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07 見渡す限りのレンゲ畑

秋にまいたレンゲの種が、冬の間に芽を出し、春になると見渡す限りの農地に、濃いピンク色の花を満開に咲かせた。


例年に無い、レンゲの広がりと満開具合に農家も驚きを隠せなかった。


子ども達はピンクの絨毯の上を転がり、毎日、服や手をピンク色に染め、ミツバチも負けじとレンゲの蜜や花粉を集めて飛び回った。


伯爵領で養蜂業が一大産業になり、広大な花畑は観光客を呼び込んだのは、少し先の話しだが、ひとまず先に、レンゲの根に住む根粒菌が目いっぱい働いた結果、畑の土が肥沃になり、領全体で作物の収穫量が大幅にアップした。



毎日、朝から晩まで忙しいオーラムをようやく捕まえたシャーレは、二人きりでレンゲ畑に出掛けた。

天気も良く、薄い雲が風にゆっくりと流されていく。

シャーレがレンゲ畑に腰を下ろして花冠を作る隣りに寝そべり、空を見上げていた。


こんなに穏やかな気持ちで空を見上げたのは、子どもの頃以来だな。と、オーラムが目を閉じる。

頬に触れる優しく流れる風、レンゲの揺れる音、摘まれた茎から匂い立つ草の臭い。


シャーレが来てから、伯爵領は幸福が続いている。

貴重なキノコや橋の事も有るが、何より、いつも隣で寄り添ってくれる妻の温もりと笑顔に幸せな気持ちで胸が満たされる。




〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉



オーラム様はレンゲ畑に横になると、いつの間にか眠ってしまわれた。

久しぶりのお出かけで、もっとお話ししたかったけれど、お疲れでしょうし仕方がありませんね。


ほんの少しだけ淋しくて拗ねた気持ちになった。

「オーラム様、お仕事も大事ですが、シャーレはさみしゅうございますよ。」


オーラム様の広い胸に頭を乗せて寄り添うと小さく小さく呟いた。




〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉



オーラムから見えるのは、彼女のいとけないつむじ。

愛しさがこみ上げて、寝そべったまま彼女を抱きしめた。


ビクッと肩を揺らし、

「起きてらしたのですね!もう!」

先程の言葉は独り言だったらしく、恥ずかしいとばかりに額をぐりぐりと胸に押しつけられた。


「シャーレ。私の所に嫁いできてくれて、本当に感謝しています。心の底から、愛しています。

淋しい思いをさせてすみません。もう少ししたら、落ち着きますからね。」

「私も!私も、オーラム様を愛してます!大好きです!」


オーラムのシャツの胸元をギュッと掴みすぎて小さなボタンが一つ、プチンと音と共にレンゲ畑に飛んでいってしまったのはご愛敬ということで。

※根粒菌:マメ科の植物の根に住み、空気中の窒素を栄養に変換する(窒素固定)菌の事で、畑の土を肥沃する。

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