カーラ山脈のラミス殿
「ラミス様。グリンデルタ国のサラース男爵が至急にお目に掛かりたいと」
深夜、眠っていたラミスは家令に起こされた。
「何だって? サラース男爵が? こんな時間に?」
「はい。直々にお見えで御座います」
ラミスは何事かと慌てて部屋を出て行った。
広間にはサラース男爵と数名の従者がいた。
皆、黒いマントを着ている。それが雨に濡れていた。
「サラース殿。この様な悪天候の、それも深夜に……。一体如何なされたのですか?」
「ラミス殿。お休みの所、申し訳が無い。緊急の話がござる。一大事じゃ」
サラースは言った。
「グリンデルタ国でクーデターが起きた」
「えっ?」
「現王カール殿の弟君スチュアートが王位奪還を狙って謀反を起こした。王と宰相は逃げて、今はどこかに潜伏している」
「な、何と!」
「黒幕は国務大臣のデズモンド侯爵だ。国軍大将モーリスと共謀してスチュアートを王に担ぎ上げた。軍は王都をあっという間に制圧したらしい。デズモンドは極右急進派だ」
「恐ろしい程に用意周到だったという事だ。……それで、今から数日後……」
サラース男爵は言葉を切った。
「グリンデルタ軍がカーラ山脈へやってくる。ここを完全掌握するためだ。国王軍は鉱山を直轄地にする積りだ。国営になったら俺の領地は没収になる……その後、ラミス殿の領地に攻め入る積りだ。」
「ええっ?!」
ラミスは驚いた。
「カーラ鉱山全てをグリンデルタが掌握したいのだよ。デズモンドはそれを狙っている」
「うそぉ!」
ラミスは叫んだ。
◇◇◇
広間にはラミスに叩き起こされたルード、シャルル、カランがいた。
サラース男爵は説明を続けた。
「王は謀反を起こしたスチュアートに反旗を翻せとあちらこちらの貴族に檄を飛ばしている。その使者が我が領地へもやって来たのだ」
「手始めはカーラ鉱山。そして次にアクレナイトの港。そしてブラックフォレスト王国。それがデズモンドの狙いだ」
「な、何でブラックフオレスト王国?」
「知らん。だが、今イエローフォレスト王国は動乱の最中だ。スチュアートとデズモンドは王都まで進軍して王都を制圧するかも知れん」
「な、なにぃ!!」
ラミスは目を剥く。
4兄弟は口を開けたままサラースの顔を見詰める。
「す、すぐに王都のリエッサに遣いを」
「駄目だ!」リエッサは駄目だ!」
「どうして?」
「リエッサはデズモンドと密約を結んだらしい。ラミス殿。よく聞け。リエッサは国を売ったのだ。リエッサは売国奴だ」
「なんだってぇぇぇぇぇぇ!!」
4兄弟は椅子から立ち上がった。




