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大魔王→黒猫  作者: (著)まっつぅ♪ (イラスト)SpringFizz
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72.初めての報告会

「陽菜」と「フィアナ」が入り混じってしまっていたので、意図しているところ以外は「フィアナ」で統一しました(2022/04/13)

誰視点かを追記しました(2022/11/23)

ケイ視点


『ナデナデ』

「…おい。」

「なんですか?魔王様。気持ちいいですか?」

いつものリビングにいるのは我と陽菜。結も母親も出掛けていない。

「何故貴様が一人で来るときに限ってこんなに都合良く事が運ぶのだ?」

「知りませんよ。たまたまではないですか?」

「何か仕込んでるのではないのか?」

こんな偶然が何度も続いてたまるか。

「そんな事してませんよ。これでも魔王様のためにもっと結ちゃんと仲良くなろうとがんばっているんですよ?変なことして結ちゃんに不審に思われたら嫌ですから。」

「…そうか。」

まあフィアナならありえるのかもしれん、とは思う。

コイツは昔からそうなのだ。

才能がありかつ努力をしているのはわかっているのだが、それだけでは説明がつけられないような…なんというか自分の都合が良くなるように事象を引き寄せるとでも言うのか。

それでいて策略家でもあるから、どこまでが仕込みなのか判別がつかないのだが。

正直フィアナのおかげで人間との争いでも優位に立っていられたのは間違いないことだ。

「それで魔王様、最近お変わりは?」

「おっと、そうだ貴様には聞きたいことが山ほどあるのだ。」

変な仕込みをしていないのなら問題なかろう。それに時間もないのだから聞けることは聞いておかないとな。


「まあ、それで怒られてしまったのですか?」

我はこの間のトイレの出来事を話していた。

「うむ、あれはかなり怒っていたな。我をも怯ます怒気を発するとは…」

今思い出してもあの圧はかなりのものだった。

「可愛らしい子猫のいたずらですのに。」

そう言ってフィアナは上品に笑う。

「いたずらではない!調査だ!」

「はい、そうですね。でも私もウォッシュレットの水をかけられたら怒りますね。」

ニコニコしながら相槌を打つフィアナ。

「あれはなんなのだ?トイレからあのように水が出て何の役に立つのだ?」

流す方は理解できても、あの水鉄砲のような機能は理解できん。

「あれはお尻をキレイに流すための機能ですね。」

「なるほど?つまり用を足す度にお尻を洗うことで清潔感を保っているわけか。」

「そうです。」

なんという…清潔に保っているのは家だけではないということか。

「それで気になったのだが、何故こんなに豊富に水を使えるのだ?今は雨季というわけでもあるまい?」

「そうですね、春先の雪解けや雨季の頃にダムに水を貯めているからです。」

「ダム?ダムとはなんだ?」

「ダムは川の上流に作ってある大きな溜め池のようなものです。川の上流を堰き止めてそこに人工的な湖を作ります。そこから定期的に放水することで、雨が降らない時期でも川の水が一定になるように調整しているのです。」

「なるほど。それならばいつでも川の水を利用できるということか。」

「そうです。それを濾過して浄水とし、各家庭まで配管を通じて送っています。」

「…なるほど。」

我の想定以上に高い技術力の話をされて戸惑う。

「ではここらの水は濾過しないと飲めないということか?」

「いえ、私たちの価値観からすると飲めないことはありません。でもこの国ではどこでも綺麗な浄水が使えますので飲もうと思う方はいらっしゃらないと思います。私はもう絶対飲めません。」

そうか技術力の向上により浄水が当然となればそういう考えになるというものか。そう考えると、いざ浄水が使えないという時の足枷になる可能性はあるな。

「なるほど、しかしダムというのはいいな。戻ったら我が国にも作ることを考えねばならんな。」

「その前に川が氾濫しないように治水工事をされたほうがよろしいのではないでしょうか?」

「それは確かに…何か良い案があるのか?」

「いえ、そこまでは…でもこの国の治水を調べれば大丈夫だと思います。」

「この国では氾濫しないのか?」

「しますけど滅多に起こりませんね。数年に一度でもあれば多い方ではないでしょうか?」

「何だと…」

有名な暴れ川では毎年のように氾濫するというのに…やはり内政にもっと力を入れるべきなのだということがよくわかる。

「では治水の調査は任せる。」

「わかりました。けどあまり難しい本は読めませんよ?」

「そうなのか?」

「この世界の技術力は高すぎて理解できません。それに子供が難しい技術書なんて読んでたら不自然じゃないですか。」

「それは確かに。なら可能な範囲で調べてくれ。」

「畏まりました。」

これで治水に関しては時間が解決するだろう。

「ではそちらの報告を聞こう。発電の仕組みについての進捗はどうだ?」

「はい、発電ですがどうやら複数の方法があるようです。例えば風力発電…」

「ほう!風の力で発電できるのか!どのように発電するのだ?」

我の世界にある方法で発電できるなら素晴らしいではないか!

「風の力で風車を回すみたいです。」

「風車なら我が国でも使っているだろう。ではあの風車でも電気が発生しているのか?」

風車を回して歯車を利用することにより麦を挽く等、重要な機能なのに電気まで作ることができるというのか!

「いえ、設備がないので電気は発生していないかと。」

「それはどのような設備なのだ?」

「それは…」

「…」

「あっ、あと水力発電なんてものもありますよ。」

「ほう!今度は水の力か!どのように発電するのだ?」

「水の力で水車を回すみたいです。」

「水車なら我が国でも使っているだろう。ではあの水車でも電気が発生しているのか?」

水車も風車と同様重要な動力であることは間違いない。

「いえ、設備がないので電気は発生していないかと。」

「それはどのような設備なのだ?」

「それは…」

「…」

「あっ、あとは火力発電とか太陽光発電とか。」

「それはどのような設備が必要なのだ?」

「…」

「…」

なんだかフィアナが泣きそうな顔をしているような?

「わ…」

「わ?」

「わかるわけないじゃないですかっ!なんかぐるぐる回して作ってるんですっ!!」

突然フィアナが腕をグルグルしながら叫びだした。

挿絵(By みてみん)

(しまった、追い込み過ぎた。)

「わかった、わかった。まだ調査中なんだな。」

我は宥めるようにフィアナに言う。

「…魔王様は私をイジメて楽しいんですね。追い詰めて辱めるのが気持ちいいんですね。」

とんでもないことを言い出した。

「酷く曲解したものだな、そんなわけがなかろうが。」

「この世界の技術は難しいのがわかった上で、そうやって理解できていないことを責めるんですね…」

わかりやすく拗ねられた。

(めんどくさい…)

面倒だが、これ以上不機嫌にさせても余計に面倒なだけだ。

「すまなかった、貴様の働きには感謝しているのだ。」

「…本当ですか?」

「もちろんだとも。この身体では調査も上手く進まないところを手伝ってもらえているのだ。感謝こそすれ、責めるなどとんでもない。」

「…それならいいですけど。」

「今の我には難しいかもしれんが、必ずこの働きに応えると約束する。」

「本当ですか?約束ですよ?」

「約束しよう。」

「…なら許します。」

(はぁ、なんとかなったか。)

やはり女性の機嫌を損ねることを言うものではない。これからも気をつけねばなるまい。

それでなくとも今の我に協力者がいること自体奇跡のようなものなのだ。フィアナにはしっかりと働いてもらわねばならん。

そして信賞必罰を是とする我は、その働きに恩を持って報いねばならん。

「それではこれからもよろしく頼む。」

「はい、また進展がありましたら報告しますね。」

なんとか機嫌が直ったフィアナを見て、我は胸をなでおろすのだった。

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