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大魔王→黒猫  作者: (著)まっつぅ♪ (イラスト)SpringFizz
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閑話その1.ゆう子と結の昔話

今回は閑話になります。

結とゆう子の思い出話です。

私と結ちゃんは生まれたときからずっと一緒にいる友達だ。

ママとおじさんが幼なじみだから私たちが生まれる前から家族ぐるみの付き合いだったんだって。

初めて結ちゃんと会ったときのことは全然覚えてないけど、いつも一緒に遊んでたことは覚えてる。

最初は結ちゃんがお姉ちゃんみたいだな、って思ってた。

信じられる?『あの』結ちゃんがお姉ちゃんだよ?

でもちっちゃい頃はいつも結ちゃんが私を引っ張ってくれたんだよね。

あのときも結ちゃんがいてくれたから私はちゃんと立ち直ることができたんだ。



「ゆっこちゃ~ん、あそぼ~。」

「は~い。」

まだ小学校に入る前、私たちはいつも一緒に遊んでた。当時はずっと結ちゃんが家に来てくれた。その理由は、

『ワンワンッ!』

「わ~、リクくん。リクくんもいっしょにあそぼうね。」

『ワンッ!』

当時家で飼ってたシェットランドシープドッグの『リク』。結ちゃんはリクのことが大好きで、リクも結ちゃんにとっても懐いていた。

シェットランドシープドッグというのは小型犬とも中型犬とも取れるぐらいの体格で、顔がシュッと長くて凛々しいはずなんだけど、毛がとても長くてフワフワしてるからとっても愛嬌があってかわいい。シェルティって略されることもあるけど、その略称もかわいい感じだと思う。

リクは私が生まれる前から家で飼ってるからそれなりの老犬だった。私にとってはいるのが当然で大好きな家族の一員だと思ってる。

「ゆっこちゃん、きょうもリクくんのおさんぽいきたい。」

「うん、いっしょにいこう。」

その頃はリクの散歩を結ちゃんと一緒に行くのが日課になっていた。リクもそれがわかっているようで、結ちゃんが来ると散歩に行けるから喜んでるみたいだった。

散歩と言っても子供の行動範囲だからせいぜい町内一周とか近所の公園とかまでなんだけど、それでもリクは喜んでくれてたと思う。今思うと老犬だったからちょっとの運動で満足してくれてたのかもしれない。

そうやって毎日散歩して、お家に戻ってからもリクと一緒に遊んで、最後には疲れてソファでリクと一緒にお昼寝しちゃう。

そんな毎日がとても楽しかったし、ずっと続くんだって思ってた。


「ゆっこちゃ~ん、きょうもリクくんといっしょにおさんぽいこう。」

いつも通り結ちゃんが遊びに来る。でも私の家はいつもとは全然違っていた。

「ゆいちゃん…」

出迎えた私は泣き疲れて顔を腫らしていた。

「どうしたの!?ゆっこちゃんだいじょうぶ?」

私の顔を見て結ちゃんが心配そうに聞いてくれる。

「リクがね、びょうきになっちゃったんだって…」

私は昨日急にリクが体調を悪くしたことを結ちゃんに説明した。パパが一生懸命治療してくれてるけど、老犬だから長く持たないかもしれないって言ってたこともたどたどしくだけど説明できたと思う。

「そんな…」

結ちゃんもすごくショックだったみたいで、何を言って良いのかわからないみたいだった。

「リクくんにあえないの?」

「おうちにいるからあえるけど、ずっとねてるの…」

リクは昨日からずっとリビングのクッションで寝てる。たまに起きてお水をちょっとだけ飲むけど、それだけですぐにまた寝ちゃう。

「あってもいいの?」

「いいとおもうけど、パパにきいてくる。」

パパに聞くと『大丈夫』ということだったので、結ちゃんをリクのところに案内した。

「リクくん…」

結ちゃんも元気のないリクを見てショックなのか、泣きそうな顔でリクを見ていた。

『くぅん…』

リクは結ちゃんが来たのがわかって、ゆっくり顔を上げて鳴いた。

「リクくんだいじょうぶだよ、げんきになったらまたおさんぽいこうね。」

結ちゃんはリクを優しく撫でて励ましてくれる。それがわかるのかリクは気持ちよさそうに目を細めている。

「パパさん、リクくんげんきになる?」

結ちゃんは心配そうにパパに聞く。

「もうおじいちゃん犬だから難しいかもしれないけど、結ちゃんとゆう子がこうやって心配してお見舞いしてくれてるからきっと大丈夫だよ。」

パパは優しく答えてくれた。でも本当はもう長くないって昨日言ってたからウソなんだって私は思ってた。

「わかった。リクくんがげんきになるまでまいにちくる。」

結ちゃんはそう言ってくれた。そしてその言葉通り結ちゃんは毎日リクのお見舞いに来てくれた。

元気のないリクをお見舞いしてくれて、元気のない私を元気づけるために毎日毎日。

そしてついにその日が来た。


「ゆっこちゃん!リクくんだいじょうぶ!?」

リクの体調が急変したのはその日の朝のことだった。パパが結ちゃんの家にも連絡してくれて、結ちゃんとおばさんがすぐにかけつけてくれた。

「ぐすっ…ゆいちゃん、リクがおへんじしてくれないの…」

私はもう悲しくて怖くて朝からずっと泣いていた。結ちゃんもそんな私とリクを見て泣きそうな顔になってた。

「リクくん、リクくん…」

結ちゃんは泣きながらリクに話しかける。私も一緒になって泣きながら話しかける。

そんな私たちのことがわかったのかもしれない。リクはゆっくり目を開けて私の頬を舐めてくれた。まるで私の涙を拭ってくれてるみたいに。

「リク、げんきになったの?」

私はびっくりしてリクに話しかける。でもリクはその後結ちゃんの手に鼻を寄せるようにするとすぐに目を閉じてしまった。

それから数時間後、リクは天国に旅立っていった…

私たちはその日ずっとリクに抱きついて泣いていた。


それからの私はずっと元気がなかった。

朝起きてリビングに降りてもリクがいない…

お昼、結ちゃんが遊びに来てもリクが一緒じゃない…

夜寝るときもたまに一緒に寝てくれたリクがいない…


そんな私を心配して一緒にいてくれた結ちゃん。

朝寂しいって泣いてると結ちゃんが来てくれる。

お昼寂しいって泣いてると結ちゃんが一緒にいてくれる。

夜寂しいって泣いてると結ちゃんがお泊りして一緒に寝てくれる。


私は結ちゃんの優しさにずっと甘えていた。結ちゃんだって大好きなリクがいなくなって寂しかったはずなのに。

私は結ちゃんに支えられて、元気を取り戻すことができたんだ。



だから私は結ちゃんのことが大好きだし、今でも世界で一番大切な友達だと思ってる。

パパのお手伝いの保護猫のお世話だってあのままだったら絶対できなかった。もしかしたら動物に触ることさえ怖くなってたかもしれない。

私が勉強がんばってるのだって獣医さんになるために、リクとちょっとでも長く一緒にいられるように治療をがんばってくれたパパみたいになるためだもん。

いつも杏奈と陽菜を加えて4人で一緒にいるけど、私の中では結ちゃんは特別なんだ。

今日も家に4人集まって一緒に遊んでるけど、やっぱり結ちゃんが中心にいるからなんだよね。

「そうだ。ゆっこちゃん、久しぶりにリクくんに会ってもいい?」

結ちゃんは私が考えてることわかってるかのように言ってくる。

(こういうとこずるいんだよなぁ。)

リクのお墓は家の庭に作ってある。結ちゃんは今でもこうやってリクに会いたいって言ってくれる。

結ちゃんがケイちゃんのママになれてるのも私からすると当然なんだ。だって結ちゃんは誰よりも優しいし、誰かのために一生懸命になれるんだもん。

私はそんな結ちゃんが大好きだし、これからもずっと友達でいたい、って思ってる。

きっと十数年後にケイちゃんとのお別れが待っている。そのとき優しい結ちゃんは絶対悲しくて寂しくて泣いちゃうんだと思う。

そのときに私はずっと結ちゃんのそばにいてあげるんだ。

私にしてくれたように結ちゃんにしてあげたいんだ。

パパがしてくれたように、ちょっとでも長く結ちゃんとケイちゃんが一緒にいれるように治療してあげるんだ。

(あっ、そうだったんだ。)

あのときのパパの『ウソ』、あれって私たちがちょっとでも長くリクと一緒にいられるようにしてくれたんだ。

大好きなリクと結ちゃんとの思い出を少しでも多く作ってくれたんだ。

だったら私は大好きな結ちゃんとケイちゃんの思い出を少しでも多く残せるお手伝いをしてあげるんだ。

私は結ちゃんと一緒にリクのお墓に手を合わせてそう思っていた。


こんな小説書いてるわけですから当然猫大好きなのですが、犬も大好きです。

犬の中ではシェルティが一番好きなので、今回のお話を書きました。

『ペットとのお別れ』とても悲しいことだと思います。

ですので、そのときに悲しくても後悔しないお別れができたら、きっと飼い主もペットも幸せなのではないでしょうか?

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