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エピローグ 1

「シンジノア。行くのか?」

「はい。兄上。申し訳が有りません。大切な戴冠式祝賀パーティーに出席しないで」

「まあ、いいさ。式が無事に済んだから。……サツキナ姫がお前を許してくれるといいな。彼女に宜しく伝えてくれ。その節は大変世話になったとな」

「はい。分かりました。兄上。俺は許してくれるまでサツキナ姫の傍を離れない覚悟です」

シンジノアは笑った。

「頑張れよ。応援しているからな」

「はい。ルイス・アクレナイト・イエローフォレスト国王陛下。心からお祝いを申し上げます」

そう言うと深々と頭を下げてシンジノアは城を後にした。



イエローフォレスト王国の新国王。

ルイス・アクレナイト、それと新王妃、サンドラ・アクレナイト。


その戴冠式に国中から貴族がお祝いに来ていた。またブラックフォレスト王国を始めブルーナーガの国々、レッドデザイアーの国々からも多くの来賓が王都へ来ていた。色取り取りの衣装が街を鮮やかに染めている。王都は活気に満ちていた。


あの動乱から半年の時が過ぎた。



◇◇◇


ルシールが火刑になって消えた後。


ハアロは茫然と処刑台の上に残された衣服を見詰めていた。

自分の目が信じられなかった。


「おい、ミア様の縄を解け」

ルイスが言った。

自失茫然としていた近衛兵が慌てて縄を解く。


ハアロはふらふらとルシールの衣服に近寄る。それを手に取りじっと見ていたが、突然両手で引き裂いた。剣を取り出すと何度も衣服を突き刺した。目を吊り上げた怒りの表情で豪華な衣服がぼろぼろになる程突き刺した。

誰もが唖然とそれを見守った。



ルイスの横を通り過ぎた女性がいた。

サンドラである。サンドラの手を取っているのはロクサーヌだった。

「母上?」


ロクサーヌはサツキナに言った。

「サツキナ王女。サンドラ様の手を取ってあの台の上に」

サツキナは頷いた。そしてルイスを見た。

ルイスも頷く。

サツキナはサンドラ王女の手を取ると処刑台の前に立った。


「ハアロ大将軍」

サツキナは狂った様に衣服を突き刺すハアロに声を掛けた。

ハアロは振り向いた。

その顔に悔し涙が流れていた。


ハアロはサンドラを見ると目を見張った。

縄を解かれたミアはサンドラ王女を見てはっとすると慌ててそこに跪いて頭を垂れた。

ハアロは口を開けたままサンドラを凝視している。

広場の民衆は騒めく。兵士も近衛兵も騒めく。


さっき石を投げて魔女を倒した猫耳娘が簡素なドレスを身に纏った女性を伴っている。


あの猫耳女は誰だ?

一緒にいるあの女性は誰だ?

誰もが処刑台を注視していた。



「サンドラ様。私が言った方向に顔を向けてください」

サツキナは耳元で囁く。サンドラは頷く。



近衛兵が次々に跪付く。

「頭が高い!!」

サンドラはハアロに言った。

凛として澄んだ声が響く。

ハアロは慌てて跪付く。

サンドラは処刑台に上がった。


「私は今は亡きジョレス国王とリナ王妃の一人娘、サンドラである」

盲目の王女は周囲を見渡して言った。

おおっっという声が広場中に響いた。

「サンドラ王女、リエッサに殺されたのでは?」

「いや、塔に幽閉されていたと聞いている」

「盲目の王女だ」

民衆はわちゃわちゃと騒ぐ。



「静かに。大切な話がある」

サンドラは声を上げた。

民衆は静まる。



「前王夫妻を毒殺したのはルシールと共謀したリエッサである。ルシールはハアロ家にリエッサの義祖母として暮らしていた。

ルシールは裏庭でこっそりと毒草を育てていた。

ルシールが魔女だった。リエッサはすでにルシールに殺されてしまった。証拠はリエッサ直筆の手紙で既に昨夜ダレード神殿、エトルリア神官に届けられている」

民衆も兵もまたどよめいた。


ハアロは目を丸くした。

どうしてそんな事を知っているのだ。

という事はリエッサが手紙を託したのはサンドラ王女なのか??

一体どうやって……。

ハアロはミアを見る。

ミアは身じろぎもせずにサンドラを見詰める。


サンドラは声を張り上げて言った。

「内乱をやっている場合ではない。リエッサ王妃の体を乗っ取ったルシールがグリンデルタ国に国を売った。すぐにでもグリンデルタ軍がカーラ地方に攻め入って来る。戦に備えるのだ!」


「なんだってぇぇ!!」

「ええええええ!!」


広場はまたしても大混乱に陥った。



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