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サツキナ姫

 シンジノアが見付かったという知らせを聞いて慌ててその場に走って行ったサツキナの目に入ったのは、地面に倒れているシンジノアとシンジノアにしがみ付いて彼を庇っている若い女性、その前に仁王立ちしているカラミス王子だった。

 サツキナは慌ててシンジノアに駆け寄った。

「シンジノア様!」

「サツキナ姫」

カラミス王子が叫んだ。


「サツキナ姫?」

デイジーは呟いた。


「あっ」

声を上げた。

思い出した。リードが夢で呟いていた名前。

この女の人が?

このもふもふの猫耳帽子を被った人が?


「シンジノア様。大丈夫ですか?」

シンジノアは助け起こそうとするサツキナの手を払った。

「俺に触るな!」

サツキナはびくりとした。

「デイジー、手を貸してくれ」

デイジーはシンジノアの手を引いた。

シンジノアの腕を両手で支え、敵対する眼差しでサツキナを見る。

サツキナは唖然として二人を見る。



「そこの女、アクレナイトから離れろ! シンジノア・アクレナイト。貴様はサツキナ姫の婚約者の癖に何をやっている!」

カラミス王子が叫んだ。

「婚約者?」

シンジノアとデイジーの声が重なる。

「そうだ。この方がお前の婚約者サツキナ姫だ。まさか、忘れたと言うのでは無いだろうな!」

シンジノアは驚いた顔でサツキナを見る。

「この、ふざけた猫耳帽子を被って男のなりをした変な女が俺の婚約者だって? そんな馬鹿な!!」

彼はそう叫んだ。



◇◇◇



シレソ村の小さな施薬院の前は大変な人だかりだった。

村人は一体何事かと施薬院の前に集まってきている。

彼等が施薬院に近寄れない様に兵達がぐるりと囲っていた。



「デイジー、ビル。シンジノア様を見付けてくださって有難う。そして、今まで看護してくれて有難う御座いました。心からお礼を言います。」

サツキナは頭を下げた。


帽子を取ったその頭に小さな角がある。

シンジノアもビルもデイジーもびっくりしてサツキナを見ていた。

「魔族?!」

「はい。そうです。私はブラックフォレスト王国の第一王女サツキナです」

「ブラックフォレスト王国の王女様!?」

「はい。そうです。シンジノア様はイエローフォレスト王国第一の貴族アクレナイト侯爵の次男殿で、私達二人は婚約者なのです」

「アクレナイト侯爵様ですと!?」

ビルが叫んだ。


「何と……。貴族の風格があるとは感じていましたが、まさかアクレナイト様とは……」

彼はそう言ってしみじみとシンジノアを見る。


「そしてこちらは我がブラックフォレスト王国との同盟国レッドアイランドの第三王子カラミス王子です」

「レッドアイランドの王子様??」

デイジーとビルは慌てて腰を折る。

(実は、彼等はレッドアイランドなんて知らない)

カラミスはにこりともせずに3人を見ている。


「そしてこちらはシャルル・ジィド殿。ジィド伯の息子殿です。シャルル殿はずっとシンジノア様を探してくださっていたのです。シンシノア様。あなたはずっとシャルル様と一緒にいたのですよ」

サツキナはちょっとぽっちゃり型の青年を指示した。

「な、なんと、ジィド伯の?」

ビルは驚いた。

「シンジノア殿。良かった。本当に良かった。生きていてくれて本当に……。あなたは私を助ける為に蛮族に立ち向かって行って……覚えていませんか? 川に落ちて仕舞ったのです。私は一旦城に戻り、それからすぐにこちらにやって来ました。アクレナイト家の兵士の方々と一緒にあなたを探していたのです」

シャルルはシンジノアの手を取って嬉し涙を流した。


「俺がアクレナイト侯爵という貴族の息子……? 魔族の王女が婚約者?……レッドアイランドの王子……? ジェド伯??」

シンジノアは茫然とした顔で呟いた。


 

「シンジノア様。明日にも使いがレンドル侯の城に向かいます。レンドル様より馬車を借り受けまして王都のアクレナイトの屋敷に向かいます。御父上もお母上も兄上様も大変お喜びになる事と存じます。

ビル、デイジー。王都は現在酷い混乱状態です。でも、シンジノア様をお助けした功績できっとアクレナイト侯からお礼の言葉とご褒美があると思います。一緒に行きませんか?」


サツキナは微笑んでそう言うと二人を見た。


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