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それぞれの思惑

 シンジノアとサツキナ一行は王都のアクレナイトの屋敷に到着した。

先触れが出ていたので、家族は揃って出迎えた。


誰もが涙を流してシンジノアを抱き締めた。家来達も大喜びだった。しかしシンジノアは茫然とするばかりだった。

王都も自分の屋敷も何となく覚えがある。だが、家族の顔をすっかり忘れてしまっていた。


 サツキナは王都のアクレナイトの屋敷はこれで二度目である。

一度目はシンジノアを探しにブラックフォレスト王国を出て来た後で立ち寄った。

その時にジョージとロクサーヌに挨拶をしている。


 今回カラミス王子が見付けてくれたと言う事でアクレナイト夫妻はカラミス王子に深く礼を言った。また、シンジノアの手当てをしてくれたデイジーに厚く礼を言った。そして後程施薬院へ褒美を贈ろうと言った。


 デイジーはイエローフォレスト王国第一の貴族であるアクレナイトに礼を言われて頬を紅潮させていた。



◇◇◇


 村を出る時にビルはデイジーに言った。

「デイジー。アクレナイト家の人々に気に入られれば、お前はアクレナイト家のお抱え施薬師になれるかも知れない。いいか、みんなに好かれる様にするんだ。大丈夫だ。お前は人に好かれる性格だ。素直だし無邪気で愛嬌もある。ただお調子者で余り深く物事を考えないのが玉に傷だな。

お抱えの施薬師になれれば、どこかの貴族と結婚する事も夢では無いだろう。このチャンスを逃さない様にするんだ。リードと言う見ず知らずの青年を助けた事によって俺達にも幸運が舞い込んで来た。有難い事だ。まさかアクレナイト侯の息子殿とは……畏れ多い事だ」


「お前がシンジノア様を好きな事は私も知っている。だがサツキナ姫とシンジノア様の邪魔はするなよ。シンジノア様は雲の上のお人。一国の王女が婚約者なのだから、お前にとっては手の届かぬお人なのだ。お前が嫉妬して邪魔をしたら折角のチャンスが水の泡になるからな。冷静に自分の将来を見据えるんだ」

ビルは念を押した。

「いいか。礼儀正しくするんだぞ。シンジノア様はリードでは無い。タメ語も駄目だ。サツキナ姫に嫌われたら終わりだからな。誠意をもってお仕えするのだ」

ビルの言葉にデイジーは頷いた。




デイジーは華やかな舞踏会でリードと踊る自分を想像した。美しいドレス。輝く宝石。

周囲の貴族達がため息を吐いて自分とリードを見ている。そんな事は有り得ないと分かっていても……。

「お父様はああ言ったけれど、私は他の貴族じゃ無くてリードがいいの。リードと結婚出来たら凄い事だわ。だってアクレナイト家に嫁ぐのだから。それが夢だとしても少しぐらい楽しんでもいいわよね?」

デイジーは自分にそう言った。


 

◇◇◇


その晩、ジョージはサツキナに言った。

「国が落ち着いてから、シンジノアにこの話をしようと思います。今、話をしても混乱するだけですから。しかし、サツキナ姫はシンジノアの婚約者ですので知って置いて欲しいと思っています」


「実を言うとシンジノアは現オルカ国王の第二子なのです」

サツキナは心の中で「やっぱり」と思った。

シンジノアの話やカラミス王子の話から薄々そんな感じがしていたのだ。


「シンジノアが生まれた時、オルカ国王のマッカラル王の王妃マーリン妃にはすでに1歳になられるヘリング王子がいらっしゃいました。マーリン妃はマッカラル王の従姉で、幼い頃から婚約が決まっていたのです。マーリン妃はかなり嫉妬深い性格だったらしいです。王を束縛して女を近付けない様にしていたと聞きました。

狩りが好きなマッカラル王が山岳地帯に狩りに出掛けて、そこで宿泊した屋敷の娘、それがボニート嬢でした。ボニート嬢はフラウンダー子爵の娘です。


 マッカラル王はボニート嬢に惚れてしまったのです。

ボニート嬢は妊娠したが、それがマーリン妃にばれると、マーリン妃に殺されてしまうのではとマッカラル王は考えました。マーリン妃は息子を溺愛していたから邪魔者は排除するかもしれないと。そこでマッカラル王はボニート嬢をレイ国に隠したのです。


ボニート嬢は難産でシンジノアを産んで亡くなってしまいました。生まれた子供の行く末を案じたマッカラル王はシャーク宰相にお前の子供と言う事にせよと言ったのです。

そして子供を安全な場所に隠せと命令したのです。困り果てたシャーク宰相が私を頼ったと言う訳です。


その頃、ロクサーヌは折角身籠った子供を流産してしまっていましてね。悲しみに暮れていましたが、シンジノアが来て、我が子だと思って育てると言って喜んだのです」


「マーリン妃は息子が3歳になる前に馬から落ちて亡くなってしまいました。現王妃のアルフォンシーノ様はおおらかで穏やかな方です。細かい事には拘らない。だから第一王子のヘリング王子ものんびりと育って来ました。ヘリング王子はシンジノアが第二皇子だと言う事も分かっていて、将来はオルカ国へ帰って来て自分を助けて欲しいと言っています。

シンジノアの事はオルカ国でも公然の秘密の様なものです。イエローフォレスト王国では我が家の者だけしか知らないが。


だが、アクレナイトでもルイスが国王になると後継者がいなくなってしまうから、それも困るとは言ってあるのです」

「オルカ国とアクレナイトは親戚みたいなものです。まあ、それが原因でリエッサ王妃にスパイ容疑を掛けられたのですがね。今思うとそれが全ての始まりだった……」

ジョージは言った。


「サツキナ姫。明日、領地に向かってください。王都は危険です。シンジノアも領地でのんびりと過ごせば記憶が戻る事でしょう」

 ジョージはそう言って微笑んだ。


デイジーはシンジノアの施薬師として領地に付いて行く事になった。


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