7.目覚めない黒猫
加筆修正しました(2022/05/04)
(さっぱりした~、身体も温まったし気持ちいい~)
お風呂から上がった私はゆっこちゃんが用意してくれた服を着た。うーん、ちょっとだけ大きいかな?
(猫ちゃんどうかな?もう目が覚めたかな?)
私は猫ちゃんが気になって急いで診察室に向かった。
「結、大丈夫なの?」
診察室に入るとゆっこちゃんのパパさんとママが迎えてくれた。そういえばパパさんが家に連絡してくれるって言ってたっけ。
「うん、大丈夫。ママ、連絡しなくてごめんなさい。」
「それはしょうがないわ。でも次からはちゃんと連絡してね。」
「はーい。」
よかった、ママ怒ってない。
「猫ちゃん起きた?」
診察が終わったからだろうか、診察室のケージに入ってる猫ちゃんを見ながらパパさんに聞いた。
「まだ眠ってるよ。」
「そうなんだ…大丈夫かな?」
ケージに入った猫ちゃんは新しいタオルの上で丸くなって寝ている。私が連れてきたときはまだちょっと毛が濡れてたけど、今はすっかり乾いてフカフカになってるように見える。
「大丈夫だよ、ちゃんと診察したけど特に問題ないから。体力使っちゃったから疲れて寝ちゃってるんだと思うよ。」
パパさんがそう言ってるなら大丈夫なのかな?
「そっか、よかった。猫ちゃん早く元気になってね。」
私はケージの隙間から指を入れて猫ちゃんをそっと撫でてやっと安心できた。
安心したけど、猫ちゃんが目を覚ましたらどうするんだろ?あそこにいたんだからノラちゃんだと思うんだけど、いた場所に返すのかな?
(もし返したらどうなるんだろ?また溺れちゃわないかな?)
なんか見てて不安になる子だから、もしかしたらまたやっちゃうかも…そのときも誰かが助けてくれるかどうかなんてわからないし。
(この猫ちゃんをなんとかしてあげたいな。)
猫ちゃんのことを考えれば考えるほど不安になる。それだけじゃなくてお外に返したら、って考えると胸が苦しくなる。
(なんでだろ?猫ちゃんともっと一緒にいたい、って思っちゃう。)
子猫だから?私が助けたから?心配だから?
どれも合ってるけど、なんか違う気もした。なんでかわからないけど、このままバイバイしちゃダメな気がした。
だから私は、
「ねえママ、この子飼いたい。家に連れてっちゃダメ?」
ママに思い切ってそう言った。
私の頭の中は助けてあげた猫ちゃんのことでいっぱいになってた。
「…まあそう言うと思ったわ。動物を飼うって簡単じゃないのよ?毎日ちゃんとお世話しなきゃならないし、掃除だってしなきゃなんだから。」
「私ちゃんとやるよ、お掃除だってやるしお家のお手伝いもちゃんとやる!」
猫ちゃんをお家に連れてってあげられるなら、そのぐらいちゃんとやるもん。
「それにこの子猫毛並もとっても綺麗じゃない?もしかしたら飼い猫かもしれないわ。」
確かに真っ黒だけど毛並はとっても綺麗だし、手触りもフワフワで気持ちいい。
(あぅ、それじゃ飼い主さん探さないとなのかな…)
もし飼い主さんがいるんだったら、見つかったらバイバイしなきゃなんだ。そう思うとまた胸が苦しくなってくる。
私がそう考えているとパパさんが、
「いえ、野良猫だと思いますよ。飼い猫は動物愛護法で首輪やICチップ等をつけなくちゃならないって決まってるんです。確認したところこの猫はそういうのはありませんでしたから、野良かもしくは…」
(パパさん言いにくそう。もしかして捨て猫なのかも…)
「ママ、お願い…」
捨て猫だったらなおさらほってなんかおけない。
「うーん、結のこと信じてないわけじゃないけど…パパにも聞いてみないとね。」
「まあ今夜は念の為ウチで預かりますから、ちゃんとパパに相談しておいで。」
パパさんがそう言ってくれたので、今夜の猫ちゃんは安心だってわかった。
「お世話をかけてしまってすみません。」
ママはそう言ってパパさんに頭を下げた。
「ありがとう!」
(絶対にパパを説得するんだ!)
お礼を言った私はそう思い、ママと一緒に帰った。