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思わぬ所に伏兵が……

ロクサーヌは、待ち合わせの場所で待っていた。

 ララがリエッサの手紙をダレードの神殿に届けた次の朝、ミアをオルカ国へ送ると言う手はずになっていた。


 ミアは西の繁華街に来た所で、「土産物を買う」と言って店に入って来る。

そこでロクサーヌと目を合わせる。ただそれだけだった。だが、ロクサーヌもミアもお互いの無事をその目で確かめたかった。



「遅いわね。……もう予定した時間から1ルワンも過ぎている」


ロクサーヌは店の中でイライラしながら待っていた。

と、見るとララが急ぎ足でやって来るのが見えた。


ララはロクサーヌを見付けるとその後ろに回った。

品物を物色する振りをして後ろから言葉を掛けた。

「こちらを振り向かないでください。……大変です。奥様。ハアロの屋敷を出て幾らもしない内にミア様がリエッサの兵に連れ去られてしまいました」

「えっ……?」

ロクサーヌは驚いた。

「罪状は王妃に対する謀反です」

ララは言った。

「彼等はミア様が家を出るのを待ち構えていたみたいです」


「ララはそのままハアロ家を監視していて頂戴!」

そう一言い置くとロクサーヌは急いで店を後にした。




牢屋に捕えられてしまったミアをルシールは微笑んで見ていた。

「お母様。あんな嘘ばかりの怪文書を流して王都を混乱に陥れるなんてひどいじゃありませんか。お陰で私の面目は丸潰れですわ」

そう言ってミアの罪状を並べた。

「怪文書を流して王都を混乱に陥れた威力務妨害罪、騒乱罪、名誉棄損、王妃に対する侮辱罪。数えればきりがありませんわ。ほほほ」

「私を魔女だって言っているのですってね。お父様に。お陰でお父様も私を警戒しているご様子。馬鹿みたいですわ。魔女などこの世に存在しないのに」

ルシールは言った。

ミアはぎょっとする。

「何でそんな事を知っているのかっていうお顔ですわね。ふふふ。アンに聞きました。アンは人が良いから。アンも呆れていましたわよ。お母様は頭がおかしくなったって。将軍とお母様が言い争っているのをドアの外で聞いたらしいですわ。将軍は声が大きいですからね。ふふふ。今回お母様がご実家に帰られる事を教えてくれたのもアンですわ」



ルシールはアンが良く行く甘味屋に行ってアンを待ち伏せした。

(アンの事ならよく知っているから)

そして偶然会った呈を装ってアンに好きな物を奢ってやって屋敷の内情を聞き出したのだ。



「はあ……」

ミアはがっくりと肩を落とした。

思わぬ所に伏兵がいたのだ。



「残念ですわね。お母様。魔女は火あぶりですわよ。さくさくと公開処刑にして差し上げますわ。その前に、お母様に協力者がいますでしょう? その方の名前を教えて頂ければ、火あぶりは止めて断頭台へ送って差し上げますわ」

ルシールは笑った。



ミアは「ふうっ……」息を吐く。

「仕方が無いわ。じゃあ、教えるわね。よく聞きなさい」

「ふふふ」

「ルシール。一歩遅かったわね。リエッサのサイン入りの手紙はもうダレード神殿に届けられたわ。今頃将軍や宰相、神官達がそれを見て協議しているわよ。朝には将軍も神殿に呼ばれていたからきっとその話よ。将軍は兵を出すでしょうね」

そう言うとルシールを蔑んだ目で見た。

「馬鹿な魔女ももう終わりよ」

「何じゃと!?」

ルシールは驚いた。

「お前は神殿に連れて行かれてそこで正体を暴かれるのよ。お前こそ火あぶりだ」

ミアは怒りの眼差しで言った。



「だったら今すぐにお前を公開処刑にしてやろう。そして次はハアロじゃ。魔女を匿った罪じゃ。大将を失った西軍が混乱している内にグリンデルタの軍がやって来る」

「グリンデルタ?」

「そうじゃ。儂はグリンデルタに国を分け与えてやるのじゃ」

「ええっ?? どう言う事?」

「お前には分からん。お前の様な虫けらには。……儂の望みはのう。儂の望みは壮大な……。ミアよ。この国は崩壊する。ブラックフォレスト王国同様に。はははは。ミアよ。あの世でリエッサが待っておるぞ。可愛いリエッサが」


ミアが唖然としている内に高笑いを残してルシールは去って行った。


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