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ロクサーヌ

数日後、花売りがアクレナイト家を訪問した。

 花売りは奥様に呼ばれたと言った。

門番は花売りを屋敷に入れた。

花売りは花を沢山入れた籠を持って屋敷へ入って行った。


「ミア様からの書類です」

花売りは花籠をロクサーヌに渡した。

ロクサーヌは花を避けると分厚い書類を籠の底から出した。

「分かったわ。これを町中にばら撒くのね」

「私もお手伝いを致します」

「大丈夫。手配は出来ているわ」

ロクサーヌは言った。


深夜、数人の男達が町中を走り回ってビラを色々な場所に置いた。

公園のベンチ。教会や神殿の入り口。駅……。店の入り口。


 

次の朝。


「うん? 何だ? これは?」

朝早くから仕事を始める人達が色々な場所に置かれたビラを見て驚いた。

「な、何だと?」


『リエッサ王妃はジョレス国王とリナ王妃を毒殺した。その証拠はリエッサ王妃の部屋にある。リエッサ王妃の私室には毒の入った小瓶がどこかに隠してある。何故そんな事を知っているか。それは私が毒を王妃に手渡した本人だからだ。嘘だと思うなら調べてみればいい。』


街は騒然とした。



◇◇◇

 

ロクサーヌは温かいお茶にブランデーを少し垂らした。それを一口飲む。

さっき、召使が大騒ぎをしながらビラを一枚持って来た。

「奥様。大変で御座います。こんなビラが至る所に置かれて、町中大騒ぎで御座います」


ロクサーヌは驚いた。(振りをした)

「まあ、何て恐ろしい。誰がこんなビラを……」

「それよりもここに書かれている事は本当で御座いましょうか?」

「噂はあったけれど、まさか本当だとは……」

ちらりと侍女を見る。

「良い? 余計な事は決して言わない様に。王室に対する謀反で縛り首になるわ」

ロクサーヌは侍女に口止めをした。

「はい。分かりました」

侍女は出て行った。

ロクサーヌはチラシを丸めるとゴミ箱へ入れた。



その時、家令が部屋へ駈け込んで来た。

「奥様。ガジール殿が帰って来られました」

「何ですって? ガジールが? では、シンジノアも? すぐに王宮へ早馬を出して旦那様をお呼びして」

すぐに部屋を出て走り出した。

「もう行かせました。奥様。ガジール様だけです」

家令は追い掛けて来て言った。



ロクサーヌを見るとガジールは跪いて頭を垂れた。


「ガジール。シンシノアは? シンジノアはどこなの?」

「ロクサーヌ様。も、申し訳が御座いません。シンシノア様は、森で蛮族に襲われて川に落ちてしまったらしく、どこを探しても、その姿が見当たりません。ずっと下流まで皆で探したのですが、見つかりません!皆見付かるまで探すと言っております。私がお館様までお知らせに走りました」

ガジールはそう言うと汗と泥にまみれた顔を歪ませて地面に突っ伏した。

獣の様な咆哮と悲痛な呻き声がロクサーヌの耳に届いた。



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