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大魔王→黒猫  作者: (著)まっつぅ♪ (イラスト)SpringFizz
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82.結を心配する猫

誰視点かを追記しました(2022/11/23)

陽菜視点


学校の昼休み、私たちはいつも通り結ちゃんのところに集まって話しています。

「それにしてもこないだのおやつ食べるケイちゃんかわいかったね。スプーンから直接食べてくれるのホントかわいかった!またやりたいね。」

杏奈ちゃんは魔王様が食べてくれたのがよっぽど嬉しかったのでしょうか、本当に嬉しそうに話します。

私?私も当然大満足でした!

魔王様に『あ〜ん』できるなんて元の世界では考えられませんでしたから。

それだけでも恩賞としては十分すぎるほどのものを頂いたと思っています。

「杏奈最近そればっか。そんなに好きなら飼っちゃえば?パパに言えば保護猫紹介できるよ?」

ゆう子ちゃんはそんなことを言いますけど、わかっていませんね。

「う~ん、猫飼いたいのはそうなんだけど、ケイちゃんがかわいいんだよね。」

そうなのです、杏奈ちゃんは魔王様に魅了されただけなのです。

「なるほどねぇ、でもなんかわかるな。ケイちゃんって他の猫と違うって私も思うもん。」

まあ魔王様なのですから違って当然ですけどね。

杏奈ちゃんとゆう子ちゃんの話を聞いていて、私は違和感を覚えました。

(そういえばこれだけケイちゃんを誉めてるのに結ちゃんが大人しいです。)

私は不思議に思って結ちゃんを見ると、何かぼーっとしているようです。

「結ちゃん?」

私が話しかけると結ちゃんはちょっとびっくりしたようです。

「えっ?あ、陽菜ちゃんどうかした?」

「いえ、結ちゃんがちょっとぼーっとしているようでしたので。体調がすぐれないのですか?大丈夫ですか?」

「ううん、全然そんなことないよ。ちょっとぼーっとしちゃっただけ。」

結ちゃんは笑顔でそう言いましたが、少々顔色が悪い気もします。

私は心配になって結ちゃんのおでこに手をあてます。

「熱は…ないみたいですね。」

「もう、陽菜ちゃん心配しすぎだって。」

「そうですか?」

「うん、みんながケイちゃんかわいいって言ってくれたのだってちゃんと聞いてたよ。」

「それなら良いですけど…」

(でもなんとなくいつもの結ちゃんっぽくない気がしますね…)

私は少し心配になりましたが、その後の結ちゃんはいつも通り楽しそうにお話していました。


結視点


(…なんか頭がぼーっとする。)

私は家に帰ってからケイちゃんのおトイレの掃除をして、ソファで丸くなってるケイちゃんの隣に座った。

そういえば陽菜ちゃんに心配されたっけ?でも別に体調悪いって感じはしないんだけどなぁ…

そんなことを考えながらぼーっとしてたら、

「結、そろそろ夕飯の支度手伝ってくれる?」

ママからお手伝いの声がかかった。

「はーい。」

(きっと気のせいだよね。)

私はいつも通りにママのお手伝いをしにキッチンに行った。


ケイ視点


「ケイちゃーん、今日も一緒にテレビ見よ。」

夕飯後、結はそう言ってテレビをつけて我を抱きかかえる。テレビを見ることに異存のない我は黙ってされるがままになる。

(…おや?)

我を抱きかかえる結の体温がいつもより高い気がした。抱えられながら結の顔を見ると、いつもより赤くなっている。

(此奴、自分の体調に気づいてないのか?)

体温が高くなっていて、そしてこの赤ら顔。どうやら結は風邪でも引いているのであろう。

(全く、自分の体調管理も出来んとはまだまだ子供だな…しょうがない。)

我は結の腕をすり抜けて床に降りた。

「あれ?ケイちゃんテレビ見ないの?」

我はそれを無視してリビングのドアの前に立つ。

「にゃー(さっさと行くぞ。)」

我は結に声をかける。

「ケイちゃん?」

結は我を不思議そうに見る。

「にゃー(早く来い。)」

我は結に声をかけてドアを開ける。

「ケイちゃん呼んでるの?あっ、待って。」

我がリビングから出ると、結が慌ててついてくる。我はそれを確認すると階段に向かって歩き出す。

「ケイちゃんどこ行くの?2階にご用があるの?」

我は黙って時折結がついてきてるのを確認しつつ階段を登る。

(確か結の部屋はここだったな。)

前回連れて行かれた部屋のドアの前まで行く。

「にゃー(開けるのだ。)」

「ケイちゃん、私の部屋で遊びたいの?」

(風邪引いてるのに何が遊ぶだ。)

結は嬉しそうにドアを開けるが、そうではない。

我はドアが開くと、部屋にあるベッドの上に飛び乗る。

「にゃー(さっさと寝るのだ。)」

枕元に立つと我は結に声をかける。

「ケイちゃん、今日は私と一緒に寝たいの?」

また嬉しそうにする結。そうではないが、貴様が寝るならそれでもいい。

「にゃー(いいから寝ろ。)」

「あれ、どうしたの?ケイいるの?」

どうやら別の部屋にいたのであろう。舞衣が部屋にやってきた。

「あのね、ケイちゃんが私の部屋に来たいって。」

「本当に?結が一緒にいたいから連れてきただけじゃないの?」

「違うもん!ケイちゃんが私をここまで連れてきてくれたんだもん!」

「へぇ、そんなことあるんだ。って、結、あなた顔赤いじゃない!体調悪いんじゃないの?」

舞衣も気づいたか、それなら大丈夫であろう。

「えっ?そうかな?」

舞衣は結のおでこに手をあてる。

「ほら、おでこも熱いじゃない!ママ呼んできてあげるから、早くパジャマに着替えてお布団入ってなさい!」

「あれ?さっきまでは熱なんてなかったよ。でもなんかフラフラするかも…」

「熱が上がってるからよ。いいから早くしなさい。」

「…はぁい。」

結は症状を自覚したからであろうか?先程よりフラフラしながら着替える。

「ケイちゃん、ごめんね。風邪引いちゃったみたいだから遊べないの…」

枕元に立つ我に声をかける。

「にゃー(いいからさっさと布団に入って寝るのだ。)」

結が布団に入るのを確認すると、我は枕元で丸くなった。

「ケイちゃん、一緒にいてくれるの?」

結は我に話しかける。

「にゃー(貴様が寝るのを確認するまでだ。)」

「ケイちゃん…ありがと。」

結はいつもと違って弱々しい笑顔になる。

「結、風邪引いたんだって?大丈夫?まず熱測りましょう。」

舞衣に呼ばれた母親がやってきてなにやら棒を取り出す。あれは我が病院で尻に刺されたものに似ている。

「…ママ、ごめんなさい。」

「いいから、脇に挿して。」

「…38度5分ね。こんなになるまで気づかないなんて…すぐ薬とお水持ってくるから。それと明日は朝から病院行くからね。」

「学校は?」

「お休みに決まってるでしょ。」

「…はぁい。」

母親は我を見ると、

「ケイが結を部屋まで連れてきてくれたんですって?ありがとね、ケイ。」

そう言って我の頭を撫でる。

「にゃー(気にするな。日頃の恩を返しただけだ。)」

「結のこと本当によく見てくれてるのね。」

母親は嬉しそうに我を撫でる。

「にゃー(いいから早く薬持って来い。)」

母親は部屋から出ていき、薬と水を持って戻ってきて、結に飲ませて行った。

(やれやれ、これで数日寝ていれば良くなるだろう。)

我は今夜はこのまま結の枕元で過ごすことにした。


舞衣視点


「結、大丈夫かな?」

私はママとリビングにいた。結は薬飲んで部屋で寝ちゃったから特にやれることもないし。

「舞衣も教えてくれてありがとう。結ったら夕飯のときは全然平気そうだったのに、急に体調悪くなったみたいね。ケイが早めに気づいてくれてよかったわ。」

本当にそう思う。

「でも今日のケイ、本当に不思議だったね。」

今もケイは結の枕元にいて、なんだか看病してるみたい。

「そうでもないわよ。あれはケイが結を家族だ、って認めてるからでしょ?」

「そうなの?」

「飼い主が体調悪かったり落ち込んだりすると、猫がずっと見守るように一緒にいてくれるなんて、ネットでは猫あるあるで紹介されてるわ。」

「そうなんだ。」

そっか、ケイはちゃんと結のこと認めてるんだ。よかったね、結。

「結がいつもがんばってるの、ちゃんとケイにも伝わってるのね。」

本当にそう思う。

「結が治るまでは私がちゃんとケイのことやるね。」

「そうね。じゃないと、舞衣が風邪引いたときにケイに無視されちゃうものね。」

そう言ってママは笑う。

「そんなんじゃないってば。私は結とケイのためにって思ってるだけだってば。」

意地悪を言うママに私は反論する。

「わかってるわよ。でもケイに無視されちゃったらイヤでしょ?」

「それはイヤだけど…」

(あぁ、結羨ましい!)

これこそ私が求めてた『猫との生活』なのに、結はもう手に入れちゃったんだ。

これが私と結の差なのね…

猫は家族の体調に敏感ですよね。

落ち込んでたりすると不思議と一緒にいてくれたり。

そんな素敵な関係を猫と築いていきたいですね。

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