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大魔王→黒猫  作者: (著)まっつぅ♪ (イラスト)SpringFizz
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73.教えて、ゆう子ちゃん先生

誰視点かを追記しました(2022/11/23)

陽菜視点


結ちゃんの家からの帰り道、私は今後の調査方法を考えていました。

(魔王様のご期待に応えるためにはどうすればいいのでしょう?)

こちらの世界に来てからの私はほとんど勉学に興味がありませんでした。

元々の知識があるので、算数や語学は全く苦にしないのですが、社会や理科に関してはからっきしです。

(『魔王様のいない世界ではやる気が出ない』なんて思っていた過去の自分をひっぱたいてやりたいですね。全く、先見の明がないとはこのことです。)

とはいえ、過去の自分を嘆いても何も解決しません。今後は勉強にも力を入れるとして、今は発電の仕組みについてですね。

(電気については去年学校で何か実験をしたような気がします。)

今年だったでしょうか?あまりに興味がありませんでしたのでよく覚えていません。

(そもそもこの世界の技術は難しすぎるのです。)

正直ほとんどの物がどのような原理で動いているのかわかりません。それなのにあまりに便利で、何より誰でも使えるというのがすごすぎます。

(魔法なんて霞んで見えますね…)

稀代の魔術師などと呼ばれていた過去の自分がとてもちっぽけに見えます。本当に重宝されるべきは魔術師などではなく技師だったということなのですね。

とにかく調べるにしても、ネットで検索したところで理解ができないのは実証済みです。私にわかったのはせいぜい発電の種類ぐらいなものでした。

そうなるとわかりやすい解説書か、どなたかにご師事をいただくしかありません。

(まずはお父さんに聞いてみましょう。)

親…と言いましても、前世の記憶がある私のほうが長く生きていることになりますので複雑な気持ちです。

(でもこちらの世界では先輩ですからわかるはずですね。)

とにかく家に帰ったら聞いてみましょう。


「お父さん、聞きたいことがあるのですが。」

家族で夕飯を食べながら私は話を切り出しました。

「なんだい?」

「電気ってどうやって作っているんですか?」

私がそう言うとお父さんはびっくりしたような顔をしました。

「どうかしましたか?」

「すまない、なんでもないよ。電気だったね。電気は発電所で作っているんだよ。」

「それは知ってます。発電所のことは調べました。」

今度はお母さんがとてもびっくりした顔をしました。

「どうしてそんなにびっくりしているんですか?」

私は不審に思って尋ねました。

「あぁ、ごめんなさいね。あんなに勉強に興味がなかった陽菜がこんな質問をしてくるなんてびっくりしちゃって。しかも自分でも調べてるだなんて…」

お母さんは嬉しそうな顔で言います。

「陽菜もやっと自分の興味があるものを見つけて成長したってことなんだな…」

お父さんはそう言って涙ぐんでいます。大げさ過ぎますが、こんなに喜んでいるところを見ると、なんだか今まで真面目に生きてこなかったことが申し訳なく感じてしまいます。

(こちらの両親はこんなにも私のことを大切に思ってくださっているのですね。)

魔王様のためだけではなく両親のためにも、私はもっと真面目に生きないとならないようです。

「それで発電の仕組みですけど。」

「あぁ、ごめんごめん。つい嬉しくなってしまって。発電方法はお父さんにはわからない。」

「え?」

私は予想外の答えに驚きました。

「お父さんは文系だからなぁ。理系のそういう難しいことは全然わからん。」

(えぇ…)

そんなに難しい技術なのだろうか?だとしたら私が理解するなんて到底不可能ではないですか。

「お母さんはわかりますか?」

「お母さんも文系だから…」

お母さんは気まずそうに顔をそらしました。


(どうしましょう…)

発電方法の調査が完全に行き詰まってしまいました。

今は学校の休み時間です。いつもなら結ちゃんたちとお話しているのですが、今はそれどころではありません。今は解決方法をなんとか見つけ出さなければならないのです。

(稀代の魔術師にして策略家と言われた私が解決できないわけがないのです。)

と自分に言い聞かせてはみるものの、具体的な解決方法が思いつきません。

(地道に勉強するしかないのでしょうか?いえ、それでは時間がかかりすぎます。)

もちろん勉強は必要なのでしょうが、それでは何年かかるかわかりません。

今の魔王様はかわいらしい猫なのです。一般的な猫の寿命は20年弱と言います。もしも魔王様が普通の猫として天寿を全うするとしたら時間はあまり多くないのです。

(また魔王様と離れてしまうなんて考えたくもないですけど…)

心情としてはそうですが、知将として魔王様を支えてきた私としては現実から目を背けることはできません。冷静にあらゆる可能性を排除しないで考えなければならないのです。

(とにかく次の報告までに発電の手がかりになる情報だけでも手に入れなければなりません。)

私がそう考えていると、

「陽菜、どうしたの?なんか悩んでる?」

ゆう子ちゃんが話しかけてきました。

「はい、ちょっと…」

私はそう言いかけて『はっ』としました。

ゆう子ちゃんはとても勉強ができる子です。いつもテストは100点ばかりですし、この間塾の全国テストでも上位の成績だったと聞いています。

(もしかしたらゆう子ちゃんならわかるでしょうか?)

私はゆう子ちゃんに聞いてみることにしました。

「ゆう子ちゃんは発電の仕組みってわかりますか?」

「発電?わかるけど。」

さすがゆう子ちゃんです!

「本当ですか!教えてもらえませんか?」

私は興奮気味にゆう子ちゃんに詰め寄ります。

「いいけど、いきなりどうしたの?」

ゆう子ちゃんは少々驚いているみたいです。

「あ、その…電気について興味が出たのですけど、自分ではどうやって勉強したらいいのかわからなくて困っていたのです。」

私は慌ててもっともらしい理由を言いました。

「へぇ、勉強嫌いな陽菜が珍しいね。いいよ、なら今日ウチに来る?教えるのにちょうどいいものあるから。」

「はい!是非お願いします。」

渡りに舟とはこのことです。ゆう子ちゃんと友達でよかったです。

「なに?陽菜、今日ゆっこちゃん家行くの?杏奈も行きたい。」

私たちが話していると杏奈ちゃんと結ちゃんも来ました。

「いいけど、陽菜と勉強だよ?」

「え~、遊ぶんじゃないの?」

勉強が嫌いな杏奈ちゃんは嫌そうな顔をしています。

「何の勉強するの?」

結ちゃんは少し興味がありそうに聞いてきます。

「理科の実験だよ。」

「へぇ、実験ならなんだか面白そう。私も行っていい?」

「いいよ。杏奈はどうする?」

「…勉強はイヤだけどみんなが行くなら行く。でも終わったら遊ぼうねっ!」

「はいはい。なら放課後にウチ集合ね。」

「「「は~い。」」」

(これでもしかしたら発電の解決になるかもしれない。そうでなくとも手がかりにはなるかもしれない。)

私はゆう子ちゃんが話しかけてくれた幸運に感謝したのだった。

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