57.猫と猫草
誰視点かを追記しました(2022/11/23)
ケイ視点
我はいつものようにリビングを抜け出している。
前回確認した靴のクッション素材がどうも気になる、というか記憶に引っかかるのだ。
我は玄関に向かい、靴の素材を確かめることにした。
(やはりこの感触が気になるし、体験したことがある気がする。)
色の違いや硬さの違いがあれど、どの靴の底も同じような感触の素材を使っていることがわかる。そしてクッション性に優れるこの素材はとても有用性があるように思える。
(この素材の正体さえわかれば、歩行による疲労を大きく抑えられるかもしれん。)
それだけではない。壊れやすいもののクッションにも使える可能性もある。
(うぅむ…どこだ?)
普段我が住んでいた地域のものではない。それならすぐに思い出せるはずだ。
(どこか珍しくてあまり行かない地域…南方?…あっ!?)
思い出した!確か南方の地域のとある木の樹液を特殊な手法で固めたものがあった。
ゴムとかいう名前の伸縮性に優れたものだったはずだ!
(あの頃は子供の遊び道具程度に思っていたが、こんな使い方があるとは。)
訪れたときも子供が丸めて投げて遊んでた程度しか思い出せない。
(戻ったらすぐに調査させる必要があるな。戻ったらかぁ…)
いつ戻れるかはわからんが、我は必ず戻って我が国の資産とすることを決めたのだった。
満足のいく調査を終えた我はリビングに戻ってきた。
『ウィーン』
リビングでは相変わらず自動で掃除される道具が動いている。
「にゃー(一仕事終えた我を出迎えるとはご苦労。)」
そうでないことはわかっているが、我は一声かけると道具に飛び乗る。
「にゃー(自動で運んでくれるというのはいいものだ。)」
実はこれに乗ることは我の密かな楽しみになっていた。もちろん自分で動くほうが早いのだが、適度な速度でいろんなところへ運んでくれるというのはいいものだ。
(…これさえなければなぁ。)
『パシャッパシャッ!』
「ケイ、いいわっ!今日もかわいいわっ!」
我が乗るとだいたい母親が戻ってきてこうなる…残念すぎる。
適度に満足すると、我は降りてソファで丸くなる。
それを残念そうに見つめる母親の視線は無視することにしている…
(うぅん、今日は少々腹の調子が良くないか?)
結が用意してくれた夕食を終えた我は腹に少々の違和感を感じる。
この生活になってから肉食系の食事ばかりだからだろうか?たまに感じるのだ。
(今日はアレを食べておくか。)
我はケージの横に植えてある猫草の前へ移動した。
『はむはむ』
(たまにこれを食べるとなんとなく腹が落ち着くんだよなぁ。)
結や舞衣の話によるとわざわざ猫が食べるために用意したものらしい。
最初は『こんな草食うかっ!』と思っていたが、なんとなく腹が落ち着かなくてイライラしていたときに食べてみたらスッキリしたのだ。
やはり肉食だけでは身体に良くないということなのだろう。
『はむはむ』
(あぁ、癒やされる…)
我はゆったりとした食後を過ごしていた。
結視点
「ケイちゃん猫草食べてるのかわいい~」
「ほんとね、なんか癒される。」
私とお姉ちゃんはケイちゃんが猫草食べてるのを見ていた。
「やっぱり猫ちゃんって猫草食べるんだね。肉食なのにどうして?」
私は不思議に思ってお姉ちゃんに聞いた。
「なんでだろうね?私も知らない。」
「そうなの?」
「うん、ネットで調べてもどうしてかはわからない、って書いてあった。」
猫ちゃんってすごい身近な動物なのにまだわからないことってあるんだ。
「なんか消化の助けになるとか、グルーミングでお腹に入った毛をどうにかするためとか、いろんな説があるけど、結局はわかってないんだってさ。」
「そうなんだ。」
「用意しても全然食べない子もいるから必要ないかもしれない、ってのも書いてあったよ。」
「でもケイちゃん食べてくれてるから用意してよかった。」
「そうね。」
ケイちゃんが喜んでくれるもの用意できてよかった。
私とお姉ちゃんはなんとなく嬉しそうなケイちゃんをニコニコしながら眺めていた。