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大魔王→黒猫  作者: (著)まっつぅ♪ (イラスト)SpringFizz
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83.結を見守る猫

誰視点かを追記しました(2022/11/23)

ケイ視点


翌朝、目を覚ました我はいつもと違う場所にいた。

(あぁ、そういえば結の部屋で寝たのであったな。)

枕元で丸くなっていた我の横には結の顔がある。

結はまだ寝ているようだが、やはり顔色が良くないように見える。

(まあ一晩寝たぐらいで都合良く治るとは思ってはいないが。)

それでもあのまま気づかずに過ごしているよりはマシではあろうが…全く世話がかかる。

(しかし、結はこんな状態でも我の世話を優先しようとは。)

今回のことは今までの謝礼のつもりだと考えてはいたが、まだまだこの程度では返しきれんな。全く、魔王ともあろう者が人間に返しきれんほどの恩を受けるとは情けない。

そんなことを考えながら結を見ていると、結の目がうっすらと開いて目が合った。

「…ケイちゃん、おはよう。もしかしてずっといてくれたの?」

「にゃー(気にするな。それより身体を休めるために寝ていろ。)」

「ケイちゃん、ありがとう。」

結はそう言って我を撫でる。

「結、起きてる?朝ごはんにおかゆ作ったけど食べられる?」

いつの間にか部屋の入り口に母親が来ていた。

「ママ、おはよう。ちょっと食欲ない…」

結の声はまだ弱々しい。

それを聞いて母親はこちらに来て結の額に手を当てる。

「まだ熱は高いわね。一口でも食べられるだけでいいから。それと汗かいてるから着替えもしないとね。起きられる?」

「うん、大丈夫。」

結はゆっくり身体を起こす。

「無理しないでいいからゆっくりね。落ち着いたら病院行きましょう。」

「うん、ママありがとう。」

「ケイもご飯用意してあるから食べちゃいなさい。」

そういえばまだ今朝の食事をしていなかったか。

「にゃー(ご苦労。それでは結のことは任せるぞ。)」

我は一声かけると、食事のためにリビングへ戻った。


用意してあった食事も終わり、我はソファにいた。

母親と結は病院に行ってしまったため、今家には我一人である。

普段なら技術調査のために動く絶好の機会なのだが、今日は大人しくしていることにした。

(風邪か…)

大魔王である我は風邪などひいたことがないので、辛さや苦しさがよくわからない。

それに基本的に魔族は身体が丈夫な者が多いため、風邪をひく者もあまり多くなかった。

我が今まで関わった唯一の人間であるフィアナもまた、類稀なる魔力のおかげで体調を崩すようなことはなかった気がする…数百年前の話だからそこまで詳しく覚えていないが。

しかし医療技術の発達していなかった前の世界では、病気による死者が多かったことは知っている。特に流行り病が広まったときの人間族は大量の死者を出していた。

(どの世界でも人間は貧弱であるのだな。)

それなのにやはり人間は栄えているのは不思議である。それだけ人間は様々な知恵と技術を持っているということなのだろう。

特にこの世界では技術力が段違いである。きっと結の風邪も早々に治ってしまうに違いない。

(まあ治るまでは付いていてやるか。)

今まで受けた恩を考えれば、その程度なんてことはない。

我は結が戻るまで一人で体を休めていた。


「ケイちゃん、ただいま。」

ドアが開くと結と母親が入ってきた。どうやら病院から戻ってきたらしい。

結にはいつものような元気はなく、ゆっくり歩いて我に近づくと、

「ケイちゃん、昨日はありがとね。」

我を撫でながら結は今朝と同じように礼を言う。

「にゃー(礼など言われることではない。それより早く休んで治すのだ。)」

そう言うと、結はいつもより弱々しい笑顔を見せる。

「結、今日はご飯食べてお薬飲んで安静にしてなさい。」

「はぁい。」

その後結は軽く食事をすると、病院から貰ってきたであろう薬を取り出す。

我はそれを見てまた驚く。

(なんだ!あの小さな玉状の物は!薬というのは薬草等を調合して作るものではないのか?)

結が手にしているのはほんの小さな玉状の物。そしてそれを水で流し込んで飲んでしまった。

(こんなに手軽に飲める薬に効果などあるのか?)

我は疑心の目を向けるが、どうせ結につこうと決めていたのだ、その薬の効果をこの目で確かめてやろうではないか。

我は部屋に戻る結についていく。

「ケイちゃん、また一緒に寝てくれるの?」

我がついてくるのに気づいた結が反応する。

「にゃー(どうせなら治るまではいてやる。)」

「ケイちゃん、うれしい。ありがとう。」

結は本当に嬉しそうにする。

こうして我はまた結の部屋で一緒に寝たのだが、次に結が起きたときにすっかり熱が下がっていたことに大変驚いたのだった。

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