10 魔法
「お嬢様!おはようございます!」
アリシアはいつものようにナタリーの声で目を覚ました。
「今日はあいにくのお天気ですが、フラッドレイ先生がお越しになる日です。身支度しましょう!」
まだ半分夢の中だったアリシアはフラッドレイ先生と聞いて完全に目を覚ました。アリシアは剣術の次に魔法が好きだった。母であるシルヴィアは人族とエルフ族のハーフであり、魔法が使える。アリシアと双子の兄エドガーもエルフの血が入っている。魔法を使える可能性があるのだ。純粋なエルフ族ではないので使えないかもしれないと言われているが、いつか使えるようになったらいいなと思っている。
アリシアが応接室に行くと、エドガーとフラッドレイ先生が待っていた。
「遅くなり、申し訳ありません。」
「いえ、私も少し早く到着してしまったのです。アリシア様は時間通りですよ。」
にこやかにそう言ったフラッドレイ先生は部屋の時計を指した。確かに時間10分前ある。
「ありがとうございます。」
アリシアはそう言って席についた。
「さて、本日の授業を始めましょう!」
フラッドレイ先生はそう言って授業を始めた。フラッドレイ先生はエルフ族だ。灰色が買った髪は肩まであり、とても綺麗な顔をしている美丈夫だ。母のシルヴィアが幼い頃から家庭教師をしているらしいのだが、そんな年齢には見えない。むしろアリシアの兄と言われても違和感がないほどだ。
「今日はいよいよ魔法の基礎について学習をしましょう。」
今までは人族のこと、エルフ族のこと、魔法の歴史などを学んできた。いよいよ魔法についてだ。これがワクワクせずにはいられない!
「魔法は自然界にたくさん存在する”マナ”を使って発動します。」
「マナ?」
聞き慣れない言葉だ。
「マナとは言わば生き物の生命エネルギーと言いますか、その正体はエルフ族の研究者でもまだ解明できていないのです。」
「そうなのですね。」
「では、マナは今この場所にもあるのですか?」
エドガーが問いかける。
「はい。たくさん存在しています。目には見えませんが、魔法が使えるようになると身体で感じることができるようになります。この場所は、とてもたくさんマナがありますよ。」
アリシアには何も感じないが、魔法が使えるフラッドレイ先生には感じることができるというマナ。
(いいなぁ。私も早く感じられるようになりたいわ)
アリシアはキラキラとした目でフラッドレイを見つめる。
「そのマナに”命令式”を刻むことで魔法を使うことができます。命令式というものは、例えば・・・。」
とういうと徐に先生は紙に何かを書き出した。しばらくするとその紙を前に出し
「”風””吹く””弱”」
そういうと窓が開いていないのにも関わらず、室内に微風が吹いた。
「この紙に書いてあるものが”命令式”です。本当は紙に書かなくても使えるのですが、初めは書いてから使います。実際、エルフ族の子供たちは紙に書いて魔法を使います。」
そう言って先ほど使っていた紙をエドガーに渡す。
「この文字はなんですか?」
「これは古代文字です。命令式は古代文字を使うので、おいおいお二人にはこの文字も勉強してもらいます。」
アリシアも紙を見せてもらったが、なんて書いてあるのか全くわからなかった。
「命令式をただイタズラに長く書いてしまうとマナの消費量が多くなってしまいます。例えば、さっきの魔法を5回使える人が命令式を複雑に長く書いてしまったら2回しか使えないと言うことが起きてしまうのです。」
「それはなぜなんですの?」
「一人一人使えるマナの量が違うからです。マナは自然界にたくさん溢れていますが、生き物にはマナを受け止める器があり、それを超えるマナは使えないのです。この器が一人一人違います。マナを水に例えると、カップを持っている人とバケツを持っている人では水を汲める量は違いますよね?なので人それぞれ違うのです。」
「その器の大きさはどうやったらわかるのですか?」
「魔法を使うしかありません。魔水晶と言うものを使って測ることもできますが、大変貴重なものなので、滅多に使うことができません。なので、魔法を練習して、自分がどれほど使えるのか学習していくのです」
自分の器の大きさはどのくらいなのだろう。エルフの血が流れているとは言っても1/4しか流れていない。小さい魔法1つでも打てたらいいなと思っているとフラッドレイ先生が続けて言った。
「だいたいは髪の色で判断することができます。エルフ族は皆灰色の髪をしています。その灰色が黒に近いほど器、魔力量と言いますね。魔力量が少なく、白に近い銀色になるにつれて魔力が強くなります。とある国も女神は白い髪をしているのはそういうことだと言われています。」
その話を聞いてアリシアとエドガーは顔を合わせた。二人とも父親に似た茶色の髪と周りには思われている。が、本当は違う。アリシアの髪は輝くほどの銀色なのだ。このことを知っているのは家族と一握りの使用人だけ。お母様から決して周りに髪色を見せてはいけないと言われていたのはこういうことだったのか。でも、なぜ言ってはいけないのか・・・。とアリシアとエドガーは頭を捻った。
「何か疑問がありますか?」
何やら考えている様子の二人にフラッドレイ先生は問いかける。
(お母様が言うなと言っているのだから、先生にも内緒の方がいいのでしょうね)
アリシアがエドガーに目配せをするとエドガーもこちらを見ており頷いた。エドガーも同じ考えだったようだ。
「なんでもありません、先生。自分は茶色の髪なので魔力量が少しでもあればいいなと思ったのです。」
「そうですね。基本的に魔法はエルフ族しか使えません。それは人族、獣人族、ドワーフ族は魔力量が極端に少ないため基礎魔法を使う魔力量に満たないからです。ですが、全てが髪色に出るわけではありません。あくまで目安の一つと考える方が良いかと思います。エルフの血を継いでいて髪色が黒に近い人でも魔力量があり、魔法を使える人もいますからね。」
「それなら僕も使える可能性がありますね。嬉しいです。」
「そうですね。今日の授業はここまでにしましょう。」
フラッドレイ先生は次の授業までの宿題を二人に伝え、授業が終わった。
「アリシア、さっきの先生の話だけどさ。」
フラッドレイ先生と別れ、エドガーと廊下を歩いていた時に尋ねられた。
「えぇ。お母様に聞くのがいいと思いますわ。」
余談であるが、アリシアとエドガーは双子だ。以心伝心とまでいかなくても、相手が何を考えているかがわかる。今のは”アリシアの髪を隠さなければいけない理由が単に魔力量だけではないと思うからお母様に聞きに行こうか”と言うことである。
「そうだね。今度時間を合わせて聞きに行こうか。」
「そうですわね。」
途中でエドガーとは別れて自室へ向かった。




