95.杏奈と仔猫(その1)
今回から大魔王様以外は『誰視点』かを記載することにしました。
過去の話に関しても順次追記していく予定です。
2022/11/23 『誰視点』追記終わりました。
杏奈視点
(…杏奈、最近つまんない。)
杏奈は今日一人でぶらぶらしている。だっていつも一緒に遊んでたみんなと最近遊べないことが多いんだもん。
結ちゃんはケイちゃんのお世話だし、ゆっこちゃんは塾があるし、『あの』陽菜まで勉強やり始めちゃうなんて。
結ちゃんはしょうがない。だってあんなにかわいいケイちゃんのお世話だったら杏奈だってがんばっちゃうと思うもん。
ゆっこちゃんと陽菜はあんなに真面目に勉強しなくたっていいと思うんだけどなぁ。ゆっこちゃんは元々頭いいし、最近は陽菜だっていっつもテスト100点取るようになっちゃったし…
もしかしたら2人は来年私立受験でもするのかな?
そしたら中学からは4人でいられなくなっちゃうじゃん…
杏奈がみんなと仲良くなったのは結ちゃんのおかげだ。
2年生のときに転校してきた杏奈に最初に話しかけてくれたのが結ちゃん。
小学校に通い始めてたった1年で転校しなくちゃならなかったのはとても嫌だった。
前の学校にも友達はいたし、せっかく仲良くなったのにこんな遠くに引っ越さなきゃならなかったのは嫌だって、親に文句を言ったのを覚えてる。
だから最初杏奈が転校してきたときはちょっと拗ねてた気がする。
そんな杏奈に結ちゃんが声をかけてくれて、ゆっこちゃんと陽菜を紹介してくれた。
今では4人で一緒にいることが当たり前になってる。
(あーあ、前みたいにずっとみんなと一緒に遊んでたいなぁ。)
みんなが悪いんじゃないってことぐらい杏奈にもわかってる。
でもみんながやりたいこと見つけてがんばってるのを見てると、なんか杏奈だけ置いてけぼりになったみたいでつまんない。
(杏奈もなんかやりたいこと見つけないとなのかなぁ?)
でもそんな簡単にやりたいこと見つけられたら苦労しない。
杏奈が好きなことって、みんなと一緒に遊ぶこと、それとかわいいもの集めることかな?
かわいいもの集めの延長でちょっとオシャレとかも最近楽しくなってきたけど、可愛い服だってお小遣いだけじゃなかなか買えないし、パパとママに買ってもらうのだって限度がある。
(なんか楽しいことないかなぁ…)
杏奈はぶらぶらと河原近くを歩いてた。
「そっちいったぞー」
「え、どこ?」
「ねえ、かわいそうだからやめようよ…」
河原の方でなんか聞いたことあるような声が聞こえた。
(あれって悠人?)
悠人とは去年同じクラスだったけど、たまに話すぐらいでそんなに仲が良かったわけじゃない。他の2人はよくわからない。もしかしたら別のクラスの悠人の友達なのかな?
(何か追っかけてるのかなぁ?)
なんとなく悠人が困ってる感じに見えたから、気になった杏奈は悠人の近くに行ってみた。
近づいてみると、悠人は困ったように2人を見てるし、2人は草をかき分けるように何かを探してる。
「何やってるの?」
杏奈は悠人に聞いてみた。
「あ、杏奈ちゃん。えっと、さっき白い仔猫見つけたんだけど、みんなが追いかけちゃって…僕はかわいそうだからやめようって言ってるんだけど。」
「はあっ!あんた達仔猫追い回してるの!?」
男子ってバカじゃないのっ!!あんなふうに仔猫追い回したら怖がるに決まってるじゃん!!
「ちょっと!あんた達バカじゃないの!!仔猫がかわいそうでしょ!!」
杏奈は追い回してる2人にどなる。
「なんだよ、お前誰だよ。ちょっと猫と遊んでるだけじゃん。」
「何が遊んでるよっ!!そんな乱暴に追い回したら怯えちゃうに決まってるでしょ!!」
「僕もかわいそうだと思うからやめようよ…」
悠人が困ってたのはこのバカ達を止めようとしてたからなんだ。
「…わかったよ、うるせーな。」
男子達はふてくされたように行ってしまう。それを慌てて追いかける悠人。
(ホント男子ってバカで子供!!)
でも追いかけ回された仔猫大丈夫かな?怪我とかしてないかな?
杏奈は心配になって周りを確認する。
(あ、でも怖がって出てこないかなぁ…)
あれだけ追い回されてたんだから人間を怖がってるかもしれない…
(ちょっとだけ見たら帰ろ。)
心配だからちょっとだけ、杏奈がいたら怖がっちゃうかもしれないし。
男子がいた草むらの辺りをちょっとだけ確認するつもりでいたら、
「みゃぁ…」
白い毛がちょっと汚れた仔猫が出てきて私を見てる。
(かっ、かわいいっ!!)
その子はちょっと汚れちゃってるけど全身真っ白な毛で、クリクリした真っ黒な目で私を見てる。
「大丈夫?怖くないよ?」
杏奈はしゃがみ込んで仔猫のことを見る。
(あっ、猫の目を見るのはダメなんだっけ?)
最近ケイちゃんと遊ぶことが多いから、ゆっこちゃんに猫は目をじっと見ると喧嘩売ってると思われちゃうことがある、って教わってた。
(でもかわいいっ!!あのクリクリってした目に吸い込まれちゃいそう。)
仔猫はちょっとヨロヨロした感じで杏奈に近づいてきてくれる。もしかしてさっき追い回されて疲れちゃってるのかな?
じっと仔猫が近づいてくれるのを見てると、急に『ぱたっ』って地面に伏せちゃったと思ったら動かなくなっちゃった。
(…えっ!?)
杏奈は慌てて仔猫にかけよった。
子供は無邪気で残酷です。
その子が悪いわけではないですが、ついやってしまうこともあります。
ですから、そのような場面を見かけたら大人が優しく教えてあげたいですね。
昨今の状況からは難しいとは思いますが、特に生き物が相手の場合は躊躇せずに飛び込める人間になりたいと私も思います。





