エピローグ 3
荒天の中グリンデルタの兵と甲板でやり合っている時、横波で船が大揺れに揺れた。誰もがごろごろと転げた。海に落ちる者もいた。シンジノアも慌てて柱に手をやったが、弱い右足が災いをした。彼は派手に転んで頭を強打した。脳みそが揺れたと感じた。頭を押さえて立ち上がった時、自分の前に猫耳帽子を見た。
これは幻かと唖然とした。
頭を打ったせい?
「まさか……?」
猫耳帽子は両手に剣を握り自分を守る盾の様にそこに立っていた。
「……サツキナ姫?」
シンジノアは言った。
サツキナは剣を構えたまま「いつまで転がっているのよ。早く立ちなさいよ!」と叫んだ。そして襲い掛かるグリンデルタの兵を一刀の元に切り捨てた。
「シンジノア殿。大丈夫ですか?」
駆け寄って助け起こしてくれたのはカラミス王子だった。
シンジノアは「サツキナ姫。カラミス王子。……御国に帰られたのでは……?」と言った。
「サンドラ女王の要請に応じて馳せ参じました」
カラミス王子が言った。
「イエローフォレスト王国とブラックフォレスト王国は対グリンデルタに対して同盟を結んだのです」
「ええっ? そうなのですか?」
「ダンテ王はサンドラ女王の要請に対して船と兵を送ったのです」
「我がレッドアイランドの兵も来ています」
カラミス王子は言った。
シンジノアは頭を振りながら立ち上がった。
一気に頭がクリアになったと感じた。
「あれ、サツキナ姫?」
サツキナが目の前から消えていた。
シンジノアは慌てて探した。
見ると猫耳頭は両手に剣を握り船の上を飛び回り、周囲の敵を次から次に薙ぎ払っていた。
それを唖然と眺めるシンジノアとカラミス王子。
「……」
「無敵ですね」
「ああ。……凄いな。敵に回したくない」
「彼女は三国一の花嫁ですよ。タフだし優しいし賢いし美しい。何よりも面白いお方だ。
一緒にいて退屈しない。……全く、どこかの間抜けな貴族は勿体無い事をした。……婚約破棄とは……。愚かな事を……。では私がその後を継いで遠慮なく彼女を」
そう言ったカラミス王子にシンジノアは厳しい顔で言った。
「誰も婚約破棄などしていない。それはあなたの勘違いだ。言って置くがあなたと彼女は友達だ。それ以上じゃない。サツキナ姫がそう言った。あなたもいい加減立場を弁えて欲しいものです。カラミス王子」
「おやおや。(笑)。強気ですね? さては記憶が戻りましたか?」
「戻っても戻っていなくてもサツキナ姫は私の花嫁です。言って置きますが、彼女の半径2m以内には立ち入らないでください」
冷たい目で睨まれてカラミス王子はクックと笑う。
「それは難しい……。さて、我々も……おや?……。シンジノア殿。見てください。ブルーナーガより援軍が来ましたよ」
カラミス王子が指差す方向を見ると地平線に夥しい軍船が海を埋め尽くしているのが見えた。
◇◇◇
グリンデルタの船は大敗を喫してほぼ壊滅状態。
戦いが終わってシンジノアはサツキナを探した。港に戻って来た船をひとつひとつ当たって探したがその姿を見付ける事は出来なかった。
「サツキナ姫は既にブラックフォレスト王国へお帰りになりました」
ブラックフォレスト王国の兵士が言った。




