フロレス武官 2
数日後フロレスはリエッサ王妃を尋ねた。
風邪はようやく良くなったらしい。
リエッサ王妃は1か月も公務をお休みしていたと言う事だった。
リエッサ王妃はダンテ王の書簡を読んだ。
それを手にフロレスに向き直った。
じっと黙って彼を見ていたが開口一番「貴様はクビだ」と言った。
「はい?」
フロレスは聞き返した。
「二度と言わぬ。貴様はクビだ」
彼は唖然とした。
「理由はお前が余りにも無能だからだ」
リエッサ王妃はフロレスを睨んだ。
「何故無能か言って教えよう」
そう言うとリエッサは手紙をぐしゃぐしゃと丸めてフロレスに投げ付けた。
「お前は何の為にブラックフォレスト王国へ行って来たのだ? ダンテ王は金を運んでくるどころか、王妃の偽妊娠の所為で結婚式が無くなったのだから100万ビルドを返せと書いておる。何故ダンテ王はそんな事を知っておるのか。あまつさえ私がサツキナ姫を拉致しようとしたなどと言う酷い嘘まで書いてある」
リエッサは疑り深い目で言った。
「お前が言ったのではないのか?」
フロレスは慌てた。
「いえ、とんでも有りません。私はリエッサ王妃は流産されたのですと訂正をしたのですが、何故かダンテ王は偽妊娠だと言われて。私も不思議だなと思ったのです。何でそんな事をご存じなのかと。サツキナ姫の拉致に関しては、私の方がびっくり致しました。ジェド伯に……」
言葉を切ってリエッサを窺う。
「まさか、我が国の女王がそんな事をするはずが有りませんと断固抗議致しましたが……。リエッサ王妃。これは我が国の信用問題です。何故、そんな噂が他国にまで流れているのか、ジェド伯の領地へ私を調査に行かせてください。私が重箱の隅を突っつく程の調査をし、全てを明らかにして見せます」
フロレスがそう言うとリエッサは慌てて、「いや、それはもういい」と言った。
「……そうですか。しかし、この様な噂が広がると王家の品格がダダ下がりに」
「いいと言っておる!」
「分かりました。式が無くなった事に関しては、先日リエッサ王妃がそう仰っていたので、式は無いと思われますと私が言いましたが……」
「だから、阿呆だと言うのじゃ。式はある」
「えっ?」
「しかし、ルイス様とはご結婚されないと」
「それはその時の話じゃ。今は予定がある」
フロレス武官は唖然とした。
「そ、そ、それは、ど、どなたと……」
「それは私です!」
突然、衣裳部屋の扉がバンと開いて男が出て来た。
「うわっ!」
フロレスは飛び上がった。
心臓が止まるかと思った。
まさか、そんな所に人がいるとは思わなかった。
出て来た男は近衛兵の制服を着ている。
まじまじと男の顔を見る。
「お、お前は近衛兵2年目のクリス・ポピー!」
「はい。そうです。フロレス武官。近衛兵2年目のクリス・ポピーです」
男は答えた。
「いや、結婚相手はその者とは違う」
リエッサはあっさりと否定した。
「その者はフロレス武官の代わりになるだけだ。私の結婚相手はレオナルドである」
「誰?!」
フロレス武官は思わず叫んだ。
「どこのレオナルドですか?!」
王妃は答えた。
「レオナルド・パンジー男爵である」
「私の紹介でーす」
クリスが「えへっ♡」と笑って言った。




