92.開かずの間秘密(その3)
※注意
今回のケイは小説の都合上、わざとかわいそうにしています。
実際にこのようなことが起きないように皆さんは飼い猫のことをしっかり見ていてあげてください。
誰視点かを追記しました(2022/11/23)
(見つけてから半年…やっとこの部屋の秘密を解き明かすときが来たのだっ!)
『ガチャッ』
外側から鍵のかかる音が聞こえた。これで部屋には我だけである。
部屋の中は涼しいのだが、何か『ツンッ』としたちょっと嫌な臭いがする。またカーテンが閉めてあるようで、昼間なのに部屋が薄暗い。
(うむ、なんとなく見えるがよくわからん。)
確かに猫になって夜目が効くようになったが、明るい場所のように詳細に見えるわけではない。
とりあえず部屋を観察してみると、ドアの正面が窓なのであろう、カーテンが閉められていて僅かに光が透けて見える。その手前には作業台なのか?机と椅子が置かれている。
そして壁にはガラス張りの棚が一面に置かれていて、何かが入れられているのが見える。
(何かが入っているのはわかるのだが、中身が何かまではわからん…)
近づいてみればわかるか?我はそう思い近づいてみたが、今度は見上げるようになってしまって中身がよく見えない…
(くそっ!忌むべきは小さき猫の身体よ…仕方あるまい。)
我は部屋の入口に戻ると壁を調べる。
(おっ、あれだな。)
見つけたのは壁の上の方に付いている白いスイッチのようなもの。
人間共は部屋の明かりをつけるときに必ずこれを押していた。きっとこれを押せば部屋が明るくなるはず。
しかし問題が2つある。
1つは我にも使えるか?ということである。
もし契約魔法のように特定の人物しか利用できないとすれば、我が押したところで何も起きない。いや、最悪術者に警報が行くかもしれん。
この世界には魔法がない(想定)だが、魔法よりも余程すごい技術を見せつけられ続けているのだ。もしかしたら技術で同様のことぐらいできるかもしれん。
そして2つ目だが、高くて届くかわからん…
ドアノブより少し高い位置に設置されているために、今の我に届くかどうが微妙なのだ。
(まあやるしかあるまい。)
元々父親が戻ってきたらバレるのは確定なのだ。もし戻ってこなくとも、部屋には鍵がかかっているので、我が出るためには外から開けてもらわねばならん。その場合は鳴き声なりで誰かを呼ばねばならん。
つまり、ここを調査できるのは最初で最後なのだ。だったらどんな危険があろうともやらねばなるまい。
我は壁の前でいつもドアを開けるようにジャンプする。
…届かない。
ジャンプ!
…届かない。
ジャンプ!
…くそっ、届かないではないか!!
「にゃーっ!!(届けっ!!)」
身体を小さくして全身の力を脚に溜めた全力のジャンプをすると、
『ポチッ』
届いた!
我がスイッチを押すと、部屋に明かりがついた。そして部屋の全貌が明らかになる!
(これは…)
ガラス張りの棚の中に置かれていたものは、どこかで見たことのある人型であった。
(あっ、これは深夜に見ているアニメの人型戦闘兵器ではないか!)
そう、そこには小型の人型戦闘兵器が並んでいたのであった。
いや人型戦闘兵器だけではない、あれは結と日曜の朝に一緒に見ている魔法少女ではないか?
他にもアニメに出てくる戦闘機といったか?それに似た見たことのない物も置かれている。
その数、ざっと数十はある。
(こ、これはっ!アニメの世界だけと思っていた兵器の倉庫なのかっ!?)
…まあそんなわけないのである。
そもそもアニメでは人間が乗って操縦していた。こんなに小さいのに人間が乗れるはずもない、今の我でも乗れん。
それによく見ると何か違うのがわかる。アニメでは金属のように光り輝いていたが、これはそうではない。
おそらく似せて作った模型なのであろう。
(あぁ、そういえば思い出した。)
アニメを見ているとCMというのが途中で流れるのだ。そこで流れていた『プラモデル』というものであろう、それが並べられているのか。
(苦労して入った結果がこれとは…)
きっとここは父親の趣味の部屋なのであろう。部屋に籠もってやっていたことは『プラモデルの組み立て』ということなのか…
我はがっかりしながら棚を眺める。よくもまあこんなにいろいろな物を集めたものだ。
人型戦闘兵器、戦闘機、戦闘機と人型戦闘兵器の合わさった物、魔法少女、女剣士、使用人っぽい格好した少女等々…
我はそのまま作業台らしき机に登る。そこには組み立て途中の人型戦闘兵器が置かれている。
(…なんのためにこんなに苦労して入ったのだろうか。)
我は大きなため息をつくのであった。
結視点
「ただいま~」
今日は久しぶりにみんなと集まって楽しかった。
私はリビングに入ると、パパとママがいた。
「ただいま、あれ?ケイちゃんは?」
いつもソファかキャットタワーにいるはずのケイちゃんがいない。
「おかえり、そういえば見ないわね。」
ママもどこにいるか知らないんだ。
「もしかしたらどこかのお部屋探検してるのかな?」
私が帰ってくるといつもリビングにいるから、ケイちゃんが探検してるのって見たことないんだよね。
「ちょっと探してくる。」
私がリビングから出ようとすると、
「ぎにゃーーーーーっ!!」
階段の方からケイちゃんっぽい叫び声が聞こえた!
「ケイちゃん!」
私はびっくりしてケイちゃんの声がする方に急ぐ。パパとママも気づいて来てくれる。
「にゃー、にゃー!!」
「やっぱりケイちゃんだっ!パパの部屋から聞こえる!!」
「ええっ!あの部屋に入っちゃったの?」
「パパ、早く開けて!」
パパの部屋は鍵がかかってるから私じゃ入れない!
「わかった!」
パパが部屋のドアを開けると、ケイちゃんが机の上にいるのが見えた。
「ケイちゃん!大丈夫?」
「にゃーっ!!」
私がケイちゃんにかけ寄ると、ケイちゃんの右前脚に何かがべっとりついてるのがわかった。
「あっ、これ接着剤!」
ケイちゃんのキレイな毛並みが濡れたようにべっとりとしている。そして机には倒れてこぼれた接着剤。
「待って結、接着剤触っちゃダメよ!」
「でも!」
「すぐにケイを病院に連れてきましょう。」
「うん、わかった!」
私はケイちゃんについた接着剤にさわらないように抱きかかえると、ママと病院に急いだ。
なんかパパが叫んでたような気がするけど気にしない。
「あははははっー。」
「お姉ちゃん!笑い事じゃないんだよ!!」
「だって、ケイの前脚ツルツル!それにエリザベスカラーまでして!」
病院から帰ってきた私たち。
幸いにもケイちゃんにかかった接着剤は皮膚までついてなかった。だから病院で接着剤が付いた部分の毛を切ってくれた。
念のために塗り薬を出してくれて、患部をケイちゃんが舐めちゃわないようにエリザベスカラーを用意してくれた。
「でもホントに危なかったんだよ!」
「確かにそうね。接着剤は危ないからね。」
帰ってきたケイちゃんはなんかしょぼくれた顔してるっぽかったのに、お姉ちゃんが笑いながら見てると今度はふてくされたような顔になってる。
「あぁ、僕のプラモが…」
パパは作り途中のプラモがダメになっちゃったみたいで落ち込んでる。
「パパ!ケイちゃんに危ないからちゃんとしないとダメじゃない!!」
私はすごく怒ってる。もしケイちゃんの皮膚とかについてたらもっと大変なことになってた。それだけじゃない、もし体内に入ってたら…
「ごめん、結。これからは絶対ケイに触らせないようにするから…」
元々落ち込んでたパパは私に怒られてもっと落ち込んじゃった。
「それにしてもエリザベスカラー…ぷふっ!」
「お姉ちゃんは笑いすぎ!!」
「だってこれ…」
むーっ!!ケイちゃんだって好きでこんな格好してるんじゃないんだからねっ!!
「パパ!!」
「はいっ!!」
「ケイちゃんの買い物するから車出して!!」
こうなったら絶対笑わせないんだからっ!!
「これならどおっ!?かわいいでしょ!!」
私は病院で用意してもらったエリザベスカラーをペットショップでパパに買ってもらったものにつけかえた。
「あはははっー!!こ、これ!かわいいっ!」
お姉ちゃんはケイちゃんを見てますます笑う。
「面白くないもんっ!かわいいもんっ!!」
私が買ってきたのは食パン型のエリザベスカラー。ケイちゃんが食パンに頭を突っ込んだみたいですごくかわいい!!
「かわいいっ!ホントにかわいいっ!!ぷふっ!」
「笑わないのっ!笑うなーっ!!」
私はかわいくなったケイちゃんを守るように抱きしめて、もうこんなことがないようにしないとって思った。
猫にとって危険なものは部屋にあふれています。
ですので、飼い猫が危ない目にあわないように整理整頓はしっかりしましょう。