかを聞いた。

「私だけど?後、私と二人の時はミカエルでいいわよ。皆の前ではダメだけど」正体を明かした天使、ミカエルは二人きりの時は本当の名前で呼ぶようにと言った。


「口で話してなかったように見えたけどどうやって話したの?」不思議に思っていたことを聞くと「私達天使は口を動かさなくても心で対話することが出来るのよ。人に対してだったら一方的にはなるけどね」ミカエルが当たり前のような能力だと言うと蒼は「まだ心のどこかで信じられてなかったけどやっぱり本物の天使なんだろうな」疑心暗鬼だった天使の存在だったが、心に対話出来る能力がある事が分かれば天使がいることを信用するしかなかった。


「それで本題だけど、今朝に落ちてあった球を拾わなかった?」球の事を聞かれてポケットの中から割れた球の片方を取り出し「これのこと?これって天…いや、ミカエルのだったの?」割れた球を見るとミカエルはため息をついて「はぁ…やっぱり、割れてたか」どうやらこの球の持ち主はミカエルのだったようだ。


神妙な面持ちでミカエルは蒼にこの球の詳細を語った。

割れた球を手に取ったミカエルは「これは天星球てんせいだまって言ってね、私達天使であることを証明する球なの。

天使一人一人に持たされるものでね、これが無いとどれだけ翼を広げようが何をしようが天使だって言えない。要するにこれは天使の存在そのものよ。だからとても大切にしなきゃいけない物なのよ」

天星球は天使の存在証明のような物であり。この球に何かあればそれは天使としての名折れでもあった。


蒼は大切な球を割ってしまったことに少し罪悪感を感じていた。「それ、何かあったらどうなるの?」「無くす、もしくは割れたりした場合は天使は天界から追放される」

物騒な言葉が聞こえた蒼は「追放ってどういうこと?」詳細を聞くと「さっきも言った通り天星球は天使の証明、それに何かあれば天使としては重罪よ。うっかり地上界に落としたのは私とはいえ許されることじゃない。私は天使の資格を無くなったただの天使。

簡単に言えば私は天界には居られなくなった」


その言葉で事の重要性が分かった蒼は青ざめた顔になり「そ、そんな…お、俺に出来ることがあったら、言って」落としたのはミカエルとは言えそれを割ってしまったのは自分。責任感からか蒼はミカエルに献身的になった。


だがミカエルはそこまで焦っている様子はなくこんなことを。

「へぇ優しいのね。でもまぁそこまで焦る必要はないけどね」「えっ、でも天界にはいられないって」「直せるものだから」「ええっ!」さすがに驚いた蒼。


「天界には天星球を直す職人さんがいるの。私の知り合いだから、直してもらうわよ」驚きはしたものの天界を永久追放されたわけじゃないことが分かった蒼は「そっか、ならよかった」安堵の表情を浮かべた。そんな顔を見たミカエルはほんの少しだが蒼への表情を柔らかくした。


だがよく考えるとまだ疑問が「でも、どうしてこの学校に入学を?単に俺と話しがしたいのなら入学なんてしなくていいんじゃ」天星球の事を話がしたいだけなら話かければいいだけだが学校に入学をする理由は分からなかった。


「言ったよね?私は天界にはいられないって」「でも直せるって…」「すぐには直らないのよ。直るまではこの地上界にいなきゃいけないの。地上界に何もせずにいるのも退屈だし学校に入学して高校生の生活でも楽しもうかなって」理由はどうあれ天界には住めなくなったミカエルは生活を地上界に移すしかないため高校に入学したのだった。


「ただ自分は天使だって事は隠すわよ。物事を大きくしないためにもね」そう言ったミカエルだが天使の翼がなければ普通の女子高生とそう変わらない。


蒼は色々と聞いた限りではミカエルが天界の住人というのは事実でありここに来た理由も悪さをするためではなく単に天界にいられないため地上界に住むしかないことも分かった。「悪い人じゃなさそうだし、これから仲良くしていけるかな?」そう考えていた。


だが話はここで終わりではなかった。

「それで貴方を呼び出したのはこの話をするためともう一つ、貴方には天星球割った償いをしてほしいの」きょとんとした顔になる蒼。

「つ、償い?」「ええ、これより風間蒼は私の天星球が直るまで私の召使いとして生きなさい」あまりに唐突の宣言に整理が追い付かない蒼は「ちょ、ちょっと待って!なんで俺がそんな…」納得のいかない蒼だが「それはそうでしょ。だって貴方が割ったんだから。それぐらいはしてもらわないと割に合わないわよ」「割りに合わないって」


するとミカエルは両腕を上げて伸びをした後に「とりあえず今日は帰る、じゃあまた後で」ミカエルは蒼から振り返って屋上の扉の方に歩いた。


「ちょっ、まだ話が…」蒼がミカエルを止めようとしたその時、ミカエルの背中から片翼だけ蜃気楼のように広げると蒼の右足一歩先の屋上のコンクリートが一瞬でヒビが入った。

明らかにミカエルの仕業だと分かった蒼は驚きと冷や汗により開いた口が塞がらなかった。

ミカエルは同じように翼を消すと顔だけ振り返って「何か文句でもある?」狂気的な眼差しで蒼を睨みつけた。


反抗の言葉も出なかった蒼「な、なんでもないです」とっさの言葉は敬語になってしまった。返事を聞いたミカエルは笑顔を向けてその場から立ち去った。


その場から動けなかった蒼はしばらく立ち止まり今後のことを考えていた。「これからどうなるんだろ…召使いって何?何をしたらいいんだ?それに天界の天使…情報量が多すぎて何から片付ければいいんだろう。とりあえず俺も帰ろう、明日土曜日だしこの休日を使って考えよう」

蒼も帰ることにしたがその足取りは重たかった。


----------


 帰り道イヤホンで音楽をかけながら帰路を歩く蒼。好きな音楽が流れるがその足取りは重い。「はぁ…」ため息をついた後に「これからどうなるんだろう」今後の学校生活の不安をあらわにするがミカエルの今日の行動を見返すとクラスメイトには優しく接していたり仲良く話していた。席が近いということもあり、特に佐奈とは一日でかなり仲良くなっているのを見た。


表情からはとても楽しそうにしている限り根っから悪い人ではないのかもしれないと判断した蒼はそう考えれば少しは気が楽になり重い足取りも少し軽くなった。


そう考えていると家の前まで来ていた。玄関の扉を開けて「ただいま~」と声に出して帰ってきて靴を脱ごうとしたその時、明らかに母の靴ではない女子高生が履くような靴があった。

「誰の?」疑問に思っていると「あ、蒼お帰り。どうしちゃったの~?」なぜか変なテンションの母の藍璃。「なにが母さん」「誰々あの女の子?もしかして彼女?」何のことか全く分からなかった蒼だがある可能性が頭をよぎった。


「そ、その子どこにいるの?」「蒼の部屋にいるけど」蒼は靴を脱いで急いで二階に上がり自分の部屋に入るとそこには優雅に座るミカエルの姿が。

「な、なんでここにいるんだよ!」驚き考える前にいる理由を聞くとミカエルは不適に笑い「私、地上界に身内も誰もいないの。住む場所がないんだよね。だから今日から貴方の家に住まわせてもらうから、これからよろしくね」

色んな感情が入り乱れる中で蒼は心の底から大きな声で「なんでなんだよーーーー!!」


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 翌朝、目を覚ました蒼は朝になっているのが分かった。スマホの見ると時間は9時36分の土曜日。昨日のことは鮮明に覚えている蒼は「夢か…」と安堵の表情を浮かべたが隣を見ると今まで自分が寝ていたベッドにミカエルが寝ている姿があった。

「…そんなわけないか」あの後本当に住むこととなったミカエル。当たり前のように藍璃と蒼と食事をして当たり前のように蒼のベッドで寝た。仕方なしに蒼は布団を用意して床に敷いて寝た。


ミカエルを起こすのも抵抗があった蒼は一人こっそり起きて部屋を出て一階に降りた。降りてリビングに行くと母がテレビを見ながらくつろいでいた。蒼を見かけると「あら、蒼おはよ。今日は土曜日なのに早いね」普段休日は昼前まで寝ている蒼に意外な顔をする藍璃。


蒼も椅子に座り「おはよ。母さんはなんでそんなに平気なの?いきなり新しい人が住むことになったんだよ。普通戸惑ったりするでしょ」にも住むことを伝えたミカエル。驚いた顔を見せたが理由を聞いて即座に入居の許可を出した。蒼は理由を聞きたかった。

「いいじゃないあの子可愛いし。それに、普通の人じゃなくて天使様が住むなんて私はウキウキしちゃうよ」


蒼は驚きすぐに立ち上がり「天使だって知ってるの!?」「うん」何気ない表情で答える藍璃。

「だったら尚更…」「あの子どこにも住む場所が無いんでしょ?そんなの可哀想。だったらせめて私達の家で過ごさせてあげてもいいじゃない」お人好しで優しい藍璃の性格を考えればミカエルを住む選択をしたのだと分かった蒼は「まぁ、母さんが良いなら俺はいいよ。そこは仕方ないか」不本意なところはあるが納得をした。


すると階段を降りる音がして一階に眠そうな顔でリビングに入ってきたミカエルは「ふわぁおはよう」「ああ…おはよう」まだミカエルがこの家に住むことを信じられない蒼だがもうここまで来れば信じるしかなかった。


「おはようミカちゃん。朝ごはん用意するから椅子に座ってて」「やった~」無邪気な笑顔を浮かべるミカエルの表情を見て蒼は「そんな笑顔も出来るんだな。まぁここまでくればなるようになれだ。一緒に住んでみるか」


こうして二人の同居生活が始まりこれから少し変わった非日常が始まる。

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