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フロレス武官 3

「パンジー男爵はクリスの『はとこのいとこ』だ」

ルシールは説明をする。

「はとこのいとこ……」

フロレスは繰り返す。


「お前の代わりにクリスを側近にする。そして2か月後にはレオナルド殿と婚約する。そして豪華な婚約披露パーティーを開く。結婚式は完成した夏離宮で3か月後に執り行う!」

ルシールは、ひょっとしたらレオナルドが隠れているのではと衣裳部屋を覗き込んでいるフロレスに言った。

「はい?」

フロレスは振り向いた。


「お前の代わりにクリスを側近にする。そして再来月にはレオナルド殿と婚約する。そして豪華な婚約披露パーティーを開く。結婚式は完成した夏離宮で3か月後に執り行う!」

ルシールは繰り返した。


フロレスは茫然と王妃を見る。


「……夏離宮はまだ完成しておりません。如何せん、費用が足らないし職人も足らない」

「それをブラックフォレスト王国に負担させるのじゃ! 職人も費用もな。断ったら即海軍をけしかける」

フロレス武官は「ふうっ」とため息を吐いた。

「お言葉ですが王妃。……それは陸軍、海軍、それに宰相殿や重臣の方々に話は通って」

「無礼者!それはこれから通すのじゃ。あの国は我が属国と同じ。如何様に扱おうが私の勝手じゃ!」

フロレス武官はまたまた驚いた

「ブラックフォレスト王国を我が属国などと、いつどこで決まったのですか? 誰が決めたのですか!」

こんな王妃、消えてしまえと思った。



「それは昔からそうだ。ジョレス国王以前のガロン・ド・チャンドラル大王の頃からのう……」

「ガロン・ド・チャンドラル?」

「そうじゃ。偉大な王だった。ブラックフォレスト王国を果敢に攻めて現在の1/4税を彼の国に掛けた偉大な王じゃ」

「あの、先の大戦の?」

「そうじゃ」

「ダッカ杉を焼いて呪われた? 一族が全て死んでしまった?」

フロレス武官は首を傾げる。じっと王妃を見る。

その探る様な視線にルシールはびくりとする。

仕舞った。言い過ぎたと思った。

「と、ジョレス国王が仰っていたのじゃ」

ルシールは慌てて言い繕った。


フロレスの目がふっと笑った。


「……それよりも、それでは結婚式は真冬じゃ無いですか。夏離宮で真冬に結婚式とは招待客は凍えてしまうのでは? くすくす。誰も来ないかも知れないな……。だが、しかし、もう私には関係が有りません。リエッサ王妃。解任の件、了解致しました。私はすぐに王宮を去ります。ではこれで失礼致します」

「フロレス武官。それで仕事の引継ぎをクリスと」

「引継ぐ事など何もありません。それよりも早くその物忘れの病気が治らないと退位勧告が出ますよ。重臣の方々の名前は覚えましたか? お祓いを前倒しする様に国務大臣に進言して置きます」


「な、なんだと!! 何と無礼な!! きー!!」

王妃のぎゃあぎゃあと騒ぐ声を背中にフロレス武官はドアをバタンと閉めた。

思わずガッツポーズが出た。

足取りも軽くスキップしながら王宮の廊下を通り抜けた。


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