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大魔王→黒猫  作者: (著)まっつぅ♪ (イラスト)SpringFizz
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84.陽菜の嫉妬

誰視点かを追記しました(2022/11/23)

陽菜視点


「それでね、熱が出てちょっと辛かったんだけど…でもずっとケイちゃんが枕元にいてくれたの。ケイちゃんまるで私のこと看病してくれてるみたいでね、すっごくうれしかった!」

「へ~、ケイちゃんやっぱり賢いんだね。」

「うん!もう本当にうれしくって!これからもっとケイちゃんのためにがんばらなくっちゃ、って思ってる。」

結ちゃんの風邪が治って登校してきた日、私たちはいつものように集まって話していました。

結ちゃんはすっかり元気になっています。

しかし、結ちゃんのお話を聞けば聞くほど私の心は大荒れです…

(魔王様が看病…魔王様が結ちゃんのためにずっと看病…なんて羨ましいっ!!)

屈託のない笑顔で嬉しそうに話す結ちゃん、そんな彼女だから羨ましいとは思いつつも嫉妬という醜い感情が起きないのが救いです…

「ママが言ってたんだけど、猫ちゃんって自分が家族だと認めた人が体調悪くなったりすると、ずっと寄り添ってくれるんだって。だからケイちゃんが私のこと『ママ』って認めてくれたんだ、って思うと本当にうれしい!」

そう、これも嫉妬にならない理由。

私は魔王様の『ママ』になりたいわけではありません。生涯のパートナーとしてずっと魔王様と一緒にいたいのです。

(まあ今回もその野望は達成されないわけですけど…)

流石に人間と猫が結婚できるとは思っていません。私としては魔王様ならそれも全然問題ないのですが、それが実現できると思うほどに楽観主義ではありません。

そして()()()()結ちゃんから『ケイちゃん』を取り上げるつもりもありません。

それならせめて魔王様のために行動するのが、私の目標であり希望となるのです。

しかしそれとこれとは別問題なのです。

(結ちゃんに対する魔王様の恩賞が羨ましい…)

この間の『あーん』も恩賞としては十分すぎると思っていましたが、この話を聞いてしまったら、物足りなくなってしまうのもしょうがないではないですか。

私はそんなことをずっと考えながら、今日の授業をずっとモヤモヤしながら受けていました。


「…で?今日はどのような策略を使って我と2人きりになったわけだ?」

その日の放課後…は流石に病み上がりの結ちゃんに失礼でしたので、翌日私は魔王様に逢いに結ちゃんのお家へ遊びに来ました。

「ですから策略なんてありません、たまたまです。」

今日()運良く私は魔王様と2人きりになれました。前世からそうなのですが、私はとても運が良いようなのです。あまり過信しすぎると計略に支障が出ますので、普段は考えないようにしているのですが。

「まあ良い。それなら報告会をするか。」

今すぐ魔王様に問いただしたい気持ちをぐっと抑えて、私はまず役目を果たすことにします。

「この間の発電の仕組みに関しては見事であった。あれなら我が国でも電気を作ることができることがよくわかった。」

「はい、ですがあれで終わりではありません。電気を作っても使うことができなければ意味がありませんので。」

「その通りだ。引き続き頼むぞ。」

「承知しました。」

「あと貴様に頼んでいたことは治水のことか?」

「はい、そちらは少しずつ調査をしております。まず重要なのは堤防ですね。こちらの世界の堤防はとても作りがしっかりしていますので少々水嵩が上がったとしても問題ないように高さも面積も余裕を持っているようです。」

調べてみてわかったのですが、関東の有名な某川も十分すぎる高さと、余裕のある河道を用意してありました。

「堤防なら作ってあるが足りないということか?」

「そうですね、河川に対して増水した場合の水嵩を考えると高さも面積も不足しているかと。」

「なるほど…」

「また特に川が蛇行している場所が洪水になりやすいのは、魔王様もご存知だとは思うのですが。」

「それはわかる。蛇行部分と川の合流箇所が水の溜まりやすい場所だからな。」

「はい、ですので蛇行している部分を工事で真っ直ぐにすることで水の流れを良くしています。また合流部分に関しましてはまだ調査中となります。」

「なんと、川自体を作り変えることまでしているのか…」

まだ調査中ですが、治水に関してはとても苦労しています。

この世界の今の技術力で調査したところで、向こうの世界で通用するわけがありません。

例えば一部の川では川底をコンクリートで固めることによって、川の流れをコントロールしたり、川を水流の力から守るようにしています。

しかしそんな技術は当然使えるわけもありません。

ですので、実現可能なのは江戸時代辺りまでの治水となるでしょう。

そのため調べるのにもかなりの時間がかかるのです。

「調査中にしては素晴らしい成果だ。貴様という協力者がいてくれることに感謝せねばならんだろう。」

ここです!!私の目的を果たすためにはここが勝負なのです!!

「感謝していただけるのですね?でしたら相応の恩賞もいただけるのですね?」

「当然だ。この身体ではすぐにとは約束できんが、必ず相応の恩賞を与えることを約束しよう。」

魔王様、余裕でいられるのも今のうちですよ?

「…そういえば結ちゃんが風邪をひいたときはずっと看病なされていたそうですね、魔王様?」

私がそう言うと、魔王様はびっくりしたような顔をしました。

「貴様、そのことをどこで知った!」

「結ちゃんが嬉しそうにお話してくれましたよ。」

私はにっこりと事実を述べます。

「そ、それは日頃から食住の世話になっているからな。あ奴にも恩賞を与えるのは当然であろうが!」

「…へぇ」

私は笑顔のままで魔王様を追い詰めます。

「結には感謝しているが、貴様にも感謝はしているのだ。だから必ず恩賞も与えると約束しているのではないか。」

魔王様がたじろいでなさっています。かわいいですね〜。

私は魔王様に尽くすのは当然大好きで生きがいですが、こうして狼狽えていらっしゃる姿を見るのも大好きなのです。特に今の可愛い姿で狼狽えていらっしゃるのは堪らないです!!

「…そうですね。魔王様は信賞必罰を大事になさっておいでですものね。でしたら私が求めているものもおわかりなのではないですか?」

私は魔王様をもう少し追い詰めてみます。

「貴様の求める恩賞を与えると、今世話になっている結とその家族を裏切ることになるだろうが!そんなことが我にできると思っているのかっ!」

まああまり追い詰めると可哀想ですしこのぐらいですかね?

それに私の我儘で結ちゃんとの関係が悪くなったら困りますし、それで結ちゃんへの恩を仇で返す魔王様なんて見たくありません。

ですので、魔王様が私の求めているものがわかってくださっているのと、ちゃんといつもの魔王様のお考えであることがわかったことで満足するとしましょう。

「まあその通りですね。ですので私への恩賞は来世に持ち越しですかね?もし私が来世でも記憶を持ち越せたら…そのときは魔王様は必ず私の想いに応えてくれると信じていますね♪」

私は先程とは違って、心からの笑顔で魔王様に言いました。

その結果、確約はいただけませんでしたが、魔王様が大層狼狽えていらっしゃったので、ひとまずは満足とさせていただきました。

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