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大魔王→黒猫  作者: (著)まっつぅ♪ (イラスト)SpringFizz
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80.猫と子供たちのもぐもぐタイム

誰視点かを追記しました(2022/11/23)

「それじゃあ、さっそくケイちゃんにあげてみよう。」

私たちは作ったおやつを持って、ケイちゃんのいるソファに移動しよとすると、

「結、ちょっとキッチン使いたいから結の部屋でやってもらっていい?」

ママが私に話しかけてきた。

「えっ、ケイちゃん私の部屋に連れてっていいの?」

「2階もコンセント対策したから大丈夫でしょう。」

「やった!そうするね。」

いつもリビングにいるケイちゃん。いたずら対策してないから2階に連れてっちゃダメってなってから、なんとなくそのままになっていた。

でもこれからは2階に連れてっていいんだ!

「じゃあみんなでお部屋に移動しよう。」

これからはお部屋でもケイちゃんと一緒にいられるんだ。すっごく嬉しい!


ケイ視点


こうして我は結の部屋に連れて行かれた。

結の部屋は2階にあって、我も2階に上がるのは初めてだった。

(やはりこの部屋も綺麗というか、豪華というか…)

子供部屋なのに作りもしっかりしているし、ベッドも豪華に見える。

ぬいぐるみが多かったり、全体的な部屋の色合いがいかにも少女っぽい部屋となっている。

「さすがに5人入ると狭いね…」

舞衣の言う通り、リビングとは違い大人数での使用を想定していないその部屋に子供ばかりとは言え5人いると少々手狭ではある。

「えへへ、ケイちゃんが私の部屋にいる~♪」

結はそんなことは少しも気にせずに、我がここにいるのが嬉しくてしょうがないようだ。

「ケイちゃん、このクッション使ってね。私のお気に入りなの。」

そう言って我をクッションの上に降ろす。

(おぉ、これは…)

そのクッションは細かい何かが大量に入っている感触、フカフカというよりは沈み込んで身体を包むような感触がして気持ちがいい。

「それじゃあケイちゃんのおやつ試食会始めよう。」

「わーい。」

試食会、やはりキッチンで何かをやっていたのは我の食べ物を作ってくれていたということか。

「にゃ〜(我に貢物を用意するとは気が利いているではないか。褒めて遣わそう。)」

我がそう言うと、陽菜が苦笑いを浮かべる。なんだ?我は何かおかしなことを言ったのか?

「それじゃあまずは人参からいってみよう。念のためスプーンは木のやつを使うよ。」

「なんで木のやつなの?」

「たまに金属アレルギーがある猫もいるからね。念のためだよ。」

金属アレルギー?なんだそれは?

「金属アレルギーというと、金属に触ると痒くなったりアレルギー反応を起こすのですか?猫にもあるんですね。」

「そうそれ。まあほとんどないけど、たまにそういう子いるんだよね。」

なるほど、陽菜がわかりやすく説明してくれて助かった。

それにしてもゆう子の医療の知識は子供とは思えんな。我の世界でも特定の条件で反応を示す体調変化はあるが、条件判明には至っていないものが多いというのに。さすがは医者の娘ということなのだろうか?

きっとアレルギーとはその体調変化の総称のことを言っているのだろう。

「はい、それじゃあケイちゃんどうぞ。」

結が我にスプーンを差し出す。そこには細かくされたオレンジ色の物が掬われていた。

我はそれを口に入れる。

(なるほど、これはすり潰した人参だな。)

ちょっと匂いに癖はあるが嫌いではない。そういえば人参なんて久々に口にしたな。

こちらの世界に来てから初めて口にした野菜ではないだろうか?そもそも植物性のものなど、あの猫草と呼ばれる草しか食べていなかったはずだ。

(それに優しい甘みが懐かしい…)

甘味というのは良いものだ、ということを思い出した。こちらの世界ですっかり猫食に慣れてしまっていたが、そういえば元々我は甘味が好きだったのだ。

あっという間に食べてしまった。これだけでは少々物足りない…

「にゃ〜(足らんぞ、早く次をよこせ。)」

「おっ、これは中々の好印象?」

「う〜ん、いつも通りかなぁ?とりあえず次だね。」

「杏奈も、杏奈もあげたい!」

「うん、いいよ。はい、杏ちゃんかぼちゃあげてみて。」

「わーい。ケイちゃん、どうぞ。」

杏奈がスプーンを差し出す。今度は黄色とオレンジ色の中間のような色をしたペースト状。

(おぉ、これは甘い!)

かぼちゃは知っているが、こんなに甘いものだっただろうか?世界が違えばかぼちゃの味もこんなに違うものなのか?人参も少々の違いはあったが、ここまでではなかった。

「にゃ~!(美味い!)」

ホクホク感の中に糖分によるねっとり感が少し感じられる。そしてこの甘味がたまらない。

「さっきよりいい感じ?」

「うん、よろこんでる。」

「それでは次は私があげてもいいですか?」

「うん、じゃあ次はさつまいも。陽菜ちゃん、どうぞ。」

魔王様(ケイちゃん)、あーんです。」

陽菜はニコニコ顔で我にスプーンを差し出す。コヤツ楽しんでおるな?

我はそんな陽菜を見て少々不機嫌になりつつ食べる。

(こっ、これはっ!!)

ホクホク感よりねっとりが強くて何より甘い!これが芋だというのか!?こんな甘くて幸せな味がする芋など初めて口にしたぞっ!!

「にゃ~!!(これは美味いぞっ!早く残りをよこせっ!!)」

我は陽菜の腕にしがみついて続きを催促した。それほどにこの芋は美味かった。

「わぁ、すごい反応!こんなケイちゃん見たことないよ。」

「これはかなりの好印象だね。」

この後、我はいろいろ食べさせてもらった。

りんご、バナナ、スイカ、どれも我の世界のものより甘くて美味かった…

我は久々の甘味に大満足して、用意してもらった麦茶を飲んでいた。

「最後はこれ。私が作った秘密のおやつだよ。」

秘密?なんだそれは?

「はい、ケイちゃんどうぞ。」

ゆう子が差し出してくれたスプーンを口に入れる。

(おぉ!これは!?)

さっきの芋と同じ味がするが、口当たりは柔らかい。ホクホク感は薄れて、ねっとりしているのだが優しい舌触りで口の中の水分を持っていかれる感じがしない。

「ケイちゃん、すっごい美味しそうに食べてる。結局それってなんなの?」

「これはさっきのさつまいもにミルクをちょっと足して混ぜたものだよ。さつまいもだけだとどうしても水分足りないから、こっちの方が食べやすいと思って。」

「なるほどね。スイートポテトみたいなものなんだ。」

舞衣が言うスイートポテトというのは、この世界の料理のことか?スイートということはきっと甘いのだろう。

「そうです。これにバターと砂糖を混ぜて焼けば、そのままスイートポテトになります。ミルクも低脂肪にしてほんのちょっとしか使ってないので、このぐらいなら猫でも安心して食べられます。どうしても気になるようなら猫用ミルクを使ってあげるといいかも。」

なるほど、やはり焼き菓子の一種のことのようだ。我も食べてみたいぞ。

「一通り全部あげた感じだと、さつまいもの反応が一番良かったみたいだね。ゆっこちゃんのおやつも同じぐらいかな。その次にスイカ、りんごって感じかな?」

結はやはり我のことをちゃんと見ているようだ。我の感想と完全に一致している。

「それじゃあ最後に。ケイ、この中から一番好きなもの召し上がれ。」

舞衣はそう言って全部の容器を我の前に置く。

(一番か…それなら。)

我は迷わずアレが入っている容器を目指す。

「やっぱりさつまいもが一番なんだね。」

「そっかぁ、私のおやつは元の素材に勝てなかったかぁ。」

そう、確かにゆう子が作ってくれた物も美味かったのだが、ミルクが入ってる分甘みが抑えられていたのだ。

甘味が好きな我としては甘みが強くて、かつ芋であるというのにこの美味さ、さつまいもが一番気に入ったのだ。

もちろん他の野菜や果物も美味かった。だが、我の世界では想像もつかないこの芋は別格だと思った。

「それじゃあ、これから特別な日のケイちゃんのおやつはさつまいもで決まりだね。」

結が嬉しそうに言う。なんとっ!これから定期的にこの甘味が食えるというのか!

「にゃ~♪(素晴らしいぞ♪)」

「ケイちゃんがこんなによろこんでくれるなんて、今日はみんなありがと~。」

「ケイちゃんの喜ぶところ見れて嬉しかったです。」

「やっぱケイちゃんかわいいよね。杏奈も猫飼いたい。」

「結ちゃんもよろこんでくて良かったよ。」

大喜びの子供たち、そしてそれを楽しそうに見守る舞衣。

『もぐもぐ』

「あっ、ケイいつの間にか全部食べてるっ!」

当然であろう、我に捧げられた食物を無駄にする訳なかろうが。

「あ~、これはちょっと食べ過ぎかなぁ。結ちゃん、ケイちゃんの夕食ちょっと控えめにしてあげてね。」

「にゃっ!(なんだとっ!)」

そんな大した量食べたわけではなかろうがっ!それなのに夕飯を減らすだとっ!!

「ケイちゃん、甘いものはカロリーが高いんだって。だからお夕飯控えめにしないと太っちゃうからね。」

な、なんだと…

「まあ太ったケイちゃんもかわいいとは思うけどね。」

「にゃー!!(我が太ってたまるかっ!太った大魔王などカッコ悪いであろうがっ!!)」

そうだ、我は大魔王なのだ!そのような無様な格好を晒してたまるかっ!

おい、陽菜!そこで楽しそうにニコニコ見てるんじゃないっ!!

『ピコンッ!』

我が抗議の声を上げると、急に何か音がした。

「あれ?ママから連絡だ。『みんなで降りてらっしゃい』だって。なんだろうね?とりあえず下に行こっか。」

我も結に抱えられてリビングに戻った。


結視点


「ママ〜、みんな連れてきたよ。どうしたの?」

みんなでリビングに降りると、なんか甘くて美味しそうな匂いがしてる。

「ケイのおやつ作りの余りを使ってお菓子作ったから、みんなで食べましょう。」

わぁ、ママの手作りお菓子!!

「「「「わーい。」」」」

「手を綺麗に洗ってからね。」

「「「「はーい。」」」」

私たちは手をキレイに洗ってからテーブルに座った。

そこには、

「スイートポテトだ!」

「さつまいもが残ってたから作ったのよ。」

お姉ちゃんとゆっこちゃんが話してたから、食べたいと思ってたんだよね。

「これはバナナケーキですか?」

「久々に作ったからちょっと不安だけど、多分美味しく焼けてると思うわ。」

「美味しそうです。いい匂いです~♪」

ママの作ってくれるバナナケーキははちみつが入ってるからすっごくいい匂いするんだよね。

「こっちはマドレーヌ?」

「それは人参が練り込まれてるマドレーヌよ。」

「うげっ、人参…」

杏ちゃんがイヤそうな声を出した。杏ちゃんかわいいのにたまにこういうとこあるんだよなぁ。

「杏奈、女の子が出していい声じゃないよ。」

ゆっこちゃんがすかさず突っ込みを入れる。

「だって、人参だよ?」

「苦手なら無理しなくて大丈夫よ。でも多分苦手でも食べられるようには作ってあるから。」

「そうそう、おばさんのお菓子はいつも美味しいんだから。」

「ホントに?騙してない?」

「ホントホント。」

「じゃあ、マドレーヌは好きだから。」

そう言って杏ちゃんはマドレーヌを一口。

「美味しい!ホントに人参入ってるの!?お店のより美味しいかも!」

「でしょ?おばさんのお菓子美味しいよね。」

私は一口サイズのアップルパイを食べながら、ママのお菓子でよろこんでくれるみんなを見て嬉しくなった。

「こんなに沢山作ったんだ。言ってくれれば手伝ったのに。」

お姉ちゃんはかぼちゃのプリンを美味しそうに食べてる。

「舞衣にはいつも家の手伝いお願いしてるから、たまにはみんなと遊ばせてあげたかったのよ。」

「そんな気を使わなくていいのに。」

そう言いながらなんだかお姉ちゃんも嬉しそう。

「おばさん、これ初めてですね。もしかしてスイカのゼリー?」

「そうなの。赤くてキレイでしょ?初めてだから甘みとかどうかしら?」

「すっごくちょうどいいです。爽やかだし美味しい!透明なガラスの器と上に乗ってるカットしたスイカもおしゃれです!」

「そう?よかった。」

ケイちゃんがおやつでよろこんでくれたのもホントに嬉しかったけど、みんなでこうやってママのお菓子食べてよろこんでるのも同じぐらい嬉しかった。

猫にもアレルギー反応はあります。

もし食べた後に普段と違う反応を度々示すようなら、念のため獣医さんに診てもらうといいと思います。

またこの物語はフィクションですのでストーリーの展開上、子猫を簡単に違う部屋に連れて行ってますが、知らない環境に急に連れて行かれることを嫌がる猫もいます。

猫にストレスがかからないようにご注意ください。

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