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大魔王→黒猫  作者: (著)まっつぅ♪ (イラスト)SpringFizz
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75.ドヤ顔とニヤケ顔

誰視点かを追記しました(2022/11/23)

ケイ視点


我は少々反省していた。

この間フィアナを追い詰めてしまったことは我の失態である。

(フィアナという協力者を手に入れたことで気が緩んだか?)

人間ならすぐに調べられる、協力者がいれば調査が大幅に進む、という考えが我の中に生まれたことが心の油断になっていたのかもしれん。

確かにフィアナの言う通り、こちらの世界の技術は全てにおいて想像を絶するものだ。そんな簡単に手法がわかるわけがない。

『焦りは禁物だ、慎重に冷静に。』

我が1人で調べているときはそう考えていたのではないか?

それをフィアナが報告したときには、その考えがすっかり抜け落ちていたのではないか?

フィアナに対してはもっと感謝をせねばなるまい。

(ん?そういえば前にも感謝せねば、と考えたことがあったような?)

そうだ、我は去勢を反対してくれた結に対しても同じように感謝せねばと考えたはずだ。

(立て続けにこのようなことがあるとは…我には感謝の気持ちが足りないというのか?)

確かに大魔王として、魔族の上に立つものとして仕えられることに慣れてしまっていたのかもしれん。

部下が我のために動くことが当たり前の状況に慣れていたというのか?

(だとしたら信賞必罰などと片腹痛いわ…)

この状況になって初めて気づいたということか…

我は元の世界に戻ったらもっと部下のことを見なければならないと考えていた。


結視点


「ママ、これから陽菜ちゃん遊びに来るんだけどお手伝いとかある?」

最近陽菜ちゃんが遊びに来たときにばっかり用事ができちゃうから、私は前もってママに聞いてみた。

「今日は特にないわよ。最近陽菜ちゃんには申し訳ないことばかりだったから、美味しいお菓子用意してあげるわ。」

「やったー!」

美味しいお菓子ってなんだろう?ケーキかな?

「陽菜ちゃんのためなんだからね。今日もリビング?」

「うん。陽菜ちゃんってケイちゃん大好きだから。」

「わかったわ。」

陽菜ちゃんってホントにケイちゃん大好きなんだよね。そんなに好きならお家で猫ちゃん飼わないのかな?

(あとで聞いてみよっと。)

「なら陽菜ちゃん来る前にケイの部屋のお掃除やっちゃいなさい。」

「はーい。」

私は陽奈ちゃんが来る前にケイちゃんのおトイレとか抜け毛のお掃除をがんばった。


ケイ視点


(今日はフィアナが来るのか。)

結の話をソファで丸まって聞いていた我は考えていた。

(今の話だと今日は結も母親もいるからフィアナと話すことはできんか。)

まあそれでも感謝の言葉をかけることはできるであろう。フィアナは翻訳魔法を使っているだろうからわかるだろう。

それともいつものように都合の良いことを引き寄せるのであろうか…


「お邪魔します。」

「いらっしゃい、陽菜ちゃん。」

「にゃ~(よく来たな。)」

我が話しかけると、陽菜は一瞬驚いたような顔をした。

(我が話しかけたら驚くとは失礼な。)

「ケイちゃん、ちゃんと挨拶できてえらいね。」

陽菜と一緒にソファまで来た結に頭を撫でられた。

(…子供扱いしおって。)

挨拶ぐらい誰でもするであろうが。

「本当ですね。ケイちゃんえらいです。」

陽菜も一緒になって我を撫でる。だから子供扱いするなと…

「陽菜ちゃん、ずいぶんおっきい荷物だね。何持ってきたの?」

確かに陽菜は普段とは違う大きめの袋を持っていた。

「これですか?これはこの間ゆう子ちゃんに見せてもらった実験道具を自分でも作ったんです。結ちゃんにも見てもらいたくて持ってきちゃいました。」

実験?何の実験なのだろうか?

「すごいね、もう作ったんだ。」

「はい、作り始めたら面白くって。」

「見せて見せて。」

結がそう言うと、陽菜は袋から何かを取り出した。素材は…何を使っているのかよくわからんが、風車のようにも見える。

()()()()に頼んだ調査は発電…そういえば風力発電というのは風車を使うと言っていた…まさかっ!)

まだそんなに日も経っていないのにもう発電の仕組みを作ったとでも言うのかっ!?

我は驚いて陽菜を見た。その顔は何か得意気に見えた。

「わ~、ちゃんとできてるね。ちょっと待ってて、ドライヤー持ってくるね。」

そう言って結は何かを取りにリビングを出ていった。

「にゃ~(まさか、それは発電の仕組みなのか?)」

結がいないので、我は陽菜に聞いた。

「そうですよ、魔王様。今から発電しますからしっかり見ててくださいね。」

自信満々に言う陽菜。

「持ってきたよ。それじゃあ回してみよっか。」

結が持ってきたのは風呂上がりの我を乾かすときに使うドライヤーという道具だ。確かにドライヤーなら風が出るから風車を回すことができるだろう。

「それではドライヤーの風を当てて風車を回しますね。」

陽菜はそう言うと、ドライヤーから風を出して風車を回す。

「ほら、ちゃんと豆電球が光りました。」

陽菜が指差すところを見ると、小さな丸いものが光っている。明かり自体は小さなものだが、確かに普段部屋を明るく灯している光と似ている。

「にゃ、にゃぁ…(これが発電で光っているということなのか…)」

我は感嘆の声を発していた。

「あれ?ケイちゃんびっくりしちゃった?大丈夫だよ、電気が光ってるだけだからね。」

結が何か言ってるが、これを驚かずにいられようか?たった数日前に『仕組みなんて全然わかんないっ!』って癇癪を起こしていた()()()()がもう自分で発電の仕組みを作ってきたのだ。

「にゃ、にゃ~?(貴様、天才か?)」

我がそうつぶやくと、

「いやです~♪ま…ケイちゃんびっくりしすぎですよ~♪」

陽菜の顔があまりにわかりやすく上機嫌になっている…おい、結にバレるぞ。

「それでですね、これをちょっと改造してみたんです。」

陽菜はそう言うと、袋からまた何か円盤状のものを取り出した。

「これを羽の代わりにつけると…」

そう言って風車の代わりに付ける。

「これ何?」

結にはわからないようだ。

「これは手動発電です。ほら、取り付けた円盤に取っ手がついているでしょう?これを持って手で回すのです。」

そう言って円盤を回す陽菜。なるほど、取っ手のおかげで回しやすくなっているのか。

「わぁ、ちゃんと電気つくね。」

「にゃぁ(おぉ。)」

結の言う通り、豆電球というものが光っている。

我が感動して見ていると、陽菜の顔がますます得意気になる。

「ちゃんと発電の知識も勉強しました。発電はモーターが回ると、つまりコイルの周りを磁石が回ると発電するのでしたよね。」

「うん、ゆっこちゃんが言ってたね。」

「あの後調べてみてわかったのですが、コイルの周りを磁石が回っても発電できますけど、磁石の周りをコイルで囲んで中心の磁石を回しても発電できるのですね。モーターは中心が磁石になっていてその磁石を回しているみたいなんです。」

「へ~」

なんと、たったそれだけで発電できるのかっ!

しかし磁石はわかる、あの金属にくっつく石のことだろう?ならコイルというのはなんだ?

「それでコイルのことも調べたのですが、銅線を丸めた物と言っていましたが、正確には絶縁体でコーティングした銅線を円状に丸めないとダメなんですね。」

「絶縁体って?」

「電気を通しにくい物のことです。例えばゴムとか樹脂とかですね。」

なるほど、電気を通さない物があるのか。

「陽菜ちゃんすごいね!」

結は感心している。

「ゆう子ちゃんがわかりやすく見せてくれたからわかっただけですよ。それ以上の理論のところは難しくてわからなかったですけど、これだけ知っていればモーターも簡単に作れます。」

「にゃ~!(素晴らしい!)」

「陽菜ちゃん、学校の先生みたい!」

我と結が陽菜を褒めると、

「そんなことないですよ~♪まったく結ちゃんとま…ケイちゃんは大げさなんですから~♪」

何故であろうか?陽菜の得意気な顔が鼻につく。なんとなく『どや~』って聞こえてきそうな…

しかし発電の仕組みがわかったことはこの上ない成果といえよう。陽菜には感謝せねばなるまい。

「にゃ〜、にゃ〜♪(素晴らしい成果だ!貴様に頼んで正解だったな。)」

「もう、ケイちゃんはびっくりしすぎですよ~♪」

我が感謝の言葉を述べると、陽菜の顔がこれ以上ないほどにニヤけたのだった。

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