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隻眼皇帝の一目惚れ  作者: ひよこ
6/11

06 ダンスの申し込み

アランフォードとアーネストが会場に入ると貴族達が順番に挨拶をしてきた。

「帝国の若き太陽アランフォード皇太子殿下にご挨拶申し上げます。」

その挨拶に頷きで返す。すると挨拶してきた貴族はすぐにアーネストに向き合い

「帝国の若き太陽アーネス皇子殿下にご挨拶申しあげます。本日のそのお召し物アーネスト殿下にとてもよくお似合いですね。」

「ありがとうございます!」

表面上、二人に挨拶してきているようであるが、実際はアランフォードではなく、アーネストに認知してもらおうと挨拶してきているのがわかる。一応、形式上の挨拶はして無礼にはならないようにしていることが丸わかりである。その後も次々と表面上の挨拶だけをしてくる貴族達。遠巻きにこちらの様子を伺う御令嬢たち。さっきまでの前向きな気持ちが一気になくなっていくのがよくわかる。

(本当にくだらない。)

その後も挨拶をしてくる貴族達は後を絶たない。婚約者にと自分の娘を紹介してくる貴族もいたが、その娘は顔面蒼白であり、自分のことを恐れていることが一目瞭然である。

「伯爵。御令嬢の顔色が良くありません。休ませた方が良いのではないか?」

そう伝えると、伯爵は冷や汗を流しながらそそくさとその場を後にして行った。

一通り挨拶を終えると会場の曲調が変わった。そろそろダンスが始まるようだ。といっても、自分にダンスを申し込む令嬢はいないだろう。皇族が最初のダンスをしなければいけないが、アーネストがすでにダンス相手を見つけているので、自分は下がって見ていることにしよう。そう思って下がろうとした時

「帝国の若き太陽アランフォード皇太子殿下にご挨拶申し上げます。」

声がした方を見ると、一人の令嬢がいた。挨拶に頷きで返すと、そっと手を差し出してきた。

「殿下?手をとっていただけますか?」

手を差し出す。これはダンスの申し込みをする際のマナーである。普通は男性から女性へダンスの申し込みをするのだが、女性がダンスを誘うときは手を差し出し、男性側がその上でダンスを申し込むのことがマナーとされている。大勢の人たちがいる中で女性からダンスを誘うのは珍しい。ここでダンスを断ったら、間違いなくこの御令嬢は恥をかいてしまうだろう。アランフォードは断ることも考えたが、誘ってくれた令嬢のため、レースが施している手袋をした御令嬢の手を取り

「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

『エリザベス・キャンベルと申しますわ。殿下」

「キャンベル侯爵令嬢。最初のダンスを私と踊ってくれますか?」

「もちろんですわ。」

アランフォードはエリザベスの手を取り、会場の真ん中に移動した。アランフォードが真ん中に到着するとゆっくりとしたメロディーが流れだし、皆一斉に踊り出した。右に左にとゆっくりと踊っているが、エリザベスの動きがぎこちないのがわかる。

「キャンベル侯爵令嬢?大丈夫ですか?」

その声にハッとしたような顔でエリザベスはアランフォードの顔を見上げた。

「大丈夫ですわ。皆様が見てくるのでとても緊張していますの。」

アランフォードが周りを横目で見渡すと、確かにダンスをしていない人たちはこちらを見ている。ここまでの視線に晒されたら緊張するのも頷ける。そして、終始ぎこちなくダンスが終わった。

「キャンベル侯爵令嬢。今回は私とダンスを踊ってくださり、ありがとおうございます。」

「こちらこそ、ありがとうございました。殿下。」

お互いに一礼し、離れようとしたら

「殿下?今度ゆっくりお茶でもいかがですか?」

と、エリザベスに声をかけらた。驚きのあまり無言を貫いていると

「もし、お嫌でなければ後日招待状をお送りしてもよろしいですか?」

続けてエリザベスが言ってきたので無言で頷いた。その様子を見ていたエリザベスは花のように綺麗に笑い、再度一礼して離れていった。

アランフォードは表情には出さないままとても驚いていた。まさか自分にダンスを申し込んでくるだけでなく、お茶の誘いをしてくる令嬢がいたとは。自分でいうのもなんだが、若い女性達は自分のことを恐れていると思っていた。ふと、先ほどアーネストと話した内容が頭に浮かんできた。

(自分のことを恐れない女性・・・。考えてもいいかもしれないな)

そのあとは、誰も誘わず誘われずシリルやアーネストと談笑をして過ごした。


アリシアは退屈だった。皇帝たちが入場し、挨拶が終わるのを待って外に出てきたのである。ちなみにエドガーはその辺の御令嬢達にパスしてきた。あの腹黒に双子の兄も、公の場で話しかけてきた御令嬢達を粗末に扱うことができず、今頃ひっきりなしにダンスを申し込まれているだろう。

(こんな退屈な舞踏会にしっかり参加するなんでごめんだわ。皇帝陛下にはご挨拶したのだし、庭園の探検をしたっていいじゃない?お兄様と一緒に帰ればお母様も舞踏会に参加したと思うでしょうし。私に逃げられたなんてお兄様がお母様に言ったらお兄様まで怒られてしまうのはわかるもの。)

なんだかスッキリした気持ちになった。令嬢達からの蔑みの視線も、男性からの様子を伺う視線も全部なくなった今とても清々しい気持ちに包まれていた。

(それにこの皇室の庭園は確か迷路になっているのよね!滅多に入れない場所だしやらない選択肢はないわ!)

アリシアはルンルンとした足取りで迷路に向かった。

皇室の迷路はいろとりどりの花達で覆われており、とても綺麗であることで有名だった。あいにくにも今は薄暗いため花を愛でることはできない。アリシアは迷路の入り口に立ち、好奇心そのままに迷路に進んで行った。

迷路を進んでいくと開けた場所に出た。真ん中には噴水が流れ、ベンチが置かれている。会場の方からは音楽が流れてきている。まだ時間はあるはずだ。少しここで休憩しようか。履き慣れないヒールのせいで足が痛くなってきたところだ。アリシアはヒールを脱ぎベンチに座った。


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