エピローグ 4
インディグランドの船着き場に着いた。
舟渡は少なかった。
イエローフォレスト王国の舟渡は新国王のお祝いに王都へ行っているので今日は休みだ。
王都の広場で無料のご馳走が振舞われるのだ。
「ご立派な騎士様。戴冠式のお祝いには行かないのですかい」
頭に角のある舟渡がそう言った。
「今日はお祭りだからと言ってイエローフォレスト王国の舟渡はお休みですわ」
「ああ。俺はブラックフォレスト王国に大事な用があるのだ」
シンジノアは言った。
船はゆっくりとインディグランド川を渡る。
◇◇◇
カーラ地方では国を守ろうとするハアロ大将軍の西軍、レンドルの軍、それからラミスの軍の必死の戦いがあった。加えてカーラ地方までわざわざ船でサンドドラゴンを運んで行ったミランダ王女の大暴れも目を見張るものがあった。
巨大な砂トカゲに乗ったミランダ王女。
どちらの国の兵士達もその威容に息を飲んだ。
話には聞いていたが、見たのは初めてという者ばかりだ。ラミスは腰を抜かし、ルードは狂喜し、カランとシャルルは万歳を叫んだ。
サンドドラゴンは無敵だった。
ただ困った事にサンドドラゴンには敵味方の区別が付かなかった。
敵も味方もきゃーきゃーと逃げ回る。
サンドドラゴンは後ずさりが出来ない。常に前進あるのみ。
「わはははは」と高笑いをしながら戦場を一直線に疾走するミランダ王女。
走り抜けたところで方向転換をしてまだ戻って来る。
サンドドラゴンの通り過ぎた後には 死屍累々……。
一往復した所で檻に戻された。
一方、グリンデルタ側ではカール前王に付き従う貴族達の兵がデズモンドとスチュアートの国王軍を撃退した。
グリンデルタの内戦は終結した。
国務大臣デズモンドと国軍大将モーリスは謀反と国家転覆の大罪で処刑。
デズモンドに与したスパイのクリスとレオナルドもとっくの疾うにイエローフォレスト王国でルイスに処刑されてしまった。
王弟スチュアートは王位をはく奪されて修道院に送られてしまった。
サラース男爵の領地はそのまま保証され、イエローフォレスト王国に対しての情報提供という事でサンドラ女王から報奨金が支払われた。
また、カール王により男爵から子爵への格上げがなされた。
サンドラ女王はグリンデルタ国に対して賠償金を要求した。それに関しては両国間でまだ決着がついていない。
グリンデルタのカール王は「リエッサ王妃が国を売った」と言いサンドラは「デズモンドがイエローフォレストを侵略した」と言った。
「今回の戦いを制したのは一応我が国である。賠償金を払え」
サンドラはそう言って譲らなかった。
国の為なら1ビルドでも多くふんだくってやろうとするその粘り強さに、ルイスはちょっと引いた。
ブラックフォレスト王国に対する1/4税は廃止となり、舟渡の数の不均等も是正され同数で稼働する事となった。
ハアロ大将軍は種々の責任を問われて大将を辞任。
レンドルに軍が返され、「東軍」が復活した。
西軍は国軍としてルイス自らが大将となる事となる。
有能な側近であるフロレスはそのままルイスの武官となった。
サンドラとルイス・アクレナイトが新王妃と新国王という事が国の重臣会議、イエローフォレスト王国全ゼノン教連合に承認されて新王国がスタートした。
イエローフォレスト王国全ゼノン教連合はジィド辺境伯を「大聖人」と認定し、彼や多くの信徒、民衆を殺害した軍の暴挙を「否」と判定した。これは後の世に影響を及ぼす大判定であった。
ルシールと言う恐ろしい魔女がイエローフォレスト王国を混乱に陥れたという話は周囲の国々にも広まった。しかし、誰一人として彼女が何者であったか知る者はいなかった。また、どうしてそんな事をしたのかをも。
◇◇◇
シンジノアは胸ポケットの婚約指輪とメッセージカードを手に取って眺めた。
あの時、頭を強打したお陰で記憶が戻って来ていた。




