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隻眼皇帝の一目惚れ  作者: ひよこ
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01 退屈なお茶会

ユラスト大陸には4つの国があった。北のエドインナ教王国、西のエトニー獣王国、東のロナ王国、そして南のアストロフ帝国。アストロフ帝国は大陸1国土の大きい国であった。アストロフ帝国の皇帝は血の皇帝と呼ばれ、その赤い眼は貴族だけでなく、国民からも恐れられていた。しかし、その優れた政治手腕によって人々は安定した生活を送っていた。

その帝国に皇帝にそっくりの黒髪に赤い眼の皇子が誕生した。皇子は周囲の期待通りにすくすくと育った。しかし、皇子が5歳になった年の冬、皇子は病気を患い、高熱が続き、何日も生死を彷徨った。皇子が目覚めた時、世界は半分となっていた。


「ねえ、ご存知?今度開かれる皇室の舞踏会。殿下の婚約者探しも兼ねているようですわよ」

隣に座っている令嬢がそう話題を出してきた。

(全く興味がないわ・・)

顔には笑顔を浮かべながらアリシアはそう心の中で思っていた。アリシアはクランシー公爵家の長女であり、婚約者候補と影で言われている。が、アリシアは全く興味がないのである。皇太子殿下といえば公の場には全く顔を出さないことで有名である。噂では、殿下の赤い眼を見たら死ぬだの、気に入らない従者は一家もろとも処刑するだの、愛人が何人もおり好色であるだの、よくない話を聞く。そんな殿下の婚約者になろうとするものは、物好きか権力者になりたい者であろう。どうしてわざわざ危険を冒してまで婚約者にならなければいけないのだろうか。

「あら、婚約者をお探しになるなんて。もう決まっているものだと思っていましたわ。」

パンフリー伯爵令嬢がそう言うと、テーブルにいた令嬢たちが一斉にアリシアを見た。

「恐れ多くも殿下の婚約者になろうだなんて、私たちは思っておりませんのよ?最もふさわしい方がいらっしゃるのに・・・。」

「殿下はお強い方ですもの、婚約者になる方もお強くなければね」

令嬢たちは続けてくすくすと笑いながら話をする。

(あぁ、またか。)

アリシアは表情を崩さないまま、そう思った。

アリシアは教養の一つとして武術を学んでいた。その実力は何年か前の武道大会で同年代の貴族子息を倒し、優勝するほどであった。クランシー公爵家の人たちはその優勝をとても喜んだが、同年代の令嬢達からは野蛮であるという印象を付けられてしまったのである。そのため、お茶会や舞踏会などで会うたびこのように蔑みの対象となっていた。よくない噂が多い殿下に嫁ぎたいと思う令嬢はいない。

(選ばれた後にミスをしてしまったらそれこそ命がない。だからこそ野蛮な私に押し付けようとしているのね)

まったく。ため息しか出ない。そもそもアリシア自身も婚約者云々には全く興味がないのだ。そもそも殿下に会ったことすらない。

「あら?殿下はお強い方ですから、そばで優しく支えてくれる人こそ婚約者にふさわしいと思いません?」

口元は笑みを浮かべたまま、目線は鋭くアリシアを見つめているエリザベス・アドラーがそう言った。

「そうね・・・。例えば私とか?」

エリザベスの発言に周囲がざわつく。この発言にはアリシアも驚きを隠さなかった。なぜならエリザベスは婚約者がもうすでにいるからだ。確か、マーマン侯爵家の次男だったはずである。

「それに、武術に優れた御令嬢なんて・・・」

そういうと手に持っていた扇で口元を隠し、くすくすと笑い始めた。周りの令嬢達も次第にアリシアを見ながらくすくすと笑い始めた。

(はぁ。全く。こんなことしてなにが楽しいのかしら。退屈だわ。)

アリシアがなにも反応しないことで興味が薄れたのか、次第に話の内容はドレスの話に変わっていった。

(早く終わらないかしら。今日はとても天気がいいのに、こんなことしているなんてもったいないわ。)

そう思いながら空を見上げる。こんなつまらない会に参加するんじゃなかった。「社交界に参加することで世渡りの術を学びなさい。」と言うのはアリシアの母の言葉である。今日の参加もいつの間にか母が参加すると返事を出してしまっていたのでしぶしぶの参加なのだ。

(それにしても舞踏会か。憂鬱なことが増えてしまったわ。仮病でも使って欠席しようかしら。)

と思いながら、あの母が許してはくれないだろうなという考えに至り、乾いた笑みが出た。

(そういえば、あの時の舞踏会は楽しかったわね。)

周りの令嬢をぼんやり見ながら、幼い頃の思い出が蘇ってきた。父と一緒に参加した舞踏会。あまりにも退屈で庭園に抜け出した。そこで会った子と友達になり冒険ごっこをして遊んだのだ。まぁ、一緒に来ていた母にそのことがバレ、しっかりお説教をされたのだが。

(皇室の舞踏会に来ていたのだから、貴族の子だろうけど。あの子は誰だったのかしら。)

もしかしたらまた舞踏会で会えるかもしれない。そう思うと憂鬱だった舞踏会が少し。ほんのちょびっとだけ楽しみになってくる気もする。



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