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最終話


 三田一輝 芸人




『はい、どうもーロケッツでーす!』


今日も15年前に一度テレビに出た映像を観ている俗に売れない芸人、三田一輝41歳。


俺は売れない芸人をやっている。昔所属していた事務所はクビになりそれ以来事務所には所属していない。


今は、事務所を探している段階だから「自称芸人」にあたる。


元相方のツヨシはお笑いを辞めて、まじめに就職して、安定した給料を貰っている事だろう。


そんなツヨシは俺が落ち込まないように、たまに飲みに誘ってくれる。


ツヨシはいい奴なのだ。


勿論ツヨシが奢ってくうれるのだけど。


俺は」深夜の工事現場のガードマンをして生きている。


固定の仕事の方が稼げるのだが、悪いクセでいつ誘われるかわからないという理由で、自由の利く日払い


の仕事をしている。


ツヨシ以外誘われないのに。


そんな今日はツヨシとの飲み会だ。俺が先に居酒屋に着いたようで先に入って席を取っておいた。


しばらくすると、スーツ姿のツヨシが現れ「ゴメン、ゴメン」という表情をしている。


開口一番「お前またやせたな~!大丈夫か?今日いっぱい食えよ!」


俺は照れくさく「ありがとう」と返した。


ツヨシと会うと自然とお笑いの話になる。


ダウンタウンがどうした、千鳥がどうしたなど。


遥か遠い芸能人の話を聞くと胃が痛む。


それはツヨシとコンビ組んでいる時に、さんざんお笑い理論みたいなこと話したからかも知れない。


「さすがに事務所入ってないのはきついな」ツヨシが言った。


「でも、もうどこのオーディションもうからないし…」



「もう俺才能ないのかな」


「辞めるのか?」


「いや、お笑いが好きだけど、笑えない」


「お前風俗でも行ってさっぱりして来いよ」


「そんな金ねーよ!」



「甲本ヒロトの名言であるぜ?」


「なんて?」



「駄目なら駄目なほどカッコいい世界ってあるんよ」って。



「俺は駄目すぎるよ」



「一輝人生これからよ」




お会計を済ませたツヨシ。




「いつもありがとう」



「俺はお前の唯一のファンだからな」



居酒屋を出て方向が違うツヨシとわかれて歩く。




真っすぐ歩いていると、ふと見上げた夜空に流れ星が通った。




俺は甲本ヒロトの言葉を頭で繰り返してた。




ドブネズミになって、もっと駄目になってやろうかと。





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