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06 侯爵家のメイド

メイド長から指示を受けた今日の仕事は、本当に気が乗りません。

お仕えする侯爵家の坊ちゃん(次男)が、婚約者のシャーレ様に婚約解消の話をされるそうです。


侯爵様とシャーレ様のお父様は、学生時代からのお付き合いで、お二人のお子様同士が婚約を結んだのは、10才の頃でした。

お二人共に見目麗しく、まるで対のお人形さんのようでした。


それが数年前に、坊ちゃんの好みが独立路線を走り出して暴走、いよいよシャーレ様と軋轢を生みました。


……原因は『糖分』でした。



坊ちゃんは、極度の甘党です。

紅茶でもミルクでも、お砂糖を溶かしきれないほど入れます。

そしてそれを「絶対に美味しいから!」と言って、周りに薦めます。

侯爵家の令息に薦められて無下に断る事は出来ません。

もはやハラスメントの領域です。

悪意は有りません。

心の底からのお薦めなのです。


紅茶もミルクもストレート派なシャーレ様も、毎回、必死に抵抗されました。




侯爵家の皆様がご旅行で訪れた地で、お客様を歓迎する際に振る舞われた劇的に甘いお茶。

坊ちゃんは大層お気に召して、以降はご想像にお任せします。

そして、坊ちゃんは太りにくい体質でした。


好みは人それぞれとは言いますが、好きな物が全く合わないと言うのは、なかなかにストレスを抱えるようで、お二人は次第にギスギスしていきました。



そして、とうとう決定的な事が起きました。


坊ちゃん行きつけのスイーツ専門店で、さる子爵家のご令嬢と出会い、甘い物に目がないお二人は意気投合しました。


そして、ご友人としてスイーツ巡りを何度かご一緒にしている内に、躓いたご令嬢の二の腕をとっさに掴んで転倒を回避したそうです。

初めて触れた、タフタフとした豊かで滑らかで少しひんやりとした二の腕の触感に坊ちゃんは感銘を受け、見つめ合ったお二人は恋に落ちたのです。





婚約解消を言い渡されたシャーレ様は、何処か冷めた目で絶句して居られました。


坊ちゃんは、失礼ながら赤ちゃんのようにぷくぷくしたご令嬢の指を満足げに握ったり、擦ったり。

侯爵家の敷地内とは言え、人目もはばからずに二の腕を触ったり、焼き菓子を手ずから食べさせたり、丸パンのような頬を突いたり、、、


何というか冷めた気持ちで『微笑ましいですね~はいはい。』と見守って居ると、シャーレ様と目が合いました。

申し訳無い思いでいっぱいでした。

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