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大魔王→黒猫  作者: (著)まっつぅ♪ (イラスト)SpringFizz
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81.猫と食べ物

誰視点かを追記しました(2022/11/23)

ケイ視点


我には気になっていることがある。

それは人間の料理。

この間、結たちがおやつを作ってくれたおかげで、我の食生活に甘味が新たに追加された。

そのことに関しては非常に感謝している。数日に1度しかもらえないのだが、我はその日を心待ちにするようになっていた。

だがそのときに結達が食べていたおやつも非常に気になっていた。

部屋には甘くていい匂いが充満していたし、子供達も母親も美味しそうに食べていた。

夜に子供達が部屋に戻ってから父親も食べていたが、やはり美味しそうに食べていた。

(やはりこの世界の料理は違うのだろうか?)

技術力が発達しているのなら、それを調理法にも活用できるはずだ。

それならば我の世界では想像もつかないような料理があってもおかしくはない。

我の世界の料理といえば、『焼く』『煮る』『蒸す』『戻す』が基本である。

肉や魚は焼いて調理が基本で、野菜や香草と一緒に煮てスープにする場合もある。

芋のような穀物は蒸して料理する地域も結構あるはずだ。

そして狩りのできない冬は、保存用に乾燥させておいた肉や魚を水で戻して料理する。

干し肉は遠征時にそのまま囓ることもある。

さすがにこの基本から大きく逸脱するような料理法は考えづらいが、この世界ならではのものは絶対にあるだろう。

『国が変われば料理も変わる』

我の世界でも暑い国では香辛料をふんだんに使った料理があったり、寒い国では冷えた身体を温めるための煮込み料理があったりと、その国独特の料理があった。

(食してみたい、異国の料理を。)

なに?異国の料理ならキャットフードを食べているだろう、だと?

ふざけるな!猫食ではない人間の料理を味わってこそであろうが!!


「結、そろそろご飯の準備するから手伝って。」

ソファで我と一緒にゴロゴロしていた結に母親が声をかける。

「はーい。今日のご飯何?」

「今日は鶏の照焼きよ。」

「やったー。」

結は嬉しそうにキッチンに行く。

(照焼き?どのような料理なのだ?)

名前からは焼くことはわかっても『照り』とは何であろう?

(これは興味深い料理に違いない。)

我は前から考えていた『ある作戦』を実行することに決めた。


「今日はね、お家帰ったらケイちゃんがお出迎えしてくれたんだよ。」

今は家族揃っての夕飯時、夕飯を食べているときは結が必ず我の話をしている。

それを見守るように見ている3人。

(この家族は本当に仲が良いな。喧嘩や争うところを見たことがない。)

もちろん母親に余計なことを言う舞衣は例外であるが。

「それでね、ケイちゃんったらね…」

結は食べるよりも話す方に意識が集中している。

(この作戦は意識が食事に向いていない結には効果的なはずだ。)

我は足音と首の鈴が鳴らないように慎重に結の椅子の下に移動する。幸いにも結は我が近くにいることに気づいていない。

「結、お話もいいけどちゃんと食べなさい。」

母親が結を注意する。

「はーい。」

結が箸と呼ばれている食器で鶏肉を持ち上げる。

(あの箸というのは中々興味深いな。単純な構造だが上手く扱えば摘むのには向いているな。フォークのように刺すのではなく、こういう使い方もあるのか。)

「でもね、ケイちゃんがね…」

結が箸で鶏肉を摘んだまま話す方に意識が行く。

(今だっ!)

「にゃー!(我にも寄越せ!)」

我は鳴くと同時に結が座っている椅子を揺らす。

「うわっ、ケイちゃんいたの?って、あっ!」

結はびっくりして我を見る。その拍子に箸で摘んでいた鶏肉が落ちる。

(ここだっ!)

我は鶏肉に向かってジャンプする。

『パクッ!』

そして見事に鶏肉を空中でキャッチすることに成功したのだが、

(熱っ!!)

鶏肉が舌に触れた途端に熱さで落としてしまった…

(なんだ!人間はこんな熱い物を食べているのかっ!!)

完璧な作戦だと思ったのだが、料理がこんなに熱いとは計算外だった。

「ケイちゃん!これは人間の食べ物だからダメだよっ!」

落ちた鶏肉に再び齧り付こうと思ったら、結に拾われてしまった…

「にゃー!(我も人間の食べ物を食してみたいぞっ!)」

「ママ、鶏の照焼きケイちゃんが食べちゃダメなもの入ってる?」

結は心配そうに母親に聞く。

「塩分は多いから味が濃いのが心配なだけね。毒になるようなものは入ってないわ。」

「そっか、よかった…」

結はホッとしたような顔をしたと思ったら、我を抱えあげて抱き締められた。

「ケイちゃん、人間の食べ物は猫ちゃんには危険なものが入ってるかもしれないんだからダメだからね…」

結は我をギュッと抱き締めながら言う。

「ケイちゃんが危ない目にあったり、苦しい目にあって欲しくないんだから…もうやっちゃダメだからね…」

結の言葉が震えているのがわかる。もしかしたら泣いているかもしれない。

(…我は何をやっているのだ。)

つい最近、結や陽菜に感謝すべきと思ったばかりだったのではないか?

それなのに我は自分の我儘で結を悲しませてしまったのだ。

「にゃー(我の失態だ。謝罪する。)」

「ううん、私もごめんね。ケイちゃんが近くに来てるのわからなくて。」

我の謝罪を聞いて結が応える。

(…ん?)

「にゃー?(我の謝罪がわかったのか?)」

まさかここにきて翻訳魔法が機能し始めたのか?

「ケイちゃん、私も気をつけるけどケイちゃんもこんなことしちゃダメだからね。」

結は我の顔を見てそう言った。やはりその目には涙が浮かんでいた。

「にゃー(そうではない、我の言葉がわかるのか?)」

「でもケイちゃん無事でよかった。ちゃんと反省してくれてるからもう大丈夫だよ。」

結はそう言って笑顔になる。

(やはり気のせいか。たまたまタイミングが合っただけか…)

何か引っかかる気がするが、我はその後は大人しくしていたのだった。

何度も書いていますが、猫に人間の食べ物はあまり良くありません。

味の濃さやカロリーの多さ、そして何よりも猫にとって毒になる物もあります。

小説だから許されるようなものですが、飼い猫に対しては十分に気をつけてあげましょう。

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