今、そこにある危機
シャルルはまずシンジノアの事を尋ねた。
ジョージはまだ記憶は戻らないが元気で領地にいると答えた。
「国が平和になりましたら是非シンジノア殿をお尋ねして、親交を深めたいと思っております」
シャルルはそう言って頭を下げた。
「これは我が兄ラミスからアクレナイト侯への手紙です」
シャルルはそう言って手紙を手渡した。
ジョージはラミスからの手紙を開いてみた。
「アクレナイト侯。その節は親父がご迷惑をお掛けしました。大変な事が起きました。詳細はシャルルの話を聞いてください。ラミス・ジィド」
ジョージはその手紙をじっと見ていた。
「で、話とは?」
ジョージは言った。
◇◇◇ ◇◇◇
「何だって!!」
シャルルとカランの話を聞いてジョージは思わず立ち上がった。
「リエッサ王妃がグリンデルタ国と……。国を売っただと!?」
「はい。サラース男爵がそう言っておりました。ですからこれはリエッサには内密に」
シャルルが言った。
「もう既に我が兄がレンドル殿の城へ援軍を頼みに行きました」
「うむう……何という事を……」
「カーラ鉱山侵攻、我が港への侵攻、そしてブラックフォレスト王国……。何故ブラックフォレスト王国なのか……」
ジョージは「あっ」と声を上げた。
「ブラックフォレスト王国に攻め入れとしつこく騒いでいた。それが出来ぬからグリンデルタと組んで……。ああ、そう言う事か。……という事は王妃の傍にグリンデルタの……それがパンジーだったのか!」
シャルルとカランはその姿を見守る。
「ちょっと待っていてくれないか? 今、家族を呼ぶから」
ジョージはそう言うと家令に皆を呼ぶように言った。
◇◇◇
部屋の中にはジョージ、ルイス、ロクサーヌ、ハシン、カラミス、ヨハン、オダッチ、そしてシャルルとカランがいる。
ルイスは今までの経緯を皆に説明した。
今のリエッサ本当のリエッサでは無く、ルシールと言う魔女が体を乗っ取っている事、乗っ取りが起きたのはリエッサの嘘妊娠がばれて実家に戻っている時だという事、ルイスはリエッサとルシールの思惑で術を掛けられて大怪我をしてしまった事、リエッサはルシールに殺されてしまっている事などを。
それから今回のグリンデルタの陰謀とルシールが国を売った事などを。
シャルル、カラン、カラミス、オダッチなどがジョージの話を聞いて驚いた。
「魔女だって?!」
「ま、まさか」
「信じられん!」
「だが、本当だ。ルシール魔女はどうしてもブラックフォレスト王国に攻め入りたいらしい」
ジョージが言った。
ヨハンは首を傾げた。
「何がそんなに気に入らないのか。首根っこを捕まえて聞きたい。だが、それよりもまず国へ帰ってダンテ王にこの事を知らせなければ」
そう言うとジョージを見た。
「アクレナイト侯。私は今からすぐに国へ向かいます。申し訳が無いがサツキナを置いて行きますので宜しくお願い致します。カラミス王子。済みませんが私と共に来てくださいますか。場合によってはレッドアイランドへ援軍をお願いするかも知れない」
ヨハンは言った。
「分かりました。ご一緒致します」
カラミスは言った。
「ロクサーヌ。リエッサの手紙をダレード神殿のエトルリア神官に届けるのは今夜だったな?」
ジョージは尋ねた。
「はい。門を閉める寸前に渡すと」
「明日になればダレード神殿からお呼びが掛かるだろう。これは一気に進めるしかない。
私は事が済めば、すぐに領地へ戻ってシンジノアと共に戦いの準備をする。ルイス。王都を任せても良いか?」
ジョージは言った。
「分かりました。サンドラも明日には到着するでしょう。父上。ハアロ大将軍にはすぐさま兵を引き連れてカーラ地方の方へ向かって貰いましょう」
「そうしよう。これだけの証拠が集まればもう将軍もリエッサを庇う事は出来まい」
そう言うとシャルルとカランを見た。
「申し訳が無いが、明日、ダレードの神殿に一緒に行ってもらい、今の話を宰相や重臣達の前でして欲しい。あなた方に直接話してもらった方がいい」
ジョージの言葉にシャルルとカランは頷いた。
◇◇◇ ◇◇◇
サツキナの部屋にカラミス王子とヨハンがやって来た。
「サツキナ。先に帰ってきる。大丈夫だ。アクレナイト侯がオルカ国へ援軍を頼んでくれた。具合が良くなってから帰って来るんだぞ。無理をするな」
「サツキナ姫。私が必ずブラックフォレスト王国を御守り致します。御心配は無用です。まずはお体をお大事に」
二人はそんな事を言って去って行った。
サツキナはそれを熱に冒された頭でぼんやりと聞いた。




