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ギャルゲーのヒロインに転生しました〜前世の婚約者はハーレム主人公に転生してました〜

作者:

※注意事項※


・【星聖エステレア皇国】のifエンディングから遠い未来

・ヒーローヒロインは上記作と同じ

・本編ネタバレあり




✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎




「世界の為、立ち上がった乙女らよ。私はそなた達の献身に必ず報いると誓おう。さぁ、共に行こう。救世の旅路へ!」


 星の光のような白銀髪に、良く通る声。天高く剣を掲げた皇子に鬨の声が上がった。

 わたしの隣には四人の女の子がいて、意思の強そうな眼差しが目下の民衆を見下ろしている。


(うそでしょ……)


 わたしだけが唖然と周囲をうかがっていた。この宮殿を、街を、彼女達をわたしは知っていて、知らない。知っているのはただ一つだけ。それはこの場の全ての中心にいる彼、ただ一人。

 ーーウラヌス。

 かつてこの世界へわたしを召喚した国の皇子様。

 死に別れたはずの人が変わらぬ姿で、そこに在った。

 

(ここ、違う。わたしのいた所じゃない! いや、いたけど……違う!)


 <わたし>の知るエステレア宮殿の面影を残しながらも、見慣れぬ姿は時の流れを感じさせられる。

 恋しいウラヌスと、それからもう一つわたしを戸惑わせるものがあった。それは先程から頭に流れ込んでくる怒涛の情報ーー。


【パラレルワールド:ギャルゲー界に転生しました】


 もう<はい?>って感じだけど、もうちょっと聞いてみようか……。


【かつて、世界を二分する大戦があった。

 地上の全ての生命を蝕む争いは、あまりに多くの命を奪い、負の想いは混沌となって星に影響を及ぼし、災厄が発生した。

 苦難の時代。そこへ一人の勇者が現れ、星の聖なる力をかき集めた大剣によって、星を封印する。遥かな未来に浄化の希望を託してーー。

 そして災厄は収束、人々は平和を喜んだ。

 しかしその一方で、地上には封印しきれなかった災厄の残り滓が蔓延るようになる。もはや浄化が叶わぬこれを、人々は<星骸>と呼んだ。

 時折星骸に脅かされながらも平穏は続く。けれど星の意識を封印された世界は、ゆるやかな衰退の一途を辿る運命だった。

 そして来たる時。星の声を聴いた勇者の末裔は旅に出る。人々から失われつつある、星の力を最も煌めかせる乙女と共に封印を解くために。さすれば地上に残る星骸も浄化されるとの星の言葉によって、五人の乙女を連れて。

 しかしこれは、永き時を混沌と共に封印され、混沌と一体化した星による罠であった……】


 ギャルゲーの世界観ってこんなで良いのかな?


 よくは知らないけど……重くないのかな?

 このストーリーと思われる物、転生…というからには<前世のわたし>は冒頭の<大戦があった>部分だけ分かる。ウラヌスと一緒に救世の旅に出て、でも星から授かった記憶を上手く活用出来ずに大戦勃発を止められなかった。

 そして戦乱に巻き込まれてわたしはーー死んでしまったんだ。


(あんな顔をさせたくなくて、旅をしていたのに……)


 ウラヌスの治癒術空しく、わたしの旅は終わった。

 で、次に目を覚ましたらこれだよ。しかもこのストーリーネタバレしてないかな?

 だけどこの情報と現状は一致している。この世界が辿った歴史はその通りだし、旅に出る勇者の末裔はウラヌスだし、五人の乙女の一人がわたしだ。


(さっきまで前世のことなんて忘れてたし、こんな訳の分からない情報が頭に流れてくることもなかった。なんで急に……)

 

【第一章〜旅立ち〜】


(第一章!? ってことは……さっきまでのは序章!? え、ど、どこから……ん? まさか)


 わたしの記憶がよみがえったのはウラヌスが宣誓したその時。あれがーーゲームの冒頭だった?

 第一章といっても状況は先程の続きだ。ウラヌスをもう一度見ると、更なる異変が起きる。


【ウラヌス(勇者)

 主人公。ハーレム主人公の素質あり。

 伝説の勇者の末裔にして皇子。

 前世の大戦時に異界の星詠みを失い、アザーを正しく対処出来ず星を封印するしかなかった。この後悔から後世で異界の星詠みを召喚することがないよう、また星詠みの安寧を願い各国と共に伝承を抹消する】


(と、登場人物紹介……? ハーレムの素質……?)


 シリアスな内容もあるのに、ハーレムの語感が強過ぎてそっちに意識がいく。

 当のウラヌスは出立のために城内へと戻っていく。それについて行く乙女達に視線を向けると、また情報が入ってきた。


【カプリシィス 貴族の姫(星術士)

 気位が高い。星術を使えるため、ちやほやされて育った。ウラヌスとは兄弟弟子。やや傲慢なところをウラヌスに嗜められる】


【サラー 孤高の戦士(拳闘士)

 男勝りだが内心女性らしさに憧れがあり、異性への免疫がない。赤面しやすい。

 ウラヌスを守ってやると豪語する】


【タヴァレス 白竜使い(竜騎士)

 男性恐怖症。大人しくて怖がり。可憐。

 人自体があまり得意でなく、竜が友達。ウラヌスに依存しがちな傾向がある】


【ナナン 村のアイドル(弓士)

 元気でちょっとお馬鹿。甘え上手。無謀な行動が逆にウラヌスの気を引く。村に親衛隊があり、奥の手に親衛隊アタックがある】


(なにこれ……)


 なんかお腹いっぱいになる気がする。

 止まらない情報の波にわたし一人だけ立ち尽くしていると、カプリシィス様が振り返って鼻で嗤った。


「あら、ぼーっとして、どうなさったの。特別な方は行動も自由でよろしいのかしら」


 敵意がすごい。

 でも彼女の言うように、実はわたしだけ選抜方法が異なっていた。

 お供となるヒロインのみなさんは、旅半ばで死んでは困ると御前試合で選抜された実力者達。それに対しわたしは、どの属性の星術でもない不可思議な力を使う、何かよく分からない存在だけど……とりあえず使えるからと選抜されたのだ。

 有り体にいえばコネ枠だった。

 この何かよく分からない力、今にして思えば異界の星詠みの力だと思う。でもこの時代に星詠みの存在は伝わっていない。まさかその理由がかつてのウラヌスにあったなんて……。


【星術

 大気に漂う自然のエネルギーを集結させたもの。失われゆく力。使える者は極わずか。

 かつては誰もが当たり前に使えた。星との繋がりの強さで扱いの才が決まる】


【星詠み

 星の眠りによって遥か昔に失われた存在。大戦の折、星詠みが悪用された過去から各国が意図的に情報を消した。

 かつては星の記憶を人々に詠い伝えていた】


【異界の星詠み

 星詠みの上位互換。故国エステレアによってのみ異界より召喚される。星詠みと共にその存在は抹消され、召喚技術も失われた】


(説明してくれるんだ……)

「貴方、聞いていますの?」


 しまった、頭の中に気を取られていた。

 ただでさえ意思の強そうな眉が吊り上がる。他の乙女達も不思議そうにこちらを見ていて、慌てて答えようとした時、ついにウラヌスも気付いて振り向いた。


「……どうした? エイコ。不安なのか」


 わたしに語り掛ける声は柔らかで、優しい。だけど前世の彼がくれた声とは違った。

 今世のわたし達はまだ出逢ったばかり。お互いのことを何も知らない……他人だった。そして彼の声色は前世の記憶なんてないと語っている。

 これからウラヌスとわたし達は親交して、愛を一番深めた者が共に封印を解く、という使命のもと旅立つのだ。これは星がそう言ったから。


【星

 信仰の対象。

 封印中、永い時をかけて混沌と完全一体化。しかし<浄化が済んだため、己を解放せよ>と勇者を騙し呼びつける。

 星の力(誰もが持つもの)=愛によって強まるとあながち嘘でもないことを適当に吐き、もっとも煌めく乙女と勇者による解放を求める。さすれば地上の星骸も浄化が叶うと。

 真の狙いは、勇者と乙女が真実を知った際の絶望を快気祝いとすること】


 快気祝いしないで……。

 シリアスなのシリアスじゃないの。どっちなの。


「ねぇ大丈夫? この子」

「そんなに無防備で、この旅を成せるのか」

「ウラヌス様……早くここから離れたいです……」

「まあ待ってくれ。彼女は戦いとは無縁だったんだ。戸惑いはあるだろう」


 カプリシィス様と同じく訝しみ始めたナナン、サラー、タヴァレス様をウラヌスが宥めてくれる。そして彼はわたしの前へ進み出て、手を差し出した。


「さぁおいで。大切な乙女。大丈夫だ、君達は必ず守ってみせる」


 いつかの日の光景が被る。遥か昔、彼とわたしが初めて出逢った時。知らない世界で不安に怯えていたわたしへ差し伸べられた優しい手が……時を越えてここに在る。

 多分、他の誰かと結ばれて子を生したウラヌスの末裔にあたる今の彼は、以前より瞳の色が深い。

 かつて繁栄を極めた星聖エステレア皇国はもうない。長い年月の中でたくさんあった国々は滅び、統合され、パシェンシア皇国として一つとなった。

 だから彼は彼だけど、もう……あのウラヌスじゃない。


(それでも良い。また逢えて幸せ。なんだかよく分かんない世界に生まれちゃったみたいだけど……今度こそ、あなたと最後まで一緒にいたい。あなたのーーお嫁さんになりたい)


 もう一度、わたしは手を取った。あの時のように。ライバル? がいるようだけど、今生こそ世界を救い、添い遂げる。見果てぬ夢で終わった生を叶えるのだと決意して。


「ありがとうございます……ウラヌス様」


【バッドエンド

みんな星に喰われる


ノーマルエンド

主人公と結ばれた、あるいは一番好感度の高いヒロインが星に喰われる


ハッピーエンド

主人公と結ばれたヒロインと主人公が星に喰われる】


 クソゲーって言うんでしょ? こういうの。


(ハッピーエンドの二人一緒だからハッピーでしょ? って感じが腹立つなぁ……)


 希望も何もなさげな、不穏しかない未来が示唆されてしまったわけだけど、お構いなしに旅は始まる。


(この情報は何?)


【情報の開示。星の愛し子への特典】


 なんと! わたしの疑問に答えてくれたみたい。

 星の愛し子……わたしの前世が異界の星詠みだったからかな。

 訊けば答えてくれるのだろうか。ならばと、わたしは一番気になっていた最大の疑問を投げ掛ける。


(ギャルゲー界に転生ってどういうこと?)


【ギャルゲー界:パラレルワールド。数多の可能性の一つ】


 分かんないなぁ……。




 旅が始まってしばらく。何章あるのか知らないけど、封印の地は遥か遠く、物語の確信どころか重要そうな出来事が何も起きていないから、多分まだ序盤も序盤だろう。


「流石ウラヌス様……惚れ惚れする星術ですわ。美しい紫電、まるで初めてお逢いした時にこの胸を駆け抜けた衝撃のよう!」

「だ…誰が守れと言った! 私がお前を守るのだ! ……だ、だが……感謝してやっても良い」

「庇ってくださってありがとうございます、ウラヌス様……。私、貴方がいないと……」

「無茶してごめんなさい……怪我、しちゃったよね? えーん! 嫌いにならないで〜!」


 でも好感度はうなぎのぼりだった。

 これもう限界まで達してないかな? と感じる程に乙女達はウラヌスにべったり。さすが、ハーレムの素質は伊達じゃなかった。ひょっとしてわたしだけ好感度が低い状態なんじゃ、と不安になるくらいだ。

 でも残念ながらウラヌスと乙女達の詳細な好意の程は不明。謎の情報源もそれについては教えてくれなかったから、傍目で判断するしかない。

 華麗に星骸を倒し、称賛される彼はみっちり包囲されている。


(わたしの婚約者なのに……)


 それは、前世の話だ。

 今世のウラヌスとわたしは赤の他人。だから頑張らないといけないのに……圧倒されて、あの娘達みたいに積極的にいけない自分がもどかしかった。


(怪我……痛い)


 星骸に腕をやられた。治癒を乞う機会をぽつんとうかがって、みじめだなぁ。

 盛り上がるみんなをぼんやり眺めていると、ウラヌスの気がどこかそぞろに感じた。ふいに彼がこっちを見て。


(……あれ?)


 ーーなんだか……焦ってる?

 それから彼は乙女達を掻き分け、なんとわたしのもとへ来てくれた。


「怪我をしただろう。見せてみろ」

「え……」

「治すのが遅れてすまない。……痛かったな」


 温かい手に壊れ物のように腕を取られて、美しい光に包まれる。あっという間に傷が塞がったと思うと、何故かまだ彼が治癒術を続けた。


「ウ、ウラヌス様? もう治ってますよ……?」

「……」


 少しの沈黙。それからようやく満足したのか彼は微笑んだ。


「もうどこも、痛くないかい」


 あの頃より少し色の濃くなった瞳が、わたしだけを映している。

 ……治してくれたばかりの腕を、そっと彼の腕に絡めた。


「ありがとう、ウラヌス様……」


 見下ろしてくれるのが嬉しくてわたしは馬鹿みたいに正直に懐いてしまう。さっきまで二の足を踏んでたくせに。でも甘えたくて、我慢出来ない。

 そんなわたしの頬を愛おしむように、彼の親指が撫でた。


「「ま、魔性……」」


 少し離れた場所で女の子がどうしているかなんて…思考から飛んでいっちゃった。ただウラヌスと見つめ合う幸福に酔いしれる。


(ウラヌスと幸せになれるエンディング、ないのかなぁ……)


【シークレットエンド

 詳細不明】


 この謎の現象は肝心な情報を教えてくれないんだから。あるのかすら分からない幸せへの道は、秘密のベールに包まれている。

 結局のところ、どうやらわたしの運命は、自分で掴まなきゃいけないらしい。

 見上げる程の大剣がぶっ刺さるゴールはまだまだ。

 四人のライバルとたった一人の皇子様。わたしの戦いはまだ、始まったばかりーー。

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