王都の混乱
ハアロ大将軍は毎日大忙しだった。何故なら、とんでもない怪文書がばら撒かれたせいで王都のあちらこちらで暴動が起きているからだ。
「リエッサ王妃を裁判に掛けろ」
「とんでもないスズメバチめ!」
「あんな王妃は廃位だ。リエッサを縛り首にしろ!」
ジョレス国王夫妻の毒殺嫌疑に加えて、またジィド伯の話が持ち上がって来る。
曰く。全てはジィド伯の呪いだ。
曰く。ジィド伯があの世からリエッサ王妃を断罪している。
曰く。ゼノン神官や信者を無残に殺したのだから王妃は罰を受けるべきだ。
毎日の様に王宮に石が投げ入れられて、投げ入れた犯人は衛兵に連れて行かれた。
人々は口々にリエッサ王妃を裁判に掛けて真偽を明らかにせよと叫んだ。
王都は大混乱だった。
それなのにミアは平静な顔でお茶を飲む。
ハアロはそれが不気味だった。
ハアロはミアに言った。
「ミア。あの怪文書を流したのはお前じゃないだろうな!」
「あら、嫌だ。将軍。あの晩、私は将軍に頭がおかしいと言われて泣き寝入りしていたじゃないですか。そんな事は知りませんわ。まあ、天罰でしょうね」
「だが、リエッサに毒を渡した人物がいるとしたらそれはルシールだろうが!!お前はルシールを別荘に隠していた。お前以外の誰がそんな事をするのだ!」
「将軍。何を言っているのですか。言ったじゃありませんか。今のリエッサはルシールでルシールは魔女だと。別荘にいた本物のリエッサは身の危険を感じて、文書を誰かに託したのかも知れませんね」
「いい加減な事を言うな! お前以外誰に託すのだ!」
「じゃあ、将軍は私を逮捕しますか? 怪文書を流した罪で」
「ぐっ……」
ハアロは言葉に詰まる。
「リエッサの部屋で毒を探せばいいじゃないですか? 証拠はどうしました?」
「それは見付からなかった。あらゆる場所を探したが見付からなかった」
「はっ。ぼやぼやしているからですよ。既にどこかに隠してしまったに違いない」
ミアは軽蔑した様に言った。
「……ミア。お前は自分の娘が苦境に立っているのが辛く無いのか?」
ハアロは信じられないと言う顔で言った。
「あれはルシールです。ルシールはリエッサを家ごと焼き殺したのです。あなたこそ、悔しく無いのですか? リエッサは若い体を乗っ取られて、それで誰にも顧みられず死んでしまって……」
「あれはリエッサじゃ!」
「リエッサではありません。ルシールです。……だったら、私を逮捕して投獄でも何でもすればいいでしょう?」
ミアは返す。
ハアロはため息を吐いた。全くの堂々巡りだった。
「それよりもあなた、リエッサと結婚すると言うパンジー男爵について調べたのですか?」
「うむ。今、アクレナイトが調べている所じゃ。フロレス武官の代わりに採用した近衛兵2年目年目のクリス・ポピーの親戚だと言うが……。この国の男爵クラスなど百人はおるだろう。中には貧乏で爵位を売ってしまった奴もおるし……」
ハアロは答えた。
「その男が毒を隠しているかも知れない」
ミアは呟いた。
「その男がどこかへ隠してしまえば、誰も分からない……。全く忌々しい事。軍も重臣達も何をやっているのかしら。給料泥棒とはこの事よね!」
あからさまに非難され、ハアロ大将軍は返す言葉も無い。
「王妃の悪魔祓いはどうなったのですか! まだですか!」
ミアは言った。
「分かっておる!!」
ハアロはとうとうブチ切れた。




